国際復興開発銀行(IBRD:International Bankfor Reconstructionand Development)及び国際開発協会(IDA:International Development Association)の概要と実績
- 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
IBRDは、1946年6月に設立。我が国は1952年に加盟。
IDAは、1960年9月に設立され、我が国は設立当初から加盟していた。(2) 経緯及び目的
IBRDは、第2次大戦後、ブレトン・ウッズ協定の下で、国際通貨基金(IMF)とともに設立された。IBRDの当初の目的は、戦争破壊からの復興と開発途上国における生産設備及び生産資源の開発であるが、最近は、開発途上国の貧困緩和と持続的成長のための支援を業務の目的としている。1998年6月現在181ヶ国が加盟している。
IDAは、IBRDが準商業ベースで貸付を行っているのに対して、そうした条件で借入が困難な貧困途上国に対して、より緩和された条件で融資を行うことを目的としている。1998年6月現在160ヶ国が加盟している。
- 事業の仕組み
(1) 概要
IBRD及びIDAは、開発途上国における貧困緩和に向けた努力を支援することを目的として、これらの国々における持続的成長、人々の生活水準の向上に資するプロジェクトや構造調整プログラムの実施に対して、主に長期の貸付・融資により支援を行っている。
IBRDの事業資金は、市場からの資金調達により賄われており、1998世銀年度(97年7月~98年6月)の中長期の資金調達額は約268億ドルとなっている。IDAの融資のための事業資金は、先進加盟国からの出資金、IBRDの純益の移転等により賄われており、概ね3年に1度、出資国による増資交渉が行われる。(2) 審査・決定プロセス
IBRD・IDAは、各国のマクロ経済調査、セクター調査等の各種調査を行い、国別支援戦略を策定し、支援の重点分野を決定する。その後、支援戦略との整合性、貧困緩和・経済発展への貢献度、周辺環境への影響等を勘案し、借入国政府や他の援助機関との対話を行いつつ具体的な支援プロジェクト・プログラムを決定している。(3) 決定後の案件実施の仕組み
案件の実施は、借入国自身が行っており、IBRD・IDAはこれら事業が円滑に実施されるようモニタリングを行っている。
- 最近の活動内容
(1) 概要
1997世銀年度(96.7~97.6)の貸付・融資承認総額は、IBRDが約145億ドル、IDAが約46億ドルである。1998世銀年度(97.7~98.6)の貸付・融資承認総額は、IBRDが約211億ドル、IDAが約75億ドルとなっている。1998年度のIBRDの貸付承認実績は、アジア通貨危機への積極的な対応等により過去最高を記録した。(2) 地域別実績
IBRD・IDAの地域別貸付・融資承認実績は以下のとおり。
IBRD
(単位:百万ドル)
1997世銀年度 1998世銀年度 件数 金額 件数 金額 アフリカ 2 56 2 57 東アジア・大洋州 27 4,074 34 8,847 南アジア 4 627 6 1,318 欧州・中央アジア 47 4,561 35 4,462 中東・北アフリカ 13 770 14 722 ラ米・カリブ地域 48 4,438 60 5,680 計 141 14,525 151 21,086
IDA
(単位:百万ドル)
1997世銀年度 1998世銀年度 件数 金額 件数 金額 アフリカ 47 1,681 57 2,816 東アジア・大洋州 10 792 11 776 南アジア 15 1,385 19 2,546 欧州・中央アジア 20 494 34 762 中東・北アフリカ 4 145 6 247 ラ米・カリブ地域 4 125 8 360 計 100 4,622 135 7,508 (3) 主要な具体的事業・案件及び内容
IBRD・IDAの事業の分野別の内訳は、以下のとおりとなっている。
IBRD
(単位:百万ドル)
1997世銀年度 1998世銀年度 農業 2,811 1,481 教育 762 1,928 電力、その他エネルギー 1,613 1,115 環境 23 754 金融 994 6,103 鉱工業 445 1,370 多部門 1,373 1,188 石油・ガス 114 130 保健医療・人口・栄養 246 912 公共セクター 730 1,639 社会セクター 1,304 934 通信 0 68 運輸 3,225 2,135 都市開発 506 894 給水・衛生 380 439 計 14,525 21,086
