国連食糧農業機関の概要と実績(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     1945年10月16日設立。我が国は1951年の第6回総会において加盟が承認された。

    (2) 経緯及び目的
     FAOは、1943年に開催された連合国食糧農業会議で、食糧・農業に関する恒久的機関として設置が決定され、45年、FAO憲章署名のため及びFAO第1回総会開催のための連合国代表会議で、連合国34カ国の署名によりFAO憲章が発効した。
     人類の栄養及び生活水準を向上し、食糧及び農産物の生産、流通及び農村住民の生活条件を改善し、もって拡大する世界経済に寄与し、人類を飢餓から解放することを目的として活動しており、99年1月現在で175カ国及びECが加盟している(なお、ここで言う「農業」は林業、水産業を含む。以下特別に断りがない場合は同様。)。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     FAOの活動の財源は、加盟国の分担金により賄われる通常予算とUNDP資金及び各国等の信託基金による外部資金からなる。このうち、通常予算は主として職員の給与、会議の開催、食糧・農業に関する調査分析、情報の収集・伝達、各国政府に対する助言、フィールド事業の管理・支援等に振り向けられ、外部資金は、通常フィールドレベルの技術協力に利用されている(フィールド事業の一部は通常予算によっても実施される(2.(3)参照))。

    (2) 審査・決定プロセス
     FAOは各加盟国の代表により構成され、2年に1度開催される総会を最高意志決定機関としており、総会で選出された49の理事国で構成される理事会が、総会会期以外の期間において、その執行機関として総会に代わって行動するほか、総会に付託する必要のない事項についての決定などを行う仕組みとなっている。
     総会では、向こう2年間の通常予算が決定され、外部資金で行われるフィールド事業については、FAO事務局がドナーに対し個別の案件を提案し、ドナー側の判断により資金の拠出が決定される。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     通常予算については、定められた項目別に事務局が事業を実施する。事業の実施状況については、理事会、総会に報告がなされる。
     一方、外部資金については、FAO事務局が作成した事業計画案についてドナーとFAO事務局間で文書を取り交わし、ドナーからの拠出金が利用される。なお、事業計画が複数年にわたる場合は、全体計画と1年毎の計画が示され、ドナーからの拠出は1年毎の計画の承認に合わせ行われる。事業開始後は、事業の進行状況について、通常半年毎に文書で報告されるとともに、定期的にFAO事務局との話し合いの場がもたれる。また、事業終了時には評価ミッションが送られ、事業の成果につき確認と報告がなされる。

  3. 最近の活動内容

    (1) 活動の概要
     FAOの機能を大きく分けると、(1)食糧・農業に関する国際的な検討の場の提供、(2)世界の農林水産物に関する情報の収集・分析及び提供、(3)開発途上国に対する政策的支援、技術協力の実施、であり食糧・農業に関する広範な活動を展開している。

    (2) 地域別実績
     FAOでは、上記の通り開発途上国に対し直接技術協力等を行っており、その大部分は外部資金により行われているが、通常予算の中でも、開発途上国の要請に迅速かつ柔軟な対応を図るため、技術協力計画(TCP)として、比較的短期、小規模のフィールド事業を行っている。TCPは98-99通常予算では約90百万ドルの予算となっている。

    TCPの地域別事業実績
     92―9394―9596―97
    全体事業件数 605 496 422
    全体額(百万ドル) 89.3 92.6 93.3





    アフリカ 39.4 41.9 39.6
    アジア太平洋 22.2 24.3 21.1
    欧州5.3 5.9 10.3
    ラテンアメリカ・カリブ 19.0 18.3 18.5
    近東及び北アフリカ 13.8 9.6 10.5
    地域横断0.3  

