[41]南アフリカ共和国

1.概  説

(1) かつて「アパルトヘイト(人種隔離)」に基づく人種差別政策が行われていたが、94年4月の初めて全人種が参加する民主的総選挙によりマンデラ大統領率いるアフリカ民族会議(ANC)を中心とした政権が発足した。国民融和を訴えつつ健全な経済運営を営む同政権の下で政情は安定し、96年5月には新憲法も採択された。99年6月に第二回目の総選挙が行われた結果、ANCが約三分の二の議席を占め、ムベキ副大統領が大統領に選出された。ムベキ政権は、大統領の強力なリーダーシップの下で、国民融和の実現と国内格差是正、失業対策、黒人貧困層の生活環境改善などの重点課題について取り組んでおり、徐々に成果を上げつつある。
(2) 外交面では、ムベキ大統領は、グローバル化の中で途上国と先進国との格差が拡大しつつあることを問題視し、途上国の立場に立った世界秩序の構築に貢献することを主要な外交課題としている。非同盟運動及び英連邦の議長国として広く途上国を代表し、マルチ外交において「南北の架け橋」としての役割を果たすことを目指している。また、ムベキ大統領は「アフリカン・ルネッサンス」(アフリカの再生)というビジョンを掲げ、アフリカ自らの力で紛争、貧困、独裁、汚職といった問題を克服すべきことを提唱しており、南アフリカ共和国は、アフリカの紛争解決や平和・民主主義に加え、南北の格差是正に向けた国際的努力において、益々重要な役割を果たしつつある。
(3) 経済面では、第一次産業が12%、第二次産業が31%、第三次産業が57%を占めているが、近年は鉱業の比率が減少を続け、商業、金融・保険が拡大している。南アフリカ共和国のGDPはサハラ以南アフリカ全体の45%を占めており、圧倒的な経済力を有する同国の経済発展は南部アフリカをはじめアフリカ全体の発展にとり重要な役割を果たしている。
 政府は、最大の課題である人種間の社会経済格差の是正のため、復興開発計画(RDP)による黒人等の生活水準・地位向上を目指している。また、96年6月には、新たに、投資インセンティブの導入、財政赤字の削減、徴税の強化、為替管理の段階的緩和、公営企業の民営化、賃金上昇の緩和等を通じ、経済成長と雇用の拡大を目指す「マクロ経済戦略(GEAR)」を打ち出した。97年~98年には景気の低迷により、98年の通年成長率は0.6%まで落ち込んだものの、99年に入り、民間消費及び欧州・アジアとの貿易の回復を背景に景気は回復基調にある。
(4) 両国の二国間関係は良好であり、96年4月には池田外務大臣(当時)、99年1月には橋本総理外交最高顧問が同国を訪問し、また、95年7月にはマンデラ大統領(当時)、98年4月及び10月にはムベキ副大統領(当時)がそれぞれ訪日しており、要人の往来も活発である。我が国は、特に国際問題を協力して解決すべきパートナーとして南アフリカ共和国との関係を強化しつつあり、98年4月のムベキ副大統領訪日時に、政治、経済、文化、科学技術等多様な分野に関する協議を行う「日・南ア・パートナーシップ・フォーラム」の設置に合意し、99年1月の橋本顧問の南アフリカ共和国訪問の際に第一回、同年4―5月の武見政務次官の訪問の際に第二回、そして2000年3月のズマ外務大臣訪日の際に第三回目の会合を開催するなど、協力の具体化を進めている。更に、2000年7月には、我が国のイニシアティブにより実現したG8首脳と途上国首脳との対話(東京)及びG8外相と途上国外相との対話(宮崎)に、非同盟運動(NAM)の代表としてムベキ大統領及びズマ外相がそれぞれ出席し、2001年1月には現職総理初のアフリカ訪問として、森総理大臣が南アフリカを訪問している。
 貿易関係については、我が国は南アフリカ共和国から非鉄金属、石炭、鉄鋼、鉄鉱石等を輸入(99年輸入額22億6,981万ドル)し、南アフリカ共和国に対し自動車部品、一般機械、鉄鋼等を輸出(同輸出額16億3,226万ドル)しており、サハラ以南アフリカ諸国の中で第一位の貿易相手国となっている。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 我が国は、アパルトヘイトの犠牲者である南アフリカ共和国の黒人層の自立を支援するため、90年度より国際機関を通じた資金協力、草の根無償資金協力、国際機関を通じた研修員受入等により、南アの黒人社会支援を行ってきた。
(2) 94年4月の総選挙実施を受けたマンデラ新政権発足は、民主的、平和的に新体制への移行を成功させた象徴的なケースとして高く評価し、我が国は、94年7月、その後2年間でODA3億ドルに加え、輸銀融資5億ドル及び貿易保険枠5億ドルからなる対南ア支援策を発表した。
 また、アパルトヘイト撤廃後の貧困撲滅と黒人の地位向上を目指した経済社会改革を支援するため、99年6月のムベキ大統領就任時に、過去5年間の我が国の支援実績(総額約15億ドル)を踏まえ、以下に基づき、今後とも十分な規模の支援を継続することを表明した。
01 無償資金協力
 さしあたり今後1年間に2千万ドルを念頭に供与し、貧困問題の深刻な旧ホームランド地域の保健・教育分野における案件を中心に検討していく。
02 有償資金協力
 今後も社会インフラ整備の援助を中心に検討していく。
03 輸銀融資
 総額3,700万ドル相当円のアンタイドローン(物資、役務の調達先を援助供与国に限定しない借款)につき99年7月にも貸付契約を調印予定。また、中小企業向けアンタイドローンにつき、1億ドル相当円程度を目途に、前向きに検討し、99年12月に調査団を派遣した。
04 貿易保険
 今後優良な案件があれば、従来と同様引き受けを実施する。
 具体的な援助については、有償資金協力では、96年4月経済・社会インフラ整備のための初の円借款を供与したほか、社会インフラ部門での援助を実施している。無償資金協力では、97年6月に、人種間格差が極めて大きい南アの医療事情に鑑み、貧困黒人層に裨益する医療機材整備のため、初の一般プロジェクト無償資金協力を実施したほか、草の根無償資金協力によるNGO支援等も積極的に実施しており、99年度の実績は金額で世界第4位であり、黒人貧困層に直接届く支援を積極的に行ってきている。技術協力では、人的資源、開発計画、農業等の分野で研修員受入、開発調査等の協力を実施している。また、緊急援助の分野では、99年の竜巻災害に対して、緊急援助物資(1,200万円相当)を供与した。
(3) 我が国は、南ア支援が南ア自身の民主化及び経済発展に資するのみならず、南部アフリカ地域、ひいてはアフリカの開発問題全体にも資するとの認識の下、98年12月に経済協力政策協議を行い、TICAD02の成果に基づくフォローアップに関し議論を行うとともに、我が国の今後の対南アフリカ支援の重点分野として、人造り、基礎教育、保健・医療、中小企業振興、環境及び南部アフリカへの地域協力への取組みを確認した。また、99年8月には第2回政策協議を行い、協力実施にあたっての課題等について率直な意見交換を行い、両国間の相互理解を深めた。今後は、こうした重点分野の下、国造りを担う人材の育成や貧困層に対する支援を中心に積極的な支援を実施していく方針である。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度実施開発調査案件
(参考2)99年度実施草の根無償資金協力案件
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