研修員受入事業の概要と実績


  1. 事業の開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期:
     昭和29年に開始した。

    (2) 経緯及び目的:
     研修員受入事業は、1954年の我が国のコロンボプラン加盟を契機として、我が国最初の政府開発援助として発足し、アジアからの研修員16名(二国間ベース)の受入により開始された。開発途上国から、国造りの担い手となる研修員を我が国又は開発途上国に受け入れ、行政、農林水産、鉱工業、エネルギー、保健・医療、運輸、通信等多岐にわたる分野で専門的知識、技術の移転を行うことにより人材育成支援を行うことを目的とする事業である。
     なお、日本の技術協力の成果の再移転・普及を目的として、途上国内の研修員を招聘して当該途上国内で行う研修を「現地国内研修(第二国研修)」、周辺諸国の研修員を招聘して途上国で行う研修を「第三国研修」と称しており、それぞれ1993年、1975年度より開始されている。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     研修員受入事業は、我が国が開発途上国を対象に行っている、「人」を通じた技術協力の中でも最も基本的な形態の一つであり、日本国内で実施する本邦研修と、海外で行う現地国内研修(第二国研修)及び第三国研修とに区分される。本邦研修は、グループ毎に共通のカリキュラムで行われるもの(集団型研修)から、個々の研修要望に応じてそれぞれの研修カリキュラムを策定するもの(個別研修)まで、様々な実施形態がある。コース自体は、我が国の海外における技術協力を補完することを目的とするもの(カウンターパート研修)から、特定の国の人材育成ニーズに応えるためのもの(国別特設研修)まで、開発途上国のニーズに適した形態を選択することができ、カリキュラムもコース目的により視察型、知識習得型、技術習得型まで多様である。コース期間は、研修目的に応じた設定が可能であるが、通常は2週間から1年迄である。研修の実施は、JICAの国際研修センターを拠点として、関係省庁、地方自治体、民間企業、NGO等の協力・連携により行われる。
     また、研修の本来の成果とは別に、本邦に滞在することにより日本の産業文化等を紹介し、また、お互いの考え方や行動様式を理解し合うことによって、国民相互の友好親善にも貢献することも目的としている。

    (2) 審査・決定プロセス
     開発途上国からの要請を踏まえ我が国において検討し、当該国からの年間受入人数、受入形態、受入コース名などを決定の上、我が国在外公館より毎年途上国政府窓口機関に通報する。その後、研修コース毎に途上国政府機関から要請された候補者の資格要件等を我が国にて審査し、受入を決定する。
     現地国内研修及び第三国研修についても開発途上国からの要請を踏まえ我が方において検討・採択の上、我が国在外公館より採択案件を途上国政府窓口機関に通報する。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     受入決定後は在外公館またはJICA事務所を通じ途上国政府に受入を通報する。来日した研修員は予めJICAが設定した研修コース又は個々の要請内容に基づいてJICAが設定した研修カリキュラムのコースに参加する。
     現地国内研修及び第三国研修については、研修実施国がJICAの技術的・資金的協力を得て研修コースを策定し、参加者を募集・選考した上で実施する。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要
     平成11年度実績は次の通り。

    (イ) 本邦研修:145か国から7,793名の研修員を受け入れた。
     これらの研修を形態別に見れば、集団型研修(602コース5,618名)、個別型研修(2,175名)に分けることが出来る。
     集団型研修には、複数の国の研修員を対象とした集団・一般特設研修(449コース4,254名)、及び特定の国の研修員を対象とした国別特設研修(153コース1,364名)がある。
     個別研修には、カウンターパート研修(1,290名)、研修プログラムを個別に作成の上受け入れる個別一般研修(364名)、高等教育機関での学位取得を目的とした長期研修(31名)及びその他の研修(490名)がある。
    (ロ) 現地国内研修:
     15か国において、6,110名の研修員を受け入れ、これらの研修員を対象に117コースを実施した。
    (ハ) 第三国集団研修:
     30か国において、2,293名の研修員を受け入れ、これらの研修員を対象に128コースを実施した。
    (ニ) 第三国個別研修:
     25か国から、51名の研修員を受け入れた。