    (3) 主要な具体的事業・案件名及び内容
     98-99年のFAO通常予算の分野別内訳は、一般的なFAOの管理事務を行う行政管理費等が23%、農林水産業に関する情報収集や取り決め等を行うための費用である技術経済計画が45%、国別事務所の運営等途上国支援のための費用である開発支援計画が18%、TCPが14%となっている。このうち、技術経済計画の中では、農業分野が60%、水産分野が13%、林業分野が10%、その他農村、女性問題等に17%の予算が振り分けられている。
     技術経済計画のうち、農業分野の最近の主な事業としては、植物検疫措置の国際基準の制定や植物遺伝資源に関する国際的申し合わせの改訂作業などがあげられる。また、林業分野においては、2000年の世界の森林資源評価のための作業をはじめとした地球サミットのフォローアップのための取組等が、水産分野においては、水産資源の乱獲に歯止めを掛ける「責任ある漁業のための行動規範」の作成等があげられる。
     開発支援計画においては、ウルグアイラウンド後の農業体制整備のための開発途上国の人材育成支援等をおこなっている。
     また、TCPにおいては、ブルキナファソでの女性が作業するトマト加工センターの設立や、世銀やUNDPとも協力して中国での農業技術普及センターの試験的な実施を行うなどしている。
     FAO全体としての最近の最も大きな活動としては、1996年11月にローマで186カ国から首脳レベルの出席を得て開催された「世界食糧サミット」がある。右サミットでは2015年までに栄養不足人口を半減させるなどの具体的目標を定めた「ローマ宣言」及び「行動計画」が採択され、現在はそのフォローアップがFAOの活動の中心となっており、「全ての人に食糧を」運動(Food for All Campaign)等が実施されている。

    (百万ドル)
    分野92―9394―9596―9798―99
    行政管理費等 167 164 150 150
    技術経済計画 327 312 299 293
    農業分野
    水産分野
    林業分野
    その他
    253
    44
    31
    193
    42
    31
    47
    178
    40
    30
    50
    175
    39
    30
    48
    開発支援計画 103 113 114 118
    TCP 79 84 88 89
    677 673 650 50
    注)予算ベース。92―93の農業分野にはその他分を含む。なお、四捨五入の関係で計算が合わない場合がある。

  4. 我が国との関係

    (1) 意思決定機構における我が国の位置づけ
     我が国は食糧・農業問題を積極的に取り組むべき地球規模の課題の一つととらえ、我が国の考えを反映させるため、FAOの場でも重要な役割を担ってきている。1965年以降現在まで理事国を務めているのに加え、現在、FAOの事業計画等を審議するための理事会直属機関である計画委員会(11カ国で構成)の委員及び、世界食糧サミットのフォローアップや食糧安全保障に関する議論を適切に誘導するための世界食糧安全保障委員会のビューローメンバー(5カ国で構成)に選出されている。

    (2) 事務局における邦人職員
     FAOには、98年1月現在で約3,600(専門職約1,400、一般職約2,200)のポストがあるが、うち、邦人職員は33名(準専門家も含む)である。なお、97年10月、FAO日本事務所が横浜市に開設され、初代所長に高橋梯二氏が就任した。

    (3) 財政負担
     98-99年の通常予算は6億5千万ドル。我が国の通常予算の分担率は98年が16.73%、99年が20.228%で、2年間で約117百万ドルの分担金を支払うこととなっており、これは米国(98、99年分担率25%)に次いで第2位である。

    (4) 主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
     1980年以来、我が国はFAOが行うフィールド事業等を支援するため、FAO信託基金に1998年度まで累計約67百万ドル(準専門家信託基金を除く)の拠出を行ってきた。
     1998年は、世界食糧サミットでも取り上げられた「食糧の不安及び脆弱性に関する情報と地図システム」の作成を支援するための事業、アジアの市場経済移行国の林業分野におけるキャパシティ・ビルディング等を推進するための事業、FAOで定められた「責任ある漁業のための行動規範」を推進するための事業等9件のフィールド事業に拠出を行った。これらにFAOへの準専門家の派遣のための拠出(準専門家信託基金への拠出)等を含めると1998年の我が国の任意拠出は約4百万ドルとなった。

    (5) 我が国ODAとの協調実績
     我が国の農林水産分野における国際協力の推進のため、FAOのフィールド事業による成果や獲得されたノウハウの二国間協力への活用等の検討が行われており、我が国拠出のFAOフィールド事業である「中南米西部諸国等土壌浸食対策調査(91年~94年)」の成果を受けたJICA事業の実施や「パキスタンかんがい開発事業(93年~97年)」とJICA事業との協調実施等、二国間協力との連携も図られている。


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