(1) 91年10月、初の複数政党制下での大統領選挙が行われ、チルバ複数政党民主主義運動(MMD)党首がカウンダ大統領に圧勝し、また、議会選挙でもMMDがカウンダ前大統領率いるUNIP(統一国民独立党)に勝利した。政権交替はスムーズに行われ、アフリカにおける民主化の成功例として評価された。
チルバ政権は、構造調整による経済再建への積極的な取組みを見せたが、他方で、カウンダ前大統領の大統領選挙出馬阻止を狙った憲法改正(96年5月)、軍内部によるクーデター未遂事件(97年10月)があり、また、MMD内部、特に現職閣僚を含む麻薬・汚職問題も指摘されている。今後、2001年に予定されている大統領選挙に向けた動きが注目される。
(2) 外交面で、チルバ政権は、自国の経済建設を最優先とする実利的な外交路線を展開し、特に、南アフリカとは、同国の民主化以前から経済関係を強化し始めていた。また、アンゴラ和平プロセスにおける仲介役としての役割や、モザンビーク、ルワンダ等へのPKOの派遣、最近ではコンゴー民主共和国の和平合意へのイニシアティブを発揮する等紛争解決のために積極的に貢献する姿勢を見せている。
(3) 経済面では、チルバ政権が構造調整計画を実施した結果、財政赤字の削減・インフレ率の抑制等のマクロ経済指標については、一定の改善が見られる。また、銅に依存するモノカルチャー経済の反省から、政府は農業その他産業の多角化に努力し、これら非伝統的輸出の総輸出に占める割合が増加している。98年にマイナス(-0.2%)を記録した経済成長率も、99年は穀物生産・非伝統的産品の生産の伸びに支えられて、2%の成長を達成した。2000年4月に、長年の懸案であったザンビア銅公社(ZCCM)の主要資産の民営化が完了し、今後期待される外国投資による鉱業部門の活性化、肥沃な未開拓可耕地を擁することを踏まえての農業生産性の向上による経済成長が見込まれている。
但し、GNP(約32億ドル・98年)の2倍以上にも及ぶ対外債務(99年末65億ドル以上)の削減を始めとする経済発展のための課題が存在しており、行政の非効率、予算不足がネックとなり進展が遅いのが現状である。
(4) 我が国は、ザンビアから銅・コバルト等を輸入し(99年輸入額9,353万ドル)、同国に自動車等を輸出している(同輸出額1,783万ドル)。2000年12月にはチルバ大統領が訪日した。
(1) 我が国は、ザンビアが、

アフリカ統一機構(OAU)等の有力メンバー国の一つであり、南部アフリカ地域において指導的立場にある国であること、

世銀・IMFの支援の下、金融関連規制の自由化、公営企業の民営化、各種価格統制の廃止等の構造調整を積極的に推進していること、

銅、コバルト等鉱物資源の供給国として我が国にとって重要であり、また、我が国と良好な関係にあること等から、援助を実施している。しかし、今後の援助の実施については、チルバ政権の行政能力のほか、野党に対する対応ぶり、2001年に実施される予定の大統領選挙等同国の良い統治に対する取り組みを注視していく必要がある。
なお、96年6月、我が国は96年憲法改正案採択の過程で、政府が野党側との対話を行わなかった等の理由により、米、独等の援助国とともに、国際収支支援型の援助を見合わせる等の措置をとった。
(2) 2000年3月に実施された経済協力総合調査団におけるザンビア側との政策対話を踏まえ、次の分野を重点分野として、今後無償資金協力、技術協力により支援していく方針である。

農村開発を中心とする貧困対策への支援
小規模農業の生産性向上に資する支援、農村開発計画策定、農作物増産にかかる支援に加え、持続可能な農業技術の導入及び農業資材購入のためのマイクロ・クレジット導入等にかかる支援を実施する。

費用効果の高い保健医療サービスの充実
HIV/AIDS等感染症対策に加え、保健医療サービスへのアクセス拡大を念頭としたプライマリーヘルスケアの拡充に対する支援、安全な水の供給のための給水設備と住民参加による同施設の維持・管理能力の向上にかかる支援等を実施する。

均衡のとれた経済構造改革努力への支援
銅に過度に依存しない産業振興を図り、国内産業の裾野を確保するための中小企業育成及び商業的農業の育成等にかかる支援を実施する。

自立発展に向けた人材育成、制度構築
基礎教育における質の改善と普及を図るため、施設建設及び改修、教員の再教育等に対する協力を実施する。また、住民サービスの中心となる地方行政の能力向上に加え、労働市場が必要としている職能の人材開発等にかかる支援を実施する。

地域相互協力の促進
小国の多い南部アフリカ地域において開発を効率的に進めるために、周辺諸国との分野横断的な協力ネットワークの強化、交流促進のための支援を行う。また、南部アフリカの中心という位置関係から、地域協力に貢献しうる輸送、交通及び通信ネットワーク等の経済インフラに対する支援を実施する。
(3) 99年度までの我が国の援助累計実績についてみると、有償資金協力は965.43億円で域内第3位、無償資金協力は775.42億円で域内第2位(以上交換公文ベース)、技術協力は313.15億円で域内第3位(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を実施している。
(4) 有償資金協力については、ザンビアの経済・債務状況の悪化もあり、84年度以降債務繰延べを除き円借款の供与は行っていないが、同国の民主化・経済改革努力への支援の観点をも踏まえ、世銀との協調融資により、92年度には97億円の商品借款を供与した。
しかし、ザンビアは、すでに債務削減措置の適用を受けている上、重債務貧困国(HIPC)として、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」による債務削減措置が適用されることが見込まれていることから、新規の円借款による協力は困難であり、今後は無償資金協力、技術協力を中心とした協力を検討していくこととする。
無償資金協力については、農業分野、水供給分野等の基礎生活分野、運輸・通信等の基礎インフラ整備等に対して協力を実施している。特に道路分野では、国内の道路整備のみならず、広域協力としてジンバブエとの国境を流れるザンベジ川にかかるチルンド橋の建設に対する協力を実施している。
また、同国の構造調整努力を支援するため、98年度までに合計185億円のノン・プロジェクト無償資金協力を実施し、99年度には、見返り資金の使途を保健、教育分野とするセクター・プログラム無償15億円を供与した。
技術協力については、農業、保健・医療等の分野でプロジェクト方式技術協力、研修員受入、専門家派遣、青年海外協力隊派遣、開発調査の各事業を実施している。
(5) ザンビアは、サブサハラアフリカ諸国の中でもセクタープログラムが最も進んでいる国の一つであり、ザンビア政府のオーナーシップのもと保健セクターをはじめとし、農業、道路、教育分野において進展している。また、ザンビア政府は「貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper)」を鋭意作成中であり、我が国としてもセクタープログラム及びPRSPの策定作業等に積極的に貢献していく方針である。