第3章 事後評価結果の分析


3.事後評価結果の整理

 外務省評価室が実施した有識者評価、在外公館による評価、被援助国関係者による評価、現地コンサルタントによる評価の98年の評価対象案件総数113件のうち、「成功した案件」67件、「一部改善すべき点が指摘された案件」45件、国内騒乱の発生という予期せぬ外部要因(不可抗力)によって影響を受けたために、「全体として成功とは言い難い案件」に分類された案件が1件ありました。
 成功した案件と評価された67案件は、有償資金協力、無償資金協力、プロジェクト方式技術協力など全ての援助形態に分散しており、また、アジア、中東、アフリカ、中南米に満遍なく見られ、地域的な偏りもありません。 評価者である有識者、在外公館、被援助国関係者によって、成功と判断された理由はさまざまですが、まずは、当初計画どおりにプロジェクトが実施されていることが必須の条件だと言えるでしょう。 さらに、a)相手国側の要望に的確に合致していた、b)大きな副次的効果が確認された、c)技術移転などにより自立的発展性に寄与した、など事後的に好ましい影響が確認できた場合に成功した案件との評価を得るに至っています。
 一部に改善すべき点が指摘された案件45件は、基本的に当初計画どおりにプロジェクトが実施されてはいるが、想定した効果を完全に実現するまでには至っていない案件が多くあげられました。 これはプロジェクトの一部を改善すれば、想定した効果が上がる可能性が高いことを示しており、評価実施後に適切と思われる対応策がとられているケースがあります。 実際にとられた対応策については、各論編をご覧ください。 こうした一部に改善すべき点が指摘された案件は、プロジェクト選定時及び実施期間内に慎重かつ適切な対応を取れば、成功案件となるものも多く、そのためには、a)相手国のニーズをより適切に把握すること、b)相手国の技術レベルを的確に把握すること、c)外部環境の変化に迅速に対応すること、が今後ともより一層必要だと言えるでしょう。
 過去の評価経験から、「全体として成功と言い難い」とされる要因として、a)相手側要因、b)日本側要因、c)予期せぬ外部要因(不可抗力)、の3つが考えられますが、中央アフリカの「道路建設機械増強計画」の場合には、援助実施後の大規模な騒乱発生という予期せぬ外部要因(不可抗力)が大きく影響していたと評価されています。 この案件について少し詳細に解説したいと思います。
 中央アフリカでは、同国運輸分野の開発計画である「運輸セクタープログラム」が90年に策定され、それに基いて同国政府が、各援助国・国際機関に支援を求めました。 世銀やヨーロッパ共同体(EC)が中心となって道路整備の支援を行いましたが、我が国も同国の要請に応じて、94年に道路整備機材123台(ブルドーザー13台、ダンプトラック30台、モーターグレーダー29台、小型修理車3台など)を無償供与しました。 同国はその名前が示すとおり、アフリカの中央部に位置する内陸国で、生活物資などはおよそ1,500km離れたカメルーンの港から陸路にて運送しているほか、国内道路網の不備により、地方都市と首都のアクセスは劣悪で、無償供与の実施当時、機材・資金の不足により国内道路の40%しか保守・整備されていなかったとされています。 したがって、同国にとって道路の整備や保守は同国の生命線とも言える課題であり、我が国援助はこの状況の改善に大きく資するものでした。 我が国援助実施(94年)の一年後に実施された調査では、供与された大多数の機械が故障もなく使用されている旨の報告がありました。しかし、当時我が国の新聞等でも報道されたように96、97年に大規模な騒乱が発生し、本件供与機材の維持管理にも深刻な影響を及ぼしました。 騒乱により、我が国が派遣していた専門家のほか、世銀や他の援助国の専門家は一斉に国外脱出を余儀なくされました。 この騒乱によって供与機材の稼働が低下し、維持管理に困難をきたしている例が見られましたが、こうした事態は大規模な騒乱という不可抗力によるものです。 しかし、騒乱発生から現在まで保守・整備されていない道路の老朽化や傷みは激しく、早急に機材の点検・整備を含めた対応策がとられる必要があり、我が国としてもその方向で検討を進めています。

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