    (2) 地域別実績
     平成11年度の地域別実績は次の通り。また地域別実績の推移は表に示す通り。

    (イ) 技術研修員本邦研修:
     アジア3,777名(48.5%)、大洋州242名(3.1%)、中南米1,558名(20.0%)、中近東802名(10.3%)、アフリカ1,117名(14.3%)、欧州その他297名(3.8%)
    (ロ) 現地国内研修:
     アジア(107コース、5,645名)、中南米(7コース、218名)、アフリカ(3コース、247名)
    (ハ) 第三国集団研修:
     アジア(67コース、1,257名)、大洋州(1コース、8名)、中南米(24コース、392名)、中近東(21コース、365名)、アフリカ(13コース、223名)、欧州(2コース、48名)
    (ニ) 第三国個別研修:
     アジア(21名)、大洋州(1名)、中南米(4名)、中近東(6名)、アフリカ(18名)、欧州(1名)

    (地域別人数)
     本邦研修
    平成9年度平成10年度平成11年度
    アジア3,301 4,090 3,777
    大洋州239 268 242
    中南米1,389 1,452 1,558
    中近東787 817 802
    アフリカ1,060 1,143 1,117
    中央アジア153 215  
    欧州・その他334 362 297
    合計7,263 8,347 7,793

     現地国内研修第三国集団研修第三国個別研修
    平成9年度平成10年度平成11年度 平成9年度平成10年度平成11年度 平成9年度平成10年度平成11年度
    アジア 3117,3385,6451,0181,1001,2576621
    大洋州    363581 1
    中南米 63125218432410392484
    中近東    243257365326
    アフリカ 1131722478510422371018
    中央アジア          
    欧州・その他      48111
    合計 4877,6356,1101,8141,9062,2932227 51
    ※本邦研修は、技術研修員受入れ実績(除・日系研修員、青年招へい,開発協力研修員、移住研修員、有償研修員)
    ※平成11年度は、アジアの中に中央アジアを含む。
    ※数値は全て新規受け入れ人数

    (分野別人数)
     本邦研修
    平成9年度平成10年度平成11年度
    開発計画460 478 549
    行政1,440 1,770 1,652
    公共事業215 266 246
    運輸交通466 450 392
    社会基盤376 398 387
    通信・放送362 412 387
    農業657 736 698
    畜産165 147 146
    林業149 154 164
    水産177 164 182
    鉱業78 106 79
    工業585 584 496
    エネルギー211 232 203
    商業・貿易366 534 415
    観光59 66 62
    人的資源488 607 628
    科学・文化59 89 67
    保健・医療755 869 852
    社会福祉195 260 188
    その他0 25 0
    合計7,263 8,347 7,793

     現地国内研修第三国集団研修第三国個別研修
    平成9年度平成10年度平成11年度 平成9年度平成10年度平成11年度 平成9年度平成10年度平成11年度
    開発計画  193139331832   
    行政 502,919454238185286  14
    公益事業   679184032   
    運輸交通  66 18411614931 
    社会基盤 50  98109143 2 
    通信・放送  21156167136171  31
    農業 117128396212204198569
    畜産   74506698  2
    林業   135133912736 
    水産  55361101341034110
    鉱業    343332   
    工業  104100172203126434
    エネルギー   74715140  1
    商業・貿易  473446191212111
    観光    121112   
    人的資源 5101,450113113151 1 
    科学・文化         1
    保険・医療 2331,3162,014194207291138
    社会福祉 371,780274188238   
    その他  7085166852   
    合計487 7,635 6,110 1,814 1,906 2,293 22 2751
    ※本邦研修は、技術研修員受入れ実績(除・日系研修員、青年招へい,開発協力研修員、移住研修員、有償研修員)
    ※数値は全て新規受け入れ人数
    ※第三国研修実績は、研修実施国における参加人数を記載。


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