開発途上国貿易促進協力事業の概要と実績

  1. 事業の開始の時期・経緯・目的

    （1）　開始時期
    　昭和57年度

    （2）　経緯・目的
    　日本貿易振興会（ジェトロ）では、アジア地域を中心とした開発途上国の輸出産業育成・対日輸出促進等を目的に開発途上国貿易促進協力事業を展開してきた。その後、時代の要請に対応し、開発途上国への投資促進や裾野産業育成等の産業基盤強化、環境面での技術協力など、事業の充実化を図ってきている。

  2. 事業の仕組み

    （1）　概要
    　輸出産業の育成、対日輸出の促進、人材育成への協力、裾野産業支援等の技術協力、途上国への投資促進等を目的に、専門家の派遣、研修員の受入、有力者・ビジネスマンの招へい、買付ミッションの派遣、展示会・商談会・産業交流会の開催等の事業を実施。

    （2）　審査・決定プロセス
    　現地の貿易振興機関、商工会議所等のカウンターパートからの要請を海外事務所等を通じて受け、要請案件の内容、実現性、効果及び地域的バランス等を十分に検討、選定し、通産省の承認を得たうえでジェトロ本部が、これを決定する。

    （3）　決定後の案件実施の仕組み
    　案件の決定後、ジェトロ本部および海外事務所とカウンターパートとの密接な連携のもと国内外で事業を実施する。

  3. 最近の活動内容

    （1）　概要

    (A)　輸出産業育成を支援する事業
    　専門家の派遣や研修員の受入れを通じた現地中小企業等の製品改良、市場開発、ノウハウの移転等の事業を実施。また、各国貿易振興機関のスタッフ研修、投資調査員・市場調査員の受け入れにより、日本市場の開拓方法や商品プロモーションのノウハウについて実地に調査研究などを実施。
    (B)　対日市場参入に協力する事業
    　産品発掘専門家の派遣とサンプル展示商談会の開催、産品輸入ミッションの現地活動支援、大規模インポートフェアの開催や国内で開催する見本市等への参加支援、産品展示会開催、ビジネスマンの受入れなどを実施。
    (C)　産業基盤強化を支援する事業
    　アジア諸国の産業基盤強化を目的とした広域産業交流会の開催、業界育成指導専門家の派遣、海外投資アドバイザーの派遣、裾野産業育成に対する協力、工業化促進に資する投資案件への支援協力、経済・技術協力のための海外見本市開催・参加支援、エネルギー・環境技術等を普及するための支援などを実施。

    （2）　地域別実績
    　平成10年度と同様に、平成11年度においてもアジア向け事業が最大で、これにアフリカ、中南米、東欧、中央アジア等が続いている。

    （億円）
    年度

    地域
    		平成10年度平成11年度
    金額金額
    アジア 14.9 11.0
    アフリカ 1.7 2.8
    中近東 0.9 0.3
    中南米 1.6 2.7
    大洋州 0.2 0.2
    東欧・中央アジア 1.1 1.6
    その他 8.6 8.6
    合計 29.0 27.2


    （3）　主要な事業

    （億円）
    年度

    地域
    		平成10年度平成11年度
    金額金額
    貿易・投資 25.823.0
    鉱工業生産 1.7 2.3
    エネルギー1.2 1.5
    行政 0.2 0.3
    農業 0.1 0.1
    合計 29.0 27.2

