アジア諸国等との学術交流事業(日本学術振興会事業)の概要と実績


  1. 事業の開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     昭和51年度、「発展途上国との学術交流事業」として創設。平成7年度より「アジア諸国等との学術交流事業」と改称。

    (2) 経緯・目的
     学術審議会建議「発展途上国との学術交流の推進について」(昭和52年6月)を受け、日本学術振興会(以下「振興会」という。)では、アジア諸国等の社会・経済発展の基盤として、学術研究活動の発展・充実に協力することを目的に、組織的かつ計画的な学術交流事業を行っている。
     また、アジア諸国等と積極的な学術交流を推進し、緊密な協力関係を構築することは、地域において主導的立場にある我が国が果たすべき重要な役割である。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     主な事業として、拠点大学方式等による交流、論文博士号取得希望者への支援事業、アジア学術セミナーがある。各事業の概要は次のとおり。

    A 拠点大学方式等による交流
     我が国及び相手国にそれぞれの交流の中核となる大学(拠点大学)を設け、拠点大学を中心に、研究に参加する大学(協力大学)及び個々の研究者(協力研究者)からなるグループを両国に構成し、研究者の相互派遣による共同研究の実施、セミナーの開催等を実施している。
    B 論文博士号取得希望者への支援
     大学院の課程によらず学位規則の規定に基づく論文提出等によって、我が国の大学において博士の学位取得を希望するアジア諸国の若い優れた研究者に対し、研究指導を行う等学位取得のために必要な研究を行うことを支援している。
    C アジア学術セミナー
     アジア諸国の若手研究者を我が国又はアジアの開催国に招致して、サマースクール的形態の研修の機会を提供し、これら諸国の当該分野の研究水準の向上及び研究者の養成に資する。

    (2) 審査・決定プロセス

    A 拠点大学方式等による交流
     振興会が、学術交流の覚書を結んでいるアジア諸国の学術振興機関(対応機関)と協議の上、事業の対象となる研究領域を特定し、事業実施の中心となる大学(拠点大学)を文部省と協議の上選定することにより、実施案件を選定する。
    B 論文博士号取得希望者への支援
     本事業による支援を受ける者(論博研究者)の研究指導者(我が国の研究者)及び対応機関からの申請に基づき、振興会が実施案件の採択を行う。
    C アジア学術セミナー
     振興会が我が国の大学等研究機関からの申請に基づき、セミナーのテーマ、実施機関を選定することにより実施案件の選定を行う。なお、国外開催については、併せて開催国の対応機関と協議を行い、実施案件を決定する。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み

    A 拠点大学方式等による交流
     拠点大学は、事業実施に当たり協力を求めるべき大学(協力大学)を選定し、日本側協力大学及び相手国側拠点大学と協議の上、学術交流に係る実施計画を作成して振興会に提出し、その承認を得て実施に当たる。
     事業開始後、振興会は、拠点大学から定期的に事業報告を受け、事業の評価・見直しを行う。
    B 論文博士号取得希望者への支援
     振興会が、研究指導者から提出された計画書を承認することにより、論博研究者の来日(1会計年度2回を限度)及び研究指導者の相手国訪問(1会計年度1回)が実施される。
     振興会は、研究指導者から定期的に状況報告を受け、案件の継続を決定する。
    C アジア学術セミナー
     実施機関が振興会に計画書を提出し、振興会がその計画書を承認することによりセミナーが実施される。
     事業実施後、振興会は、実施機関から事業報告を受け、評価を行う。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要
     平成10年度実績額:1,186,331千円

    A 拠点大学方式等による交流
     平成10年度実績:27交流
    B 論文博士号取得希望者への支援
     平成10年度実績:136人
    C アジア学術セミナー
     平成10年度実績:2件

    (2) 国別

    A  拠点大学方式等による交流
    国名平成9年度平成10年度
    中国2件 2件
    インドネシア7件 7件
    マレイシア3件 3件
    フィリピン3件 3件
    シンガポール3件 2件
    タイ7件 7件
    韓国 1件
    大型共同研究(多国間)
    インドネシア、マレイシア、
    フィリピン、タイ
    2件 2件
    27件 27件

    論文博士号取得希望者への支援

    国名平成9年度平成10年度
    バングラデシュ0人 1人
    中国10人 12人
    インド10人 13人
    インドネシア15人 20人
    韓国23人 21人
    マレイシア3人 4人
    フィリピン18人 17人
    シンガポール2人 2人
    タイ43人 44人
    ベトナム1人 2人
    125人 136人
    B  アジア学術セミナー(国外開催分)
     平成9年度 インド1件
     平成10年度 韓国1件

    (3) 主要な具体的事業・案件及び内容

    A  拠点大学方式等による交流
     平成9年度からの新規案件(括弧内は拠点大学)
    • バイオシステム(筑波大学、北京大学)
    • 海上輸送の総合的研究(広島大学、スラバヤ大学)
    • 地球環境科学(北海道大学、インドネシア生物学研究所)
     平成10年度からの新規案件(括弧内は拠点大学)
    • 医学(東京大学、マヒドン大学)
    • 地球環境総合学(大阪大学、ベトナム国立大学ハノイ校)
    • 環境工学(東京工業大学、フィリピン大学)
    • 社会科学(京都大学、チョラロンコン大学及びタマサート大学)
    • 次世代半導体開発(豊橋技術科学大学、韓国技術教育大学)
    • セラミックス材料工学(大阪大学、漢陽大学)
    B 論文博士号取得希望者への支援
     平成10年度までの学位取得者281人
    C  アジア学術セミナー
     平成9年度実施案件  
     国内開催:半導体欠陥の物理と制御(大阪大学)
      国外開催:化学、材料科学及び生物学における超分子形成(岡崎国立共同研究機構、インド科学技術庁、ネルー高等科学研究センター)
     平成10年度実施案件
    国内開催:高強度レーザーと物質の相互作用(大阪大学)
    国外開催:半導体量子構造の新しい展開(東北大学、韓国科学財団、ソウル国立大学)

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