国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)の概要と実績
- 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的
ウラン、プルトニウム等の核物質は、原子力発電のような平和目的のためにも、また、核兵器製造等の軍事利用のためにも使用され得る。このため、原子力平和利用の開発は常に核兵器の拡散を如何に防止するかという問題を伴う。第2次世界大戦終結後、世界が原子力平和利用から得られる経済的利益に注目し始めたこと等を背景に、この核拡散問題に対処する国際協力体制の必要性が高まり、1957年、国際原子力機関(IAEA)が米国のイニシァティブの下に国連総会決議を経て創設された。我が国は、同年のIAEA設立と同時に予算計上を行った。
IAEAの主な目的は、(技術協力を通じた)原子力平和利用の促進、原子力活動が軍事転用されていないことを検認するための保障措置の実施及び原子力安全の確保であることがIAEA憲章に定められている。
- 事業の仕組み
(1) 概要
IAEAは、原子力安全、原子物理学、原子化学、原子力工学及び原子力技術等の学術分野や、核物質の探鉱、採掘、処理、並びに農業、医療、工業等の産業分野で幅広く使われている放射線及びアイソトープ利用の各分野で、専門家派遣、器材供与及び研修員の受け入れ等の分野の技術協力事業を実施している。その活動資金は、各国に割り当てられた「技術協力基金」に対する拠出により賄われている。97年の拠出金総額は68百万ドルである。(2) 審査決定プロセス
開発途上国の要請に基づき、事務局が事業計画を作成した基金の3年間の目標総額を理事会の承認を得て総会に提出し、決定する。(3) 決定後の案件実施の仕組み
決定された事業計画に基づき、当該事業を要請した国または地域に対し、IAEAが専門機関として自らその知見を活用して事業実施に係わる調整を行う。事業の実施に際しては、当該裨益国の自助努力に加え、先進国或いはIAEAの専門家の参加を得ることもある。
- 最近の活動内容
(1) 活動の概要
1995年のIAEA総会において、分担金による通常予算の保障措置予算に係わる分担方式と本基金の目標総額をパッケージで解決することが合意され、この結果、保障措置予算に対する途上国の分担割合を増加する一方、技術協力基金を1996年~98年の3年間につき、96年度は300万ドル増、97年度及び98年度はそれぞれ350万ドル増とすることとなった。(2) 活動実績
技術協力基金による活動の、地域別及び事業別実績を図-1に示す。
- 我が国との関係
(1) 意志決定に係わる我が国の位置づけ
原子力の平和利用の推進及び核不拡散の重要性を認識する我が国は、IAEA憲章の原加盟国であるとともに、発足当初からIAEAの意志決定機関である理事会の指定理事国として、IAEAの政策決定・運営に一貫して参画し、その活動に積極的に協力してきた。また、我が国は世界有数の原子力推進国として、開発途上国のための原子力平和利用のためのIAEA技術協力プログラムへの人的・財政的協力を積極的に実施している。(2) 邦人職員
事務局には、98年1月現在、町末男事務次長(研究・アイソトープ担当)を筆頭に小溝泰義IAEA事務局長特別補佐官を含む44名の邦人職員が在籍している。(全体の5.5%)(3) 財政負担
財政面では、技協基金に対し97年度1,047万米ドル(全体の15.4%)、98年度1,117万米ドル(全体の15.6%)を拠出している。(米国に次ぎ第2位)(4) 主な使途を指定した特別拠出
我が国(78年より加盟国)を含む17ヶ国が加盟国であるRCA(IAEA・アジア原子力地域協力協定)の活動を通じて、我が国はアジア地域の国に対して放射線を利用した環境保全、医学生物学分野での技術協力プロジェクトを行っている。また、95年から97年までポーランドにおいて、排煙公害是正のために我が国の原子力排煙脱硫技術を利用した環境保全プロジェクトが実施された。原子力安全の分野においても、旧ソ連・東欧型炉の安全性確保のためのIAEA支援計画、原子力の安全に関する条約の実施に係る協議等に積極的に参加している。また、放射性廃棄物の処理・処分の安全基準の検討作業等にも多くの専門家を派遣している。
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