(1) 東アフリカのタンガニーカとその沖合いに位置する島国ザンジバルからなる連合共和国である。92年5月に革命党の一党支配から複数政党制へ移行し、95年10月の大統領・国会議員選挙の結果、与党革命党が議席の80%を獲得し、同年11月ムカパ大統領、スマイエ首相等からなる新政権が発足した。内政は安定的に推移しているが、ザンジバルにおいて、95年の大統領選挙の結果を巡る与野党間の対立が続いていたが、99年6月、英連邦事務局の調停により、与野党間で和解が成立した。2000年10月には連合政府及びザンジバルにおいて大統領選挙、議会選挙等が同時に実施され、現職のムカパ大統領が再選された。
(2) 外交面では、非同盟主義及び反植民地主義という二大原則を掲げつつ、アフリカ統一機構(OAU)、国連等の国際場裡で積極的に活動し、また、日本等の西側諸国、東アジア諸国との関係強化に努めている。東アフリカ諸国との関係では、ケニア、ウガンダとの間で地域協力の強化に努め、99年11月、同三カ国は東アフリカ共同体(EAC)設立条約を締結するとともに、南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバーとして、南部アフリカ諸国での地域協力にも参画する等、重要な役割を担っている。
(3) 経済面では、GDPの約50%、労働人口の9割を農業部門が占めている。86年以降世銀・IMFの支援を得て、投資・流通制度改革、公営企業改革、公務員の削減等の構造調整政策を実施しており、今後経済の更なる自由化、公社・公団の民営化等により製造業等の成長が期待される。98年度のGDP成長率は、観光、鉱物資源(ダイヤモンド、金、宝石等)産業が好調であったこともあり、3.6%と2年連続3%台を達成するとともにインフレ率も99年4月には8.9%と過去25年間で最低の水準に落ち着いている。現在の課題として、多額の対外債務残高の返済、構造調整に伴う失業者及び貧困層への対策等が挙げられる。
(4) 我が国との関係は従来より良好であり、貿易関係については、我が国はタンザニアからコーヒー等を輸入し(99年輸入額6,716万ドル)、同国に自動車、タイヤ等を輸出している(同輸出額1億1,085万ドル)。98年12月にはムカパ大統領が来日した。我が国からは99年8月に鈴木官房副長官が訪日し、また、同年12月に高円宮同妃両殿下が御訪問された。
(1) 我が国は、タンザニアが、

東・南部アフリカ諸国において指導的な役割を担い、積極的に活動していること、

86年以降、金融部門改革、公社・公団改革等の構造調整・市場指向型経済政策を着実に推進していること、

92年5月複数政党制を導入し、95年10月大統領・国会議員選挙を実施する等、民主化努力を推進していること、

我が国との関係が極めて良好であること、

具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)をもって行っているタンザニアの開発政策は、DAC新開発戦略の趣旨に合致し、同国において新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること、

一人当たりGNPが220ドル(1998年)と極めて低い水準にあり、援助需要が大きいこと等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
(2) また、我が国は、タンザニアにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究、97年2~3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等における政策対話、及び2000年6月対タンザニア援助の一層の透明性の確保及び効率性の増大のために策定し発表した「タンザニア国別援助計画」を踏まえ、以下の分野を重点分野として援助を実施している。
(イ) 農業・零細企業の振興のための支援
タンザニア経済において圧倒的な地位を占めている農業・零細産業を振興するため、食糧増産のための肥料等の供与、灌漑施設の整備、農業技術の普及、零細企業振興のための適正技術の開発・普及等の協力を実施する。
(ロ) 基礎教育支援
基礎教育就学率が低下傾向にあるため、教育環境の整備、理数科教師の派遣等による教育の質の向上により就学率の回復努力を支援する。
(ハ) 人口・エイズ及び子供の健康問題への対応並びにその一環としての基礎的保健医療サービス向上
社会全体に深刻な影響を与えている人口・エイズ問題や子供の健康問題等への対応として、基礎的保健医療分野での各種協力を実施する。
(ニ) 都市部等における基礎インフラ整備等による生活環境改善
全国的に基礎インフラが不足しており、特に近年都市部においては、急速な人口増加に伴い、基礎インフラの不足等による生活環境の悪化が見られる。インフラの整備は、生活環境改善のみならず産業基盤整備という観点からも重要な課題であり、運輸、通信、電力、上水道の整備等への支援を行う。
(ホ) 森林保全
森林喪失が急速に進んでいるタンザニアにおいて、持続可能な経済開発を達成するために、森林保全に関し協力を実施する。
(3) 99年度までの我が国の援助累計実績は、有償資金協力は402.50億円でアフリカ域内第7位、無償資金協力は1,079.27億円で域内第1位(以上交換公文ベース)、技術協力は432.71億円で域内第2位(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を行っている。
(4) 有償資金協力については、同国の経済状況の悪化に伴い、債務繰延べを除き、82年度以降円借款の供与は行っていない。タンザニアは、既に債務削減措置の適用を受けている上、重債務貧困国(HIPC)として、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」による債務削減措置が適用されることとなっているため、新規の円借款による協力は困難であり、今後は従来どおり無償資金協力、技術協力を中心とした協力を検討していくこととする。
無償資金協力については、保健・医療分野等の基礎生活分野を中心に、通信・放送分野、道路整備、電力供給等の基礎インフラ整備に対して協力を行っている。また、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計165億円のノン・プロジェクト無償資金協力を実施し、99年度には、見返り資金の使途を教育分野とするセクター・プログラム無償10億円を供与した。
技術協力については、農業、工業、保健・医療等の分野で各形態により実施している。特に、キリマンジャロ州において水稲栽培等の農業開発、村落林業、中小工業開発の分野で継続的にプロジェクト方式技術協力を実施してきた。開発調査についても、農業・水産、教育、水供給分野等幅広く実施している。
(5) タンザニアは、自身の主体性(オーナーシップ)を発揮し、我が国も含めた他ドナー・国際機関、NGO等との連携により、タンザニア支援戦略書(TAS:Tanzanian Assistance Strategy)や、貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper)を鋭意作成中である。また各援助国及び援助機関において教育、保健セクター等のセクター・プログラムを積極的に推進しており、特に、教育分野のセクター・プログラムについては、英、EU、蘭、スウェーデンが使途限定のコモンバスケットをパイロット的に開始する等、援助協調の動きが進んでいる。我が国としては、「顔の見える援助」を行う観点からコモンバスケットにかかる動向を注視しつつ、他方で同国の真のオーナーシップに基づいた持続的開発達成を支援すべく、セクタープログラムをはじめ、TAS、PRSPの策定・実施・モニタリングプロセスに積極的に参加していく方針である。