アフリカ地域では、近年、複数政党制への移行や自由選挙の実施等の民主化の進展、構造調整政策の進展等によって経済成長を達成する国々も増加している。しかしながら、世界経済が拡大する中、一人あたりGNPは同地域のみが80年代初頭以来減少しており、また、同地域の人口の約4割が依然貧困ライン(1日1ドル)以下の生活を送っているなど、経済のグローバル化から取り残される懸念は依然として存在している。さらに、武力紛争の発生・難民・避難民問題、エイズをはじめとする感染症の蔓延等、開発を阻害する深刻な問題を抱える国々も多い。また、アフリカの過半の国はLDCであり、多額の債務を抱える国々(いわゆる重債務貧困国)が存在する。アフリカ地域における貧困削減と経済成長及び世界経済への統合は、サミットでも議論される等、国際社会全体として取り組むべき重要な課題となっており、国際社会において主要な役割を果たそうとする我が国としてはアフリカの開発に積極的に取り組む必要がある。
こうした認識の下、我が国は、後述する93年の「アフリカ開発会議(TICAD;Tokyo International Conference on African Development)」及び98年の「第2回アフリカ開発会議(TICAD

我が国としては、同地域の持続的開発及び世界経済への統合を促進すべく、社会的弱者に直接裨益する基礎教育、保健、水供給等のいわゆる基礎生活分野、持続的な農業開発に資する支援を中心に積極的に行っている。また、開発政策・行政面も含めた人材育成のための人造り分野、道路などの基礎的なインフラ分野等に対し支援することが求められている。
また同時に、アフリカ諸国の国際政治上の重要性にも鑑み、対アフリカ援助に当たっては、二国間友好関係の強化、多国間外交の場における我が国への支持・協力の確保、アフリカが抱える課題(経済社会開発の促進、紛争の解決、緊急人道援助等)に対する貢献、といった外交目的の達成を念頭に置くことが重要である。
(2) アフリカ開発会議(TICAD)―我が国の対アフリカ援助のあり方
93年10月、我が国は国連及びGCA(アフリカのためのグローバル連合)との共催で、アフリカ諸国や援助国、国際機関等の参加を得て「アフリカ開発会議(TICAD)」を開催した。この会議は、援助国、国際機関、アフリカ諸国が一堂に会しアフリカの開発のあり方について議論するとともに、アフリカの現状や支援の必要性に関する国際・国内世論の理解と支持を深めることを目的としたものであり、会議の成果としてその後のアフリカ開発の指針ともいうべき「東京宣言」を採択した。
その後、アジア、アフリカ諸国間の協力を推進することを目的として、これまで3回にわたり「アジア・アフリカ・フォーラム」(94年12月インドネシア、97年6月タイ、2000年5月マレイシア)を国連等との協力により開催した。
また、96年4月に南アフリカで行われた第9回国連貿易開発会議(UNCTAD)総会において、我が国は「対アフリカ支援イニシアティブ」として、特に経済・社会開発の遅れているアフリカ地域に対し、積極的な協力を行っていくことを表明し、具体的には、第2回アフリカ開発会議(TICAD

TICAD

(a) アフリカに対する教育支援(“Education for All”)
(i) 遅くとも2015年までにアフリカ諸国の全ての子供が初等教育を受けられるようにする(“Education for All”)ことを国際社会の目標とすることを支持し、この目標達成のために我が国が積極的な役割を果たす。
(ii) 初等教育の普及を中心とした教育支援をアフリカ諸国に対して引き続き推進することとし、無償資金協力及び技術協力を中心に、向こう3年間で1億ドルを目途とする支援を実施する。
(b) 3,000名の研修員の本邦招聘
向こう3年間で3,000名程度の技術研修員の我が国への受入れに努める。
(c) アフリカ開発のための南南協力への支援
アジア・アフリカ諸国の南南協力に向けた努力を支援するため、我が国が国連開発計画(UNDP)に設置した「人造り基金」の一部をアジア・アフリカ協力を含む南南協力推進のために重点的に活用する。
(ロ) ポリオ根絶支援構想(“Health for All”)
アフリカ諸国において全ての人々の健康が確保されるよう(“Health for All”)アフリカ地域における2000年までのポリオ根絶に向け1995年にアフリカ地域WHO事務局(AFRO)が策定した「ポリオ・ワクチン全国一斉投与計画(NID)」(5歳未満の全児童を対象としたポリオ・ワクチンの全国一斉投与)の目標達成のために積極的な支援を行う。このため、NIDに必要なワクチン、コールドチェーン、ポリオ判別診断機材等の供与、専門家の派遣等を実施する。
これらの成果として、アフリカ人造り支援構想に関して、小学校建設計画等に対し、98年度までに202.96億円の援助を行い、技術研修員等の我が国への受入につき、98年度までに2,269名の研修員を招聘した。また、並びに南南協力への支援として、96年度及び97年度に3つのプロジェクトに対してUNDP等を通じ83.5万ドルをイヤマークした。
また、ポリオ根絶支援構想として、ケニア、タンザニア、ガーナ、象牙海岸、マラウィ、ブルキナファソ、エチオピア、カメルーン及び中央アフリカに対しワクチン及びコールドチェーンの供与を実施し、99年度までに34.69億円の援助を実施した。