(8) 債務救済に対する協力
 アフリカにおいては、脆弱な経済力に加え、構造調整政策に伴う困難、紛争や自然災害等の影響から、深刻な債務返済困難に陥っている国が多い。こうした状況に対し、78年の国連貿易開発会議(UNCTAD)の特別貿易開発理事会(TDB)で開発途上国に対する債務救済措置を行うことが決議されたり、パリクラブ(債務返済困難に直面した債務国に対する二国間公的債務の返済負担軽減措置を取り決める国際的な枠組み)において、債務削減幅が漸進的に引き上げられるなど、国際的にも途上国の債務救済の重要性が指摘されている。
 また、経済構造調整・改革の実績が良好な重債務貧困国(HIPCs:Heavily Indebted Poor Countries、41カ国、そのうちサハラ以南アフリカ諸国32カ国)について、その二国間及び対国際機関の債務負担を持続可能な水準まで低減させることを目的とする「HIPCイニシアティブ」が96年9月に世銀・IMFにより策定されたが、99年6月のケルン・サミットにおいては、これを改善・拡充し、二国間ODA債権の100%削減、非ODA債権の原則90%削減等を行うことにつき合意された(=拡大HIPCイニシアティブ)。なお、我が国は2000年4月、ケルン・サミットで合意された枠内で自主的に非ODA債権の削減率を100%まで拡大すること、世界銀行のHIPC信託基金に対し既拠出分とあわせ2億ドルまでの追加拠出を行うこと等の重債務貧困国に対する「追加的措置」を発表した。
 従来より我が国は、LLDC諸国に対しては原則無償資金協力を実施するとともに、パリクラブの国際的枠組みの下での債務救済、債務帳消しと同等の効果を有する債務救済無償資金協力を行っている。99年度は7カ国に対し総額約180.04億円にのぼる債務繰延を実施し、また10カ国に対し総額37.41億円の債務救済無償資金協力を行った。
 また、アフリカ諸国の債務管理能力向上を支援するため、98年10月のTICAD02では、我が国技術協力による研修事業や、我が国の資金を活用したアフリカ開発銀行(AfDB)やUNDPを通ずる人材育成を行うことを発表した。
(9) 地球規模問題に対する協力
 アフリカ諸国における人口増加率は平均3%弱と極めて高い水準にあるが、人口の増加は、生活水準の向上、環境保全に大きな負担をもたらす深刻な問題となっている。また、アフリカ大陸は多様な生物の宝庫であり酸素の供給源ともなる広大な熱帯雨林地帯を有する一方で、サハラ砂漠等の深刻な砂漠化問題にも直面しており、環境保全のために積極的な協力を必要としている。こうした貧困・人口増加・環境劣化が悪循環をなす状態にあるアフリカにおいては、全体としてより効果が高まるよう総合的な視点で協力を検討していく必要がある。
 また、近年HIV/AIDS感染者の急増が世界的に大きな問題となっているが、特にアフリカには世界の約71%の感染者が存在していると考えられており(UNAIDS推計)、その拡大防止が緊急の課題となっている。我が国はこれまで、「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」の下、この分野において積極的な協力を進めてきた。主な具体例として米国と連携したザンビアにおけるハイリスク・グループへの予防啓蒙支援等を実施している。
 昨年8月に発表した「ODA中期政策」においてもエイズ問題を重点課題の一つとして掲げており、2000年7月の九州・沖縄サミットにおいても、HIV/AIDSをはじめとする感染症対策のため、「沖縄感染症対策イニシアティブ」を発表し、今後5年間で30億ドルを目途とする協力を行うこととしている。
(10) 途上国の女性支援(WID)
 アフリカの食糧生産の8割近くは女性の手に委ねられている(国連統計)等アフリカ開発における女性の役割の重要性は、我が国を含む援助国の共通の認識となっている。我が国は、WID/ジェンダーの視点を念頭に置きつつ、社会全体の持続可能な経済社会開発を目標としているが、アフリカにおけるこの分野の具体的な取組みとしては、93年より実施されているアフリカの女性教師の本邦招聘、アフリカ地域へのWID分野の青年海外協力隊の派遣が挙げられる。
(11) 他ドナーとの連携強化
 アフリカは、元来歴史的にも地理的にも我が国との関係が希薄であることもあり、案件発掘のための情報収集、協力実施段階におけるきめ細かい配慮、的確なフォローアップ等を十分に行うための協力実施体制の一層の整備に特に配慮する必要がある。同時に、歴史的にも関係が深い欧米諸国や、アフリカ諸国内にもネットワークを有する世銀、UNDP、UNICEF等の国際機関との連携をできる限り図ることが重要である。こうした背景において、我が国は、DAC新開発戦略のパートナーシップの考え方に基づき、開発途上国自身或いは世銀・UNDP等が主催する援助国会合や現地におけるドナー代表者の会合を通じて、各ドナーとの意見交換を行い、当該国に対する整合性のとれた援助政策策定等に努めている。
 現在、アフリカの多くの国で、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)やセクター・プログラム・アプローチ(SP)に基づくドナー連携が進められている。PRSPは、被援助国が、限られた資金を貧困削減に振り向けるための開発戦略書であり、被援助国政府のオーナーシップの下、幅広い関係者(ドナー・国際機関、市民社会、NGO、民間セクター等)が参画して作成する貧困削減に焦点を当てたその国の重点開発課題とその対策を包括的に述べた3年間の経済・社会開発戦略書である。また、債務救済と貧困削減及び社会開発との関連性を明確に示すものでもあり、PRSPの策定が拡大HIPCイニシアティブに基づく債務救済措置の適用のための、条件の一つとなっている。また、SPは、希少な援助資金の効率的な運用のために被援助国が主体的に各セクターの開発計画(プログラム)を立案し、各ドナーは各々の援助をSPに沿って実施するべく、ドナー間の援助調整を行うことにより、効率的かつ効果的な開発を進めることを目的としている。我が国はアフリカの中でもこれらSPが相当程度進んでいるガーナ、タンザニア、ザンビア等の保健、教育分野等を中心に積極的に関与することとしている。これらの手法は、DAC新開発戦略及びTICAD IIで採択された「東京行動計画」の中でも強調されているオーナーシップ、パートナーシップの考え方の具体化にも資するものである。また、我が国としては専門家、現地に密着した青年海外協力隊、本邦NGOによる支援強化を実施し、こうした人と人との接触を通じた協力により、我が国の「顔の見える援助」にも十分配慮しつつ、こうした国際社会での取り組みに初期の段階から積極的に参画していくことが重要である。

表―14 アフリカ地域に対する我が国の二国間ODA形態別・国別・年度別実績

(1) 有償資金協力
(2) 無償資金協力
(3) 技術協力
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