IDA
(単位:百万ドル)
1997世銀年度 1998世銀年度 農業 736 1,237 教育 255 1,202 電力、その他エネルギー 276 889 環境 224 148 金融 201 142 鉱工業 72 80 多部門 813 669 石油・ガス 22 10 保健医療・人口・栄養 694 1,079 公共セクター 191 352 社会セクター 67 382 通信 0 2 運輸 607 978 都市開発 162 224 給水・衛生 302 114 計 4,622 7,508
- 我が国との関係
(1) 意思決定機構における我が国の位置づけ
最高意思決定機関は、各加盟国の総務により構成される総務会であり、我が国は大蔵大臣が総務に任命されている。また、貸付・融資の承認等の日常業務の意思決定は24名の理事(任命理事5人、選任理事19人)からなる理事会で行われており、我が国からは任命理事として単独で理事が選出されている。(2) 邦人職員(職員全体にしめる割合及び幹部職員)
専門職員3,658名のうち日本人90名(98年6月末現在)。西水美恵子副総裁(南アジア担当)等が活躍している。(3) 財政負担(各国比較等)
IBRD資本金(授権資本ベース)約1,908億ドルのうち、我が国の出資額は約153億ドル(シェア約8.0%)であり加盟国中第二位。また、IDAの資本金(第12次増資後)約1,113億ドルのうち我が国の出資額は約200億ドル(シェア約18.0%)であり、加盟国中第二位である。(4) 主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
開発政策・人材育成基金(Policy and Human Resources Development Fund:PHRDFund,1990年創設)
平成9年度拠出 約197億円
平成10年度拠出 約177億円
使途:なお、98年度において開発政策・人材育成基金による支援案件は244件(実績)であり、主なものを列記すれば以下のとおりである。
(1) プロジェクトの案件発掘や事業化のための事前調査などのプロジェクト案件形成に対する支援 (2) 開発途上国政府の制度の企画・立案等に対する政策助言の支援 (3) 開発途上国政府職員等を対象とした研修プログラムの実施等人材育成活動の支援、我が国の人的貢献を支援等
国名 案件名 承認額
(千ドル)セクター フィリピン 第2幹線道路管理 990 運輸 キルギス 都市輸送計画 654 運輸 エジプト 港湾インフラ開発 299 運輸 グルジア 農業開発 915 農業 イエメン 参加型灌漑管理 285 農業 スリランカ 水供給・下水処理 862 環境 中国 重慶都市環境 731 環境 ソロモン諸島 コミュニティ森林保護 225 環境 マダガスカル 金融近代化 530 金融 バングラデシュ 商業銀行リストラ 505 金融 ガーナ 教育セクター開発プログラム 600 教育 パプア・ニューギニア 公的セクター改革 508 公的部門 スロベニア 国家資産管理・民営化 300 公的部門 アルバニア 民間セクター開発千ドル 418 民間部門 (5) 我が国の二国間援助との協調実績
我が国はIBRD・IDAにとって最大の二国間の協調融資相手国。1997世銀年度、1998世銀年度中の我が国機関との協調融資実績は、それぞれ約6億ドルと約21億ドル。IBRD、IDAが支援するプロジェクトやプログラムにおいて、我が国の援助機関であるOECFと協調融資を行った例としては、以下のようなものがある。
ヨルダン:第二次教育セクター借款
モンゴル:バガヌール・シベオボ炭鉱開発事業(2)
また、協調融資を実施する日本輸出入銀行(注)及びOECF、JICAとの間では、それぞれ定期的に協議会を開催し、IBRD・IDAと我が国の開発案件の協調・調整を図っている。
(注) 日本輸出入銀行による支援はODA(政府開発援助)ではなくOOF(その他の公的支援)
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