99年度のODA実績状況に関する年次報告の発表
外務省は、「我が国の政府開発援助の実施状況1999年度に関する年次報告」をまとめました。この年次報告は、「政府開発援助大綱」に定める「情報公開推進」の一環として、政府全体のODAへの取組み・実績を統計・資料を中心に包括的に紹介するものであり、92年度分より作成し、今回が8回目となります。
「我が国の政府開発援助の実施状況
1999年度に関する年次報告」ポイント平成12年10月20日
年次報告の位置付け(92年度分より作成、今回で8回目)
- 「政府開発援助大綱」に定める「情報公開促進」の一環 として93年よ り公表開始(「大綱」では「政府開発援助の実施状況をとりまとめ、国会を始め広く国民に明らかにする」旨規定。)。
- 我が国 政府全体のODAへの取組み・実績を統計・資料を中心に包括的に紹介 するもの。
- 10月20日の閣議への報告後、公表。
今回の年次報告で記載する主要な項目
- 昨年8月に策定・公表した 「我が国の政府開発援助に関する中期政策」(ODA中期政策)の実施状況をとりまとめ。
- 我が国支援による具体的成果 を可能な限り定量的に記述。
(例)
- 99年度、校舎建設等に対する協力により、 13ヶ国約120万人の小・中学生が教育の機会を享受。
- 99年度、 19ヶ国2,084万人が居住する地域に対し、安全な水を供給。
- 95~97年に無償資金協力により上水道施設の整備が行われた ニカラグアのマナグア市中・南部では、上水道普及率がほぼ100% に達していたことから、98年の ハリケーン・ミッチ後も、飲料水汚染が発生せず、疫病の蔓延防止に貢献。
- 93~99年に 我が国の行ったポリオ・ワクチン供与 により、 西太平洋地域の子供延べ約2億5,200万人をポリオから救済。
- 99年度、 我が国の国際緊急援助隊医療チームが診察・処置を行った患者は総計6,655名。
- 各省庁の実施するODA事業実績 (二国間事業、国際機関への拠出・出資)を詳 細に記述し、政府全体のODAに関する記述を充実。
- 外務省をはじめ各省庁実施のODA事業の目的・仕組み・最近の活動内容 及び主要な具体的事業
- 国連機関・国際金融機関等の概要と最近の活動内容 を紹介するとともに、 我が国との関係(我が国の財政負担、意思決定機構における我が国の位置 付け、邦人職員、我が国拠出による特定信託基金等の活用状況)を記述。
- 各事業・機関の報告書、ホームページについて紹介。
- 各事業の調達状況、DAC諸国の援助に関する統計情報を掲載。
年次報告のポイント I.はじめに(ODAの意義と主な動き)
- 国際社会における開発課題とODAによる取組
(アジア通貨・経済危機。アフリカにおける貧困、紛争、HIV/AIDS。環境問題、薬物等の地球規模問題。これら諸課題への対応に果たすODAの役割。)- 国民の理解と支持の重要性
(総理府実施の世論調査では多数の国民がODA水準の維持を支持。但し、厳しい経済・財政事情を背景に批判的な声も存在。)
→援助の透明性・効率性向上、国民参加の推進の必要性
→ODA中期政策の策定・公表・実施(「国別援助計画」の策定。評価制度の充実。「円借款制度に関する懇談会」。国際協力銀行発足等の行革推進。)
→国民参加の推進(人と人との交流を通じた相互理解の促進。トルコ、台湾震災支援等の際のNGOの活躍。青年海外協力隊、シニア海外ボランティアの活躍。「ODA民間モニター制度」の導入。)- 援助のあり方を巡る国際的な新たな流れと我が国の取組
- 重債務貧困国(HIPCs)への債務救済の前提となる「貧困削減戦略ペーパー」(PRSP)策定
- ドナー間の援助協調の推進(世銀の「包括的開発のフレームワーク(CDF)」、セクター・プログラム・アプローチ等の試み)
II.99年の我が国ODA実績
対前年比44.0%増の153.2億ドル
- 為替レートの大幅な円高
- アジア通貨・経済危機への重点的対応(「アジア通貨危機支援資金」に対し、アジア開発銀行を通じて約33億ドルを拠出。但し、保証のための拠出国債を除けば、総額は121.6億ドルで対前年比14.3%増)
- 対GNP比は0.35%に上昇(前年0.28%)。OECD/DACメンバー22ヶ国中第7位。
III.ODA中期政策の実施状況
1.重点課題
(1)貧困対策や社会開発分野への支援(「人間中心の開発」重視)
- (イ)基礎教育(本年4月「世界教育フォーラム」等国際的関心の高まりと我が国の取組)
(ロ)保健医療(子供の健康(2000年中に西太平洋地域におけるポリオ根絶宣言発出の見込み)、「人間の安全保障(「セミパラチンスク支援東京会合」)」、感染症対策(本年7月、「沖縄感染症対策イニシアティヴ」の発表)等への取組)
