(1) 91年3月にトゥーレ中佐による無血クーデターが発生し、同中佐を国家元首とする暫定政府は複数政党制民主主義の確立を目指した。92年1月に新憲法国民投票、2月~3月の国民議会選挙、4月の大統領選挙等の民主化プロセスを進め、大統領選挙では、コナレ大統領が選出された。97年5月の大統領選挙では同大統領が再選され、同年7月~8月の国民議会選挙では、マリ人民民主連合が圧勝したものの、結果をめぐる与野党間の不調和がみられた。その後与野党間の対立は鎮静化し、98年6月の地方議会選挙は平穏に実施された。
マリ北部の治安を揺るがしていたトアレグ問題については、95年に解決の方向へ動き出し、96年3月には和平式典が開催される等、北部地方の和平は徐々に回復しつつある。
(2) 外交面では、歴史的に旧社会主義諸国との結び付きが強かったが、非同盟を基軸とし、近年は、先進諸国、アラブ諸国とも協調を図っている。また、95年以降ルワンダ、ブルンディ、リベリア、中央アフリカ等に平和維持のための兵力を派遣する等、地域の安定化に貢献している。
(3) 経済面では、就業人口の約80%、GDPの約50%が従事する農業及び牧畜が主要な産業であるが、降雨量等自然条件に左右される上、旱魃等による食糧不足が恒常化している。また、綿花等の輸出用産品の価格低迷等で貿易赤字も恒常化し、経済基盤は脆弱である。
コナレ政権は、93年8月世銀・IMFと構造調整計画に合意し、同年10月緊縮財政政策を発表するとともに、セクター別中期計画を実施した。94年1月の通貨(CFAフラン)切り下げに際しては、物価抑制措置を策定し、インフレ抑制等の成果を挙げた。他方、債務問題に関しては、98年9月にHIPCイニシアティブが適用されている。今後は、構造調整を進めながらも生活水準の向上に取組むことが求められている。
(4) 我が国は、マリから実綿、採油用の種等を輸入し(99年輸入額90万ドル)、同国に自動車、オートバイ等を輸出している(同輸出額768万ドル)。98年10月のTICAD

に際しコナレ大統領が訪日した。また、同大統領は、2001年1月の森総理のアフリカ訪問の際、ナイジェリアに赴き、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の議長として、森総理と会談した。
我が国は、農業、基礎教育、水供給等の基礎生活分野を中心とする無償資金協力及び鉱工業、行政分野等での研修員受入、開発調査等の技術協力を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するため、88年度及び95年度に合計87億円の円借款を供与したほか、99年度までに合計45億円のノン・プロジェクト無償資金協力を実施した。
マリは、既に債務削減措置の適用を受けている上、重債務貧困国(HIPC)として、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」に基づく債務削減措置が適用される見込みであり、新規の円借款による協力は困難であることから、今後は無償資金協力、技術協力を中心とした協力を検討していくこととする。
2000年6月にはプロジェクト確認調査を実施し、今後とも、同国の民主化、経済改革努力を支援するため、基礎生活分野や基礎インフラ分野に対し、無償資金協力及び技術協力を中心に援助実施を検討していくことで先方政府と確認している。
また、マリ政府は、2000年秋を目途に「貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper)」(暫定版)を完成させる見込みであり、今後ともPRSP(完成版)の策定に向けて、我が国としても積極的に貢献していく方針である。