(1) 81年末の軍事クーデターで政権に就いたローリングス議長の率いる暫定国家防衛評議会
(PNDC)は、80年代後半より民主化に着手し、複数政党制の導入等を規定した新憲法草案の国民投票、大統領選挙(92年11月実施:ローリングス大統領選出)、議会選挙等を経て、93年1月、平和裡に民政移管を果たした。96年12月には、大統領選挙及び議会選挙が実施され、同大統領が再選された。また、2000年12月に、公正かつ自由な大統領選挙が実施され、野党候補のクフォー氏が大統領に選出された。
(2) 外交面では、非同盟を基調としつつ、近隣諸国との友好関係を維持するとともに、先進諸国との関係強化に力を入れている。また、近年、我が国をはじめアジア諸国との関係強化に乗り出している。さらに、国連等の枠組みに基づき平和維持活動へ参加しているほか、国際機関やアフリカ統一機構(OAU)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)等の地域機構との協力を推進している。
(3) 経済面では、金、カカオ等の輸出に依存しており、国際貿易環境の影響を受けやすい。ローリングス政権は世銀・IMFの協力を得て構造調整政策を実施するとともに、現在、人材開発、経済発展、農村開発、都市開発及び国家開発のための環境整備を内容とした第一次中期経済社会開発計画(1996―2000)や自由主義経済の振興を通じた経済社会開発を進め、2020年を目途に中所得国入りを目指す「ヴィジョン2020」の下で、経済開発を進めていた。また、一次産品輸出と援助への依存からの脱却を目指すには、今後民間投資の拡大が不可欠であるとの観点から、投資環境の整備に力を入れている。こうした施策の結果、近年は年平均5%の経済成長を維持するに至っている。
(4) 我が国との関係は従来より良好かつ緊密であり、我が国はガーナからカカオ豆、イカ、タコ等の水産物及びダイヤモンド、マンガン鉱等を輸入し(99年輸入額6,403万ドル)、同国に自動車、鉄鋼板、有線電話等を輸出している(同輸出額8,460万ドル)。また、97年12月、98年10月及び2000年6月にはローリングス大統領が来日し、99年5月には橋本元総理がガーナを訪問した。
(1) 我が国は、ガーナが、

西アフリカの中心的な勢力の一つとして、政治的に大きな発言力を有していること、

83年以来構造調整政策を推進し、経済改革に積極的に取り組んでいること、

大統領・国民議会選挙を経て、93年1月には民政移管を完了させ、96年12月の大統領選・国民議会選挙についても極めて公正に透明性をもって実施し、順調かつ確実な民主化プロセスを進展させていること、

我が国との関係が良好であること、

具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を発揮し、同国の開発政策がDAC新開発戦略の趣旨にも合致し、同国においてDAC新開発戦略の実施を重点的に実施しうる状況にあること、

一人当たりGNPが390ドルと低く、大きな援助需要があること等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
我が国は、ガーナにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び2000年5月に行われた政策協議等を踏まえ、「ガーナ国別援助計画」を策定し、2000年6月に発表した。当該援助計画においては、次の分野を重点分野として援助を実施していくこととしている。
(イ) 農業開発
ガーナの農業の主体である小規模農家に対し、生産性向上のため、小規模灌漑技術の移転及び施設の修繕・拡充、ポスト・ハーベスト部門の強化・充実等への支援を検討する。
(ロ) 基礎的生活分野
(a) 基礎教育
他のドナーとも協調しつつ、教育施設建設や機材の充実等に対する協力に加え、カリキュラムの充実、教員養成等の技術協力の実施を検討する。
(b) 保健・医療
他ドナーとも協調しつつ、地域医療、プライマリーヘルスケア、HIV/AIDS等の感染症対策、国際寄生虫対策のための協力の実施を検討する。更に、ガーナ大学野口記念医学研究所をアフリカ・レベルの拠点として発展させるため、人材育成の協力の実施を検討する。
(c) 安全な水の供給
地方給水分野での支援を継続し、更に衛生面での教育・啓蒙活動、給水施設の運営・維持管理体制の確立に係る支援を検討する。
(ハ) 経済構造改革
我が国はこれまで、世界銀行との協調融資支援やノン・プロジェクト無償資金協力を実施してきている。我が国は、貧困削減支援の一環として、世銀・IMFとの連携・協調を視野に入れつつ、マクロ経済バランスの安定化のための支援を検討する。
(ニ) 産業育成
産業振興の環境づくりのため、中小企業育成・生産構造の多様化・加工度向上による高付加価値化・投資環境整備・人材養成基盤の拡充等への支援を検討する。
(ホ) 経済インフラ整備
(a) 運輸
幹線道路の修繕、地方道路・農道等における橋梁等の整備支援の可能性や道路維持管理能力向上のための人材育成支援の可能性を中心に検討する。
(b) その他
発電施設の改修・新設及び地方電化の促進の協力の可能性を検討する。また、通信分野では、都市部・地方部における通信網整備・リハビリ等への協力の可能性を検討する。
(2) 99年度までの我が国の援助累計実績は、有償資金協力は1,250.91億円でアフリカ域内第2位、無償資金協力は559.66億円で域内第6位(以上交換公文ベース)、技術協力は228.29億円で域内第4位(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を行っている。
(3) 有償資金協力については、同国の債務負担能力に留意しながら慎重に実施している。ガーナは、重債務貧困国(HIPC)に認定されているが債務削減措置の適用を求めずに、新規資金により経済社会開発を進めるとの姿勢を明らかにしており、我が国としても、このガーナの自助努力を高く評価している。
無償資金協力については、水産分野、保健・医療分野、水供給分野、基礎インフラ整備等広範な分野で協力を実施しているほか、草の根無償資金協力も積極的に実施している。
技術協力については、保健・医療、運輸・交通、農業等広範な分野において各協力形態との連携を図りつつ実施している。特に、無償資金協力とプロジェクト方式技術協力を組み合わせた「ガーナ大学医学部基礎医学研究所(野口記念医学研究所)」プロジェクトは我が国の国際医療協力の代表例の一つとなっている。同研究所を実施機関として、WHOとの連携による黄熱病・ポリオ感染実験室診断技術の第三国研修を96年より実施するとともに、98年5月のバーミンガム・サミットにおいて提案された国際寄生虫対策の一環としての拠点立ち上げ後、TICAD

フォローアップの一環との観点からもアフリカ側の拠点の一つとして周辺諸国の人材研修等南南協力を推進している。
更に、我が国は、同国の構造調整努力を支援するため、99年度までに合計約369億円の円借款及び合計140億円のノン・プロジェクト無償資金協力を実施した。
(4) ガーナにおいては、ガーナ政府のオーナーシップの下、セクター・プログラムについての議論が相当程度進んでおり、特に保健、教育分野での進展が見られる。
また、ガーナ政府は、2001年3月を目途として「ガーナ貧困削減戦略(Ghana’s Poverty Reduction Strategy(GPRS))」(暫定版)を鋭意作成中であり、我が国としても右作業に積極的に貢献していく方針である。
(5) その他、緊急援助の分野では、99年の洪水災害に対して緊急援助物資(2000万円相当)を供与した。