[3]キルギス

1.概 説

(1) 91年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。アカーエフ大統領は、95年12月の大統領選で再選され、任期を2000年12月までとしている。同大統領は民主化・市場経済化の改革路線を推進し、98年10月に行われた国民投票の結果、土地私有制を認める憲法修正案が承認されるなど、同大統領の改革路線は、国民の多数の支持を得ている。しかしながら2000年2月の議会選挙では、米、OSCEが懸念を表明するなど、最近はアカーエフ政権の民主化路線に翳りが出てきている。
 外交面では、安全保障、貿易面で密接な関係をもつロシアとの良好な関係維持を重視している。96年3月にはロシア、ベラルーシ及びカザフスタンと統合強化条約を締結した。また西側諸国との関係強化にも積極的で、欧州安保協力機構(OSCE)をはじめ、国連、IMF、世銀、アジア開発銀行(ADB)に加盟しており、同国の推進する改革路線は西側諸国から評価を得ている。また、98年12月、同国はCIS諸国で初のWTO(世界貿易機関)加盟国となった。
(2) キルギスは、元来農業、牧畜、軽工業を除き産業や資源に乏しく、経済基盤が弱いことから、経済改革は困難を伴った。こうした状況の中、IMF、世銀との協議を順調に進め、市場経済に向けて積極的な姿勢を示した結果、94年以降マクロ経済は次第に安定に向かい、97年の実質GDP成長率は9.9%に達した。しかし、98年発生したロシア金融危機は同国経済に深刻な影響をもたらし、通貨ソムの下落、消費者物価の上昇、鉱工業生産、貿易の停滞をもたらした。また、自国通貨が下落する中、対外債務の重みが増しており(対GDP比率135%)、ロシア、トルコ、パキスタン等と債務繰り延べ交渉を開始している。
(3) 我が国との交流は、官民ともに活発である。92年5月に渡辺副総理兼外務大臣(当時)が同国を訪問し、93年4月及び98年10月にはアカーエフ大統領、96年11月ほか二度ジュマグーロフ首相(当時)が、2000年2月にはムラリエフ首相が訪日している。民間でも経済協力調査団の派遣や日本・キルギス経済委員会など、人的往来は盛んである。しかし、貿易投資など我が国との経済関係は未だ低い段階にある。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) キルギスはソ連崩壊後の新たな自由主義国家として、その民主化、市場経済導入の動きはODA大綱の観点からも望ましいものであるため、同国が人材不足や経済インフラの老朽化などの問題に効率的に対処し、経済的な困難を克服して国造りを行えるように、我が国は同国に対し積極的な支援を行っている。
 ただし、これまでは経済改革の優等生として世銀、IMF等から評価が高かったが、近年対外債務が増加しており、今後マクロ経済については注視が必要。また、キルギスは世銀の提唱したCDF(包括的開発フレームワーク)にパイロット国として国家をあげて積極的に取り組んでおり、我が国としてもその動向に十分注意を払いつつ援助を行う。
(2) 我が国は、キルギスが93年1月にDACリストパートIに掲載されODA対象国となる以前の91年から研修員受入れや専門家派遣などの協力を開始しており、また、旧ソ連諸国に対する総額2億ドルの緊急人道支援の一部として医薬品、医療機器、ワクチンなどの供与を中心に、93年以来533万ドルを供与している。また、ODA以外にも95年5月、市場経済化を担う人材育成の拠点として、キルギス日本センターを首都ビシュケクに開設し、日本から派遣した専門家による経済経営関連講座を開講している。
(3) 95年10月には、ODAに関する政策協議を実施し、その結果等を踏まえ、(1)市場経済の導入支援、(2)BHN(基礎医療、教育等)分野、(3)経済インフラ分野、(4)農業分野を援助の重点分野としている。
 有償資金協力については、運輸分野を中心に行っている。無償資金協力については、医療分野での一般プロジェクト無償、文化無償、ノンプロジェクト無償、食糧増産援助、草の根無償を実施している。技術協力については、市場経済、行政分野を中心に研修員を受け入れており、財政金融や鉱業技術、環境などの分野に専門家派遣を行っているほか、2000年度より青年海外協力隊の派遣が行われる予定。開発調査は、金融、通信、資源開発、工業開発を対象に実施している。
(4) 99年8月、JICAからキルギスに派遣された4人の資源開発調査団が、タジキスタン国境から侵入したイスラム武装集団により人質となる事件が発生した。同年10月、事件は無事解決したものの、安全上の配慮から、人の派遣を伴う援助は限定的に行っている。安全対策の観点から、99年12月の安全確認調査団派遣を経て、2000年7月にはJICA現地駐在員事務所を設置した。今後はイスラム原理主義を名乗る一部過激派の動向等、治安状況を見ながら本格的な援助再開を検討していく。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度実施開発調査案件
(参考2)99年度実施草の根無償資金協力案件
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