(ハ)途上国の女性支援(WID)/ジェンダー(我が国の「WIDイニシアティヴ」に基づく女性の職業訓練・零細企業家支援等の取組)(2)経済・社会インフラへの支援(経済成長は貧困削減に不可欠)
- 途上国の持続的成長の基盤となる運輸、通信、電力、河川・灌漑施設等や都市・農村の生活環境などの経済・社会インフラ整備への支援への継続的取組
(3)人材育成・知的支援(人造りは国造りの基本)
- (イ)人材育成(留学生支援への継続的取組と「留学生支援無償」の新設、「東アジアの人材の育成と交流の強化のためのプラン」(小渕プラン)の実施等)
(ロ)知的支援(重要政策中枢支援プログラム、越の市場経済化支援計画策定調査(石川プロジェクト)等への継続的取組等)
(ハ)民主化支援(「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD)」に基づく民主化支援(インドネシア総選挙への人的貢献等))(4)地球規模問題への取組(途上国との連携推進)
- (イ)環境保全(「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」や「京都イニシアティヴ(温暖化対策途上国支援)に基づく支援推進、対中国環境協力)
(ロ)人口・エイズ(「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティヴ(GII)」に基づく日米合同でのザンビアにおけるHIV関連啓蒙活動への協力実施(日米コモンアジェンダの一環)等)
(ハ)食料(食糧増産援助、専門家派遣等を通じた取組)
(ニ)エネルギー(2000年度から「クリーン・エネルギー無償」の新設等)
(ホ)薬物(「2000年薬物対策東京会合」開催を始めとする我が国の取組)(5)アジア通貨・経済危機への対応等経済構造改革支援(アジア諸国の危機からの回復と我が国の役割)
- 「小渕プラン」を通じた「ヒト」重視の協力への取組
(6)紛争・災害と開発(「人間の安全保障」から見た開発課題)
- (イ)紛争と開発(コソヴォ紛争、東チモール支援への取組、対人地雷除去・犠牲者支援、開発協力における紛争予防の視点の強化(本年7月、「アクション・フロム・ジャパン」を発表))
(ロ)防災・災害復興(トルコ、台湾震災支援とNGOの活躍)(7)債務問題への取組(九州・沖縄サミット議長国としての取組)
- ケルン・サミットで合意された拡大HIPCイニシアティヴの迅速な実施(本年4月、我が国の追加的措置発表)
(8)その他
- IT(情報通信技術)革命とデジタルディヴァイドへの対応(本年7月、ODAの活用を含む「国際的な情報格差問題に対する我が国の包括的協力策」の発表)
2.地域別の援助のあり方
東アジア地域を始め、99年の各地域向け援助の実績を記述。
3.援助手法
(1)ODAの政府全体を通じた調整及び各種協力形態・機関間の連携(本年3月「政府開発援助関係省庁連絡協議会」の開催等)
(2)ODA以外の政府資金(OOF)及び民間部門との連携(国際協力銀行の設立、民活インフラワークショップ開催等)
(3)NGO等への支援及び連携(相談員、調査員制度の導入等NGO活動基盤整備支援、2000年度からのNGO緊急活動支援無償の新設等)
(4)他の援助国及び国際機関との協調(日米合同プロジェクト形成調査団派遣(日米コモンアジェンダの下での保健医療分野での協力)、UNICEFとの定期協議を通じた連携強化等)
(5)南南協力への支援(TICADIIのフォローアップとしてのアジア・アフリカ諸国間の南南協力の推進等)
4.実施・運用上の留意点
(1)途上国毎の状況把握と国別援助計画の策定(バングラデシュ、タイ等9ヶ国につき国別援助計画を策定・公表)
(2)事前調査、環境配慮、実施段階でのモニタリング及び事後評価(「評価研究作業委員会」による具体的改革案を踏まえた評価制度充実への取組等)
(3)開発人材の育成(JICA実施の調査研究の若手研究者への委託等)
(4)国民の理解と参加の促進(シニア海外ボランティアの拡充、日章旗ステッカーの導入等)
(5)情報公開の推進(ODA民間モニター制度の導入、ODA案件の入札関連情報開示の拡充、対越円借款の「ロングリスト」の公表等)
IV.ODA大綱原則の運用
中国、インド、パキスタン、ミャンマー等につき記述
V.国別援助方針及び国別援助計画(国別援助方針15ヶ国、国別援助計画9ヶ国)
VI.平成12年度予算のポイント
VII.資料編のポイント
- 主要なODA事業実績の資料、調達関連情報(技術協力を含む)を充実
1997年度、1998年度、1999年度の年次報告はホームページ上でご覧頂けます。
【内容に関する問い合わせ先】
外務省経済協力局調査計画課
電話:03-3580-3311(大代表)内線2897