文化無償の概要と実績


  1. 事業の開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     昭和50年度予算より、昭和51年の閣議決定に基づき開始された。

    (2) 経緯及び目的
     開発途上国において、社会の経済的発展とともに、その国固有の文化の維持・振興に対する関心が高まり、文化面を含む広い視野からバランスのとれた国家開発をおこなう努力がなされている。こうした努力に対し、我が国としてもその国と協力しながら、伝統文化や文化遺産の保存、芸術・教育活動等への支援を行っている。このような国際文化協力において、文化無償協力は重要な柱の一つとなっている。
     文化無償協力は、文化財・文化遺産の保存活用、文化に係る公演及び展示事業等の開催、教育・研究振興等に使用される資機材の購入のための資金を贈与することにより、開発途上国の文化、教育の発展を支援するとともに、我が国とこれら諸国との文化交流を促進し、友好関係及び相互理解を増進させることを目的として開始された。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     供与限度額は、1件につき5千万円であり、被供与国の文化・教育の振興のために使用される「資機材」並びにそれらの輸送及び据え付けのために必要とされる「役務」を購入するための資金を供与する。施設等の建設・修復や、セミナーやプロジェクトの運営費、人件費等の経費は対象としていない。
     対象国は、世銀融資ガイドラインに基づき、グループ4までの国(平成11年度の場合、1997年の一人当たりGNPが5,445米ドル以下の国)としている。
     対象機関は、相手国政府機関ないし公共の機関あるいは団体としている。国際機関や民間の機関、個人は対象としていない。

    (2) 審査・決定プロセス
     相手国政府のとりまとめ省庁より我が国大使館に要請が行われ、大使館は優良案件につき本省に送付する。本省ではこれらの中から日本国際協力システム(JICS)による事前調査の対象とする案件を決定し、JICSによる調査(現地調査と国内調査がある)の結果を基に実施につき検討する。実施決定となった場合、相手国政府との間で交換公文を締結する。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     交換公文締結後、一般競争入札を行い、機材調達業者を選定する。調達業者は相手被供与機関との間で機材調達契約を締結し、外務省の認証後、業者が機材を調達する。機材の現地到着後、引き渡しを行う。

  3. 最近の活動内容

    (1) 活動の概要
     平成10年度までに119ヶ国に対して、合計965件、総額396億2450万円の文化無償協力を実施してきている。平成3年度に東欧各国を対象に加えてから、その後中央アジア諸国、バルト諸国、ウクライナ、南アフリカなどを新たな対象国としている。

    (2) 国別
     平成9年度はアジア諸国及び中南米諸国にそれぞれ29.1%、東欧諸国に12.7%、中近東諸国に10.9%、アフリカ諸国に9.1%、大洋州諸国に5.5%、バルト諸国に3.2%を実施した(総額25億円)。
     平成10年度では、中南米諸国に29.8%、アジア諸国(NISの中央アジア諸国を除く)に17.5%、中近東諸国と東欧諸国にそれぞれ12.3%、アフリカ諸国とNIS諸国にそれぞれ10.5%、大洋州諸国に5.3%、バルト諸国に1.8%を実施した(総額23億円)。
     平成10年度はウクライナ、ラトヴィア、モーリタニア、アルメニア、アゼルバイジャンに、それぞれ初めて文化無償協力を実施した。

    (3) 主要な具体的事業・案件名及び内容
     平成10年度に実施した案件としては、中国の河南博物院に対する文化財分析機材(5,000万円)、タイのシラパコーン大学に対する音響・照明機材(4,670万円)、グァテマラのアンティグア国家文化財保護理事会に対する視聴覚機材(4,690万円)、パレスチナの青年スポーツ庁に対するスポーツ器材(4,170万円)、モーリシャスの柔道連盟に対する柔道器材(4,880万円)、チェッコのカレル大学に対するLL機材(4,870万円)などがある。


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