    (A)　開発途上国の対日輸出増大に寄与するため、10年度はイラン、バングラデシュ、南太平洋諸国を対象に3件の展示会を、11年度には、コロンビア、ペルー（東京、札幌）、アフリカ諸国を対象に4件の展示会を各々国内で開催した。また、わが国で開催される専門見本市への開発途上国の参加支援を10年度は中国、インド、エジプト等24か国を対象に、11年度は中国、インドネシア、マレーシア等44か国を対象に実施。開発途上国に対する経済協力の一環として、開発途上国への経済協力や産業技術向上に役立つ製品、技術を紹介するために、海外で10年度は3件、11年度に4件の展示会を実施。
    (B)　開発途上国から有力者を10年度はイランから1名、オマーンから1名、バングラデシュから1名、タイから1名、計4名を、11年度はペルーから1名、南アフリカから1名、エジプトから1名、エチオピアから1名、ケニアから1名、計6名招へい。
    (C)　開発途上国から対日輸出に携わる中堅ビジネスマン等を、10年度は85名、11年度は41名招へい。
    (D)　開発途上国への投資を促進するため、投資ミッションの派遣・派遣協力を行うとともに、各国より投資誘致ミッションを受け入れ、セミナー等を開催した。ミッション派遣に関しては10年度は1件実施、受入に関しては10年度は25件、11年度は19件実施したほか、投資ミッションの招へいを10年度に1件実施した。また、海外投資セミナーを10年度は42件、11年度は46件開催（後援含む）した。さらに、開発途上国のうち、我が国の投資重点国9か国10か所に常駐専門家を派遣し、投資・技術提携促進につながる各種支援事業を実施。
    (E)　開発途上国からの輸入を促進するため、10年度は専門家をウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、バングラデシュ、南太平洋諸国、ブラジル、ドミニカ共和国、ジャマイカ、チリ、べネズエラ、コスタリカ、エクアドル、ぺルー、リトアニア、ラトビア、エストニアヘ、11年度は専門家をラオス、カンボジア、べトナム、コスタリカ、パナマ、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、コートジボワール、ガーナ、南アフリカ、タンザニア、ケニア、エジプト、サウジアラビアへそれぞれ派遣。また、産品専門家が収集した対日輸出有望産品のサンプルの展示・商談会を東京及び地方都市で開催。
    (F)　開発途上国の輸出産業振興や投資誘致の基礎となる企業の経営基盤を強化するため専門家を派遣し、セミナー等を開催。10年度は、オマーン、べネズエラ、チェコ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、エジプト、ブラジル、パナマ、ジンバブエ、ケニア、メキシコ、トルコ、南アフリカヘ派遣。11年度は、ケニア、チェコ、タンザニア、トルコ、南アフリカ、イラン、中央アジア、ブラジル、エルサルバドル、エジプト、チュニジア、ナイジェリア、ラトビア、リトアニア、エストニア、グルジア、アゼルバイジャン、べトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ペルー、メキシコヘ派遣。開発途上国の投資誘致機関からの調査員の受け入れ、投資誘致媒体作成支援を実施。10年度はカザフスタン、レバノンより、また11年度はブラジル、マダガスカルより投資調査員を受入れた。
    (G)　開発途上国の現地産業界基盤の強化のための専門家派遣、及び現地講習会を開催。また、我が国と現地企業との投資・技術提携や部品供給・調達の促進のため関連企業情報を整備・提供するとともに、第3国企業も含めた提携促進事業を実施。さらに、域内産業の交流を促進し、インダストリアル・リンケージを深める場として、展示会、商談会、シンボジウム、セミナー等を国内外において開催。10年度は東京、インドネシア、シンガボールで開催。11年度は中国（上海）で開催。
    (H)　開発途上国の我が国市場理解を促進すべく、調査員を、10年度に8名、11年度に3名を受け入れた。また、開発途上国の貿易振興機関のスタッフ研修として、10年度に7名、11年度に9名を受け入れ研修を実施。さらにそのうち、10年度は7名、11年度は4名につきシンガポールで対日輸出促進の現状等に関しての研修を実施。また貿易振興機関の相互協力促進のためのフォーラムを開催、10年度は12名，11年度は11名を招へいした。さらに、貿易振興ノウハウ移転を目的として、10年度はトルコ、韓国、チリ、イラン、エジプト、ヨルダンに専門家を派遣、11年度は韓国、チェコ、ルーマニア、エジプト、ヨルダン、チリ、バングラデシュ、モーリシャスに専門家を派遣した。
    (I)　海外からの輸出促進ミッションにつき商談会のアレンジ、企業訪問アポイントメントの取り付け等の協力を10年度は88、11年度は95の使節団に対し実施。
    (J)　アジア諸国の貿易・産業の振興に総合的結果的に協力するためタイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、中国、インド、パキスタン、スリランカ、べトナム、ミャンマーを対象に以下の事業を実施。
    (ⅰ)　現地中小企業育成のため、中小企業経営者等を招へいし企業訪問、工場見学等を通じ育成に努めた。また各国の中小企業者にとって必要な適正技術の指導・普及を目的として我が国の諸制度、法令、技術基準等に関する情報・資料を英訳し関係機関に提供。
    (ⅱ)　各国の製品輸出開発に資するため、各国産品の我が国でのモニタリング調査及び商品専門家の派遣、対日輸入促進ミッションの受入協力等を実施した。
    (K)　我が国からの投資を通じた開発途上国の発展に協力するため、専門家による現地調査、コンサルティング等を実施。
    (L)　グリーン・エイド・プランの対象国であるタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、中国、インドを対象に、わが国のエネルギー環境技術の移転・普及協力のための調査・指導及び現地業界指導者等の受入れを実施。
    (M)　部品等据野産業の育成を支援するため、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、中国（10年度より）、インド（10年度より）において調査、指導等を実施するとともに、専門家等の受入れ等を実施。
    (N)　外貨獲得型産業の育成が急務とされる中南米諸国の輸出拡大支援のため、専門家派遣、研修員受入れ、見本市参加支援等からなるパッケージ支援事業を、ブラジル、アルゼンチン等を対象に実施。
    (O)　東欧等諸国の輸出拡大支援等のための専門家派遣、研修員受入れ、見本市参加支援等からなるパッケージ支援事業を、ハンガリー、ポーランド等を対象に実施。
    (P)　農水産品の貿易拡大を進めるため、　10年度は　ごま　を、　11年度は　熱帯果汁・ピューレー」を各々対象に、先進国、途上国双方から専門家を招へいしフォーラムを開催
    (Q)　APEC諸国等の中小企業指導機関担当者等を我が国に受け入れ、ワークショップを開催したほか、現地指導を実施。
    (R)　アジア経済高度化に向け、アジア各国等の有識者によるフォーラムを我が国において開催。
    (S)、アジア諸国の対日輸出拡大を支援することを目的に、日本から派遣される買い付けミッションの現地での活動を支援した。11年度は、フィリピン、インドネシア、韓国へのミッションを支援。
    (T)　アジアの経済構造改革を早急に進めるため、日中両国の産官学による専門家・研究員の派遣（27名）及び受入れ（52名）、現地・国内における共同研究（「中小企業政策」等6テーマ）を実施し、3月に日中双方で成果普及セミナーを開催した。(11年度）
    (U)　わが国の開発途上国に対する経済協力を推進するための基礎的情報収集及び調査を行った(10年度、11年度）。また中央アジアにおける日本企業のビジネスチャンスの拡大を支援するため、現地調査・情報収集を実施した。(11年度）

  4. より詳細な情報

日本貿易振興会のホームページ 　http://www.jetro.go.jp

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