欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development) の概要と実績


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     EBRDは、1991年4月に設立された。我が国は1991年の設立時に加盟している。

    (2) 経緯及び目的
     EBRDは、複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則に基づき、市場指向型経済への移行に取り組む中東欧諸国を支援することを目的として、1991年4月に設立された。1999年3月現在で58か国及びEC、欧州投資銀行(EIB)が加盟している。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     EBRDの主な機能は、支援対象国のプロジェクトに対する(1)融資、(2)出資、(3)保証、及び(4)プロジェクトの準備・執行や投資環境整備のための技術協力である。なお、EBRDのポートフォリオの以上は民間部門向けでなければならない。
     EBRDの財源は、加盟国の出資金(払込資本)に加え、市場からの資金調達により賄われており、1999年度(1999年1月~12月)の中長期の資金調達額は約2,698百万ユーロとなっている。

    (2) 審査・決定プロセス
     EBRDは、各国のマクロ経済調査、セクター調査、マーケット調査等の各種調査を行った上で国別支援戦略を策定し、支援の重点分野を決定する。その後、支援戦略との整合性、体制移行への貢献度、周辺環境への影響等を勘案し、民間事業者や他の投資家、受入国政府との対話を行いつつ、具体的な支援プロジェクトを組成し、理事会においてプロジェクトの実施が決定される。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     案件の実施は、借入人が行っており、EBRDはこれら事業が円滑に実施されるようモニタリングを行っている。

  3. 最近の活動内容

    (1) 活動の概要
     EBRDの融資は市場金利ベースで実施されており、コミット総額については1998年が2,373百万ECU、1999年が2,162百万ユーロとなっている。

    (2) 地域別実績
     これを国別に見ると、1998年は、ロシアが541百万ECU(総額比22.8)、ポーランドが354百万ECU(同14.9)、ルーマニアが252百万ECU(同10.6)、クロアチアが170百万ECU(同7.2)、カザフスタンが157百万ECU(同6.6)等となり、1999年には、ウクライナが243百万ユーロ(総額比11.2)、チェコが205百万ユーロ(同9.5)、カザフスタンが183百万ユーロ(同8.5)、ロシアが164百万ユーロ(同7.6)、ポーランドが147百万ユーロ(同6.8)等となっている。

    (3) 主要な事業
     分野別に見ると、1998年は、金融部門が933百万ECU(総額比39.3)、製造業部門が351百万ECU(同14.8)、エネルギー・発電部門が245百万ECU(同10.3)、運輸部門が223百万ECU(同9.4)、通信部門が194百万ECU(同8.2)となり、1999年には、金融部門が805百万ユーロ(総額比37.2%)、運輸部門が315百万ユーロ(同14.6%)、農業部門が222百万ユーロ(同10.3%)、天然資源部門が180百万ユーロ(同8.3%)、通信部門が180百万ユーロ(同8.3%)等となっている。

  4. 我が国との関係

    (1)意思決定機構における我が国の位置づけ
     最高意思決定機関は、各加盟国の総務により構成される総務会であり、我が国は大蔵大臣が総務に任命されている。また、融資の承認等の日常業務の決定は23人の理事(EU諸国から11名、中東欧の受益国から4名、その他の欧州の国から4名、及び欧州の国以外の国から4名)からなる理事会で行われており、我が国からは単独で理事が選出されている。
    (2)邦人職員
     専門職820人のうち日本人は13名である。(1999年12月末現在)
    (3)我が国の財政負担
     授権資本200億ユーロのうち、我が国の出資額は約17億ユーロ(シェア8.5%)であり、米に次いで、仏・独・英・伊と並び加盟国中第2位である。
    (4)主な使途を明示した信託基金への拠出、活用状況
    日本・欧州特別基金(1991年創設)
     1998年度拠出 約13億円
     1999年度拠出 約10億円
    使途:EBRDが行う技術協力等の活動支援等
    日本ポストコンフリクト支援基金(1997年創設)
     1997年度拠出 10億円
     1998年度、1999年度拠出なし。
    使途:EBRD支援対象地域における紛争関係国の戦後復興を目的としてEBRDが行う活動支援
    (5)我が国ODAとの協調実績
     1997年度、1998年度中の我が国機関によるEBRDとの協調融資総額は、1997年度に116百万ドル。内訳は、日本輸出入銀行(注)による、1997年度のロシア・サハリン2油田開発プロジェクト(116百万ドル)となっている。1998、1999年度は実績なし。
    (注)日本輸出入銀行による支援はODA(政府開発援助)ではなくOOF(その他の公的支援)

  5. より詳細な情報

    (1) 書籍等
    Annual report など。下記のホームページにて読むことができる。
    (2) ホームページ
     http://www.ebrd.com

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