[20]ジンバブエ
1.概 説
(1) 1980年の独立以来ムガベ大統領(87年に首相から大統領に就任)率いるZANU・PF(ジンバブエ・アフリカ国民同盟・愛国戦線)が議会で圧倒的多数を維持してきたが、2000年6月に行われた議会選挙の結果、野党MDCが改選120議席中58議席を獲得し大躍進した。これによりこれまでの一党支配体制から二大政党制へと大きく移行し、独立以来最大の政治的転換期を迎えている。
植民地時代に肥沃な土地から追われ、小規模な土地しか有しない黒人農民に土地を再分配する農地改革は現政権の重要な課題である。政府は白人大規模農場主の所有する土地を政府の決定の価格で収用することを可能とする土地収用法を92年3月成立させたが、白人大農家を中心とする商業農民組合(CFU)が反発し、また、農地を収用するための政府予算も十分でないことから、農地の再配分は遅々として進まず、2000年2月以降、退役軍人等による白人所有農場の占拠が生じている。また同年4月、旧宗主国である英国が収容農地への補償を行わない場合、ジンバブエ政府は付加価値分以外の補償の義務を負わないとの憲法改正が行われ、以降、同改正に基づく土地収容が進められている。
2000年6月24、25日に実施された議会選挙においては、選挙に先立って各地で政治的暴力・威嚇行為が発生した。またIMFとの交渉の不調(99年10月以来構造調整融資の支出停止)、外貨不足に伴う燃料の不足等により経済活動が大きく停滞する等、深刻な状況にある。
(2) 外交面では、非同盟主義の下、近隣諸国との緊密化を図っており、ムガベ大統領は、モザンビーク内戦終結の仲介の労をとる等地域の安定に指導力を発揮している。対南ア関係では、94年4月にマンデラ政権が樹立された後、直ちに外交関係が開設され、今後、両国間の経済関係は更に促進される見込みである。しかし、国境を接していないコンゴー民主共和国(旧ザイール)への軍事介入を行っており、国内の経済困難をも背景に政府批判が高まる危険を孕んでいる。
(3) 経済面では、豊富な鉱物資源に恵まれ、アフリカの中ではインフラが比較的整備され、また、農業、製造業及び鉱業が比較的バランス良く発達している。独立後は白人と黒人の格差是正に力を入れ、黒人大衆の教育、保健・医療の向上等に成果を上げた。政府は、従来の統制的な経済を自由化する政策に転換し、91年、世銀・IMFの協力を得て経済構造調整計画(91年~95年)を実施に移し、輸入の自由化、為替制度改革、各種規制緩和、金融管理の分野では進展が見られた。更に、財政赤字の削減、雇用創出等を政策課題とした第二次経済構造調整計画(ZIMPREST 1996~2000年)の下で現在構造調整政策を実施している。しかしながら、近年ジンバブエ経済は、財政赤字、インフレ、失業、外貨不足等山積みする問題を前に深刻な状況にある。
(4) 我が国は、ジンバブエからニッケル、フェロアロイ等を輸入し(99年輸入額1億8,016万ドル)、同国に自動車、機械類等を輸出している(同輸出額6,167万ドル)。
(参考1) 主要経済指標等
(参考2) 主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 我が国は、従来、ジンバブエの民主化や経済構造改革への努力や、旺盛な援助需要、開発における主体性(オーナーシップ)を評価し、我が国対アフリカ援助における重点国の一つとして位置づけ、食糧援助、食糧増産援助のほか、基礎生活分野や基礎インフラ分野に対し、積極的な援助を実施してきた。
我が国は、ジンバブエにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び98年1月に派遣した経済協力総合調査団等におけるジンバブエ側との政策対話を踏まえ、以下の分野を重点分野としている。
(イ) 所得向上に結びつく産業振興のための条件整備
経済を支える基礎条件の整備のために、労働市場が必要としている人材開発のための職業訓練の充実や、通信、運輸等の経済インフラの整備を図る。また、より広い基盤に支えられた経済成長を実現させていくために、中小企業の育成のための支援を行う。
(ロ) 保健医療
HIV感染率が深刻なほど高い状況にあるため、感染防止のための教育・啓蒙活動や予防対策に取り組む。また、マラリア等の感染症の分野での対処能力の向上やプライマリー・ヘルス・ケアに関する支援により、保健水準の向上を図る。
(ハ) 共同体地域及び再入植地域の農業
人口の3分の2が従事し、総輸出額の半分近くを占める農業の振興は重要であり、小農の多い地域において灌漑、食料増産等の支援により農業振興を図る。
(ニ) 水を含む環境保全
水資源問題、森林保全等の環境問題に対し、地方及び都市部における水資源の確保の改善を図るとともに、ジンバブエ政府が策定中である環境行動計画の具体化に向けての支援を行う。
(2) 有償資金協力については、通信を中心とする経済インフラの整備に対し援助を実施している。
無償資金協力については、食糧増産援助のほか、農業、保健・医療分野といった基礎生活分野、環境分野等で援助を実施している。特に、道路分野において、国内の道路整備のみならず、広域協力として、ザンビアとの国境のザンベジ川にかかるチルンド橋の建設に対する協力を実施している。また、同国の構造調整努力を支援するため、99年度までにノン・プロジェクト無償援助を合計129億円供与した。
技術協力については、農業、通信・放送、行政、保健・医療等の分野における研修員受入に加え、現在、感染症に関するプロジェクト方式技術協力を実施している。また、工業、環境保全、農業、経済インフラ等の分野における開発調査等を実施している。
(3) 緊急援助については、2000年3月の洪水災害に対して、緊急援助物質(2,226万円相当)を供与した。
(4) なお、今後の経済協力にあたっては、2000年6月に実施された議会選挙後の国内情勢や治安状況を注視していく必要がある。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
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