国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA:United Nations Reliefand Works Agencyfor Palestine Refugees in the Near East)の概要と実績
- 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的
(1) 1949年12月の国連総会決議に基づき成立し、1950年より活動開始。1950年の総会においてマンデートが更新され、現在のマンデートは2002年6月まで。我が国は、UNRWAに対し1953年より支援を行っている。
(2) 1948年5月英国によるパレスチナ委任統治終了と同時にイスラエルが独立を宣言。これにエジプト等アラブ諸国が反発し、第一次中東戦争が勃発した。右戦争の結果、イスラエルに占領された地域のパレスチナ人約75万人が難民となり、ジョルダン、シリア、レバノン、ジョルダン川西岸及びガザ地区に流出した。当初、パレスチナ難民の救済は、1948年に設立された国連パレスチナ難民救済機関(UNRPR:United Nations Relief for Palestine Refugees)の調整により、民間のボランタリー組織の手によって行われていた。しかし、問題の長期化につれて、救済事業を自らの手で実施する国連機関の設立を望む声が高まりUNRWAの成立となった。
- 事業の仕組み
(1) 概要
UNRWAの事業は、大きく分けて通常計画と特別計画に分けられ、通常計画としては下記3.(1)、(2)、及び(3)のプログラムを運営しており、援助国のイヤマーク拠出を受けて特別計画を実施している。(2) 事業の審査・報告プロセス
上記UNRWA事業は、パレスチナ難民の職員(教員、医師、フィールド・ワーカー等)約2万人により運営されており、右事業の内容は、我が国もメンバーであるUNRWA財政委員会及び諮問委員会によって、適正に運営されているか審査され、実施された事業については、毎年国連事務総長に対して報告される。
- 最近の活動内容(1997年12月末現在)
ジョルダン、シリア、レバノン、ジョルダン川西岸及びガザ地区に住むパレスチ難民約347万人に対し、通常計画として教育、医療・保健、救済・福祉を下記(1)、(2)、及び(3)の通り直接実施している。
(1) 教育・職業訓練
パレスチナ難民の子弟は、周辺難民受入国だけでなくジョルダン川西岸及びガザにおいても一般の教育システムの中で教育を受ける機会がない。そのため、義務教育としての適切な教育及び職業訓練をパレスチナ難民の子弟に実施することはUNRWAにとって重要な課題となっており、右教育を生徒約447千人に対して行うために、学校649校を運営するとともに、同じく職業訓練所8カ所において約5千人の訓練を行っている。(2) 医療・保健
パレスチナ難民は、UNRWAが運営する122カ所の保健センターにおいて、医療サービス、歯科治療、母子保健サービス、家族計画等のサービスを受けることが可能であり、延べ約7百万人が治療等を受けている。(3) 救済・福祉
老人、寡婦、身体障害者等で生活困窮状態にあるパレスチナ難民約19万人に対して食糧配布、住居(シェルター)等の提供を実施している。(4) 特別計画
上記通常拠出の他、93年より中東和平プロセスを支援するための事業として平和創設プロジェクト(PeaceImplementationProject:PIP)を実施し、学校、病院等インフラ整備、雇用創出プロジェクト等を実施しており、我が国も「顔が見える支援」として、PIPにより小学校建設、職業訓練所整備、下水道網整備、廃棄物投棄場整備等のプロジェクトに対して拠出金をイヤマークしている。
- 我が国との関係
(1) 意思決定機構に於ける我が国の位置付け
UNRWAの管理・運営をつかさどる委員会としては、国連総会の決議により設置された予算審議を監督する諮問委員会(英、米、仏、ジョルダン、日本等10カ国)、また1970年に設置され、財政問題を検討し国連総会に勧告する財政作業部会(英、米、レバノン、日本等)があり、我が国は右諮問委員会及び財政作業部会のメンバーとなっており、UNRWAの運営に対して強い影響力を有している。(2) 邦人職員
国際職員127名の内邦人職員3名がガザ本部において活躍している。(3) 我が国の支援
我が国は、1953年より拠出を行い、累積拠出実績(拠出金、食糧援助、及び緊急援助)は1998年末現在で3億9,649万ドル。また、1998年度の我が国援助は、現金拠出として1,024万ドル、緊急無償200万ドルを拠出。
更に、1998年にはJICAによるUNRWAに対する技術協力として、地域医療等の研修員の受入れ10名、また、JICA専門家をヨルダンのワディ・シール職業訓練センターに電子機器1名及び自動車整備1名派遣している。
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