開発調査事業の概要と実績
- 事業の開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
昭和37年に海外技術協力事業団(国際協力事業団の前身)が設立された際に、外務省の委託調査を引継ぎ、さらに通商産業省から海外開発計画調査が委託され、政府ベースによる技術協力の一環としての開発調査事業が形成された。(2) 目的
開発調査事業の目的と意義は次の通りである。
(イ) 適正な開発計画の策定
対象プロジェクトについての調査報告書を作成し、開発途上国の社会・経済発展に資する公共的な各種事業の開発計画の策定を支援する。(ロ) 技術移転
調査の過程で、現地での技術指導、セミナー等を通じて技術移転を行い、開発途上国の技術者の育成(人造り)に貢献する。(ハ) 技術協力と資金協力との接点
作成された調査報告書は、我が国や他のドナーに対する資金協力要請の基礎資料となり、技術協力と資金協力の接点としての役割を果たす。
- 事業の仕組み
(1) 概要
開発調査事業は、開発途上国の開発計画に対し、コンサルタントによる調査団を派遣して現地調査(データ収集等)と国内での分析作業を行い、計画を策定し、調査報告書を作成する。
主な事業の種類と内容は次の通りである。
(イ) マスタープラン調査(M/P)
各種の開発計画の総合基本計画を策定するための調査で、全国または地域レベルあるいはセクター別の長期計画を策定する。(ロ) フィージビリティ調査(F/S)
個々のプロジェクトが技術的、経済的、社会的に、さらには環境等の側面から見て実行可能であるか否かを検証し、最適な事業計画を策定する。(ハ) 実施設計調査(D/D)
プロジェクトの工事着工に必要な設計図、工事仕様書、入札関係書類等を作成する。フィージビリティ調査よりも高い精度で、設計図面作成や、工事費積算を行う。(ニ) 基礎・資源調査
開発計画の策定で基本的な資料となる地形図の作成や、地下水資源の賦存量調査、利用計画の策定等を行う。また森林資源、水産資源、鉱物資源等の資源賦存状況を把握し、資源の管理および保全に資する調査を実施する。(ホ) いわゆる「ソフト型調査」
最近の傾向としては、上記の分類になじまないソフト・ウエアに重点を置いた調査にも取り組んでおり、旧社会主義国の市場経済化や開発途上国の経済自由化政策を支援するための基本戦略、実行計画を策定する調査(市場経済化支援調査)等を実施している。(2) 審査・決定プロセス
我が国の在外公館を通じて援助要請が提出された案件の中から、プロジェクトの内容、効果、事業化計画等について検討を行い、実施案件を選定する。(3) 決定後の案件実施の仕組み
案件の実施決定後は、国際協力事業団(JICA)が実際の調査事業を行う。
JICAは通常、専門家等からなる事前調査団を派遣して開発途上国の政府機関と調査内容等についての協議を行い、調査範囲、内容、方法等を定めた実施細則(ScopeofWork)を交換する。その後はJICAが、コンサルタントを選定して実施細則に基づく調査を実施し、調査報告書が途上国側に提出される。
- 最近の活動内容
(1) 活動の概要
平成10年度は、各種の調査をあわせて計404件を実施した。(2) 地域別実績
他の地域に比べてアジアの割合が高いという傾向に変化はない。その他の地域では、第2回アフリカ開発会議(TICAD2)が開催されるなど我が国の対アフリカ支援への取り組みが進むなかで、平成9年度に引き続いてアフリカ地域での開発調査案件が拡充された。
(地域別実績の推移)
平成9年度 平成10年度 件数 金額 件数 金額 アジア 198 14,563,542,800 162 14,380,239,350 アフリカ 72 5,302,575,600 63 4,784,690,750 中近東 50 3,825,237,150 45 2,999,109,750 中南米 45 2,768,865,750 58 4,737,323,850 大洋州 5 568,325,100 6 241,878,000 東欧・中央アジア 41 2,698,975,650 42 2,964,334,800 その他 22 295,663,200 28 473,806,200 計 433 30,023,185,250 404 30,581,382,700 (単位:円・いずれも契約ベース)
(3) 主要な具体的事業・案件名及び内容
平成10年度は資金協力との一層の連携を図る目的から、従来の開発調査案件に加えて、新たに円借款による事業化を想定した実施設計調査を実施した。
各セクターの案件の例は次の通り。
社会開発分野の例では、モーリタニアで「キファ市地下水開発計画調査」を行い、同市を対象として地下水開発、導水、給水計画を策定した。またケニア西部の「キムス市上下水道整備計画調査」では中・長期の整備計画マスタープランを策定した。なお、ヴィエトナムで実施された「カントー橋建設設計調査(フィージビリティ調査)」は、引き続き円借款との連携を想定した実施設計調査を実施する。
農林水産業分野での案件の例としては、タンザニアで「ワミ川中流域灌漑農業開発計画調査」を実施したほか、農民の生活水準向上による貧困緩和を目的とした「ラパス県アチャカチャ地区農村・農業開発計画調査(対ボリヴィア)」を行った。またメキシコでは森林の保全と利用を図るため持続的林業振興計画の策定を含む「オアハカ村落林業振興計画調査」を実施したり、モロッコにおいて漁民の所得向上・生活改善を目的に「零細漁村振興計画調査」などを行っている。
鉱工業分野の例では、インドネシアの経済危機後の裾野産業を中心とした中小製造業の回復と復興のためのマスタープランを策定する「工業分野振興開発計画(裾野産業)フォローアップ調査団」を実施した。また、地方電力供給計画の策定を目的とした「再生可能エネルギー利用地方電力供給計画調査(対モンゴル)」や、鉱物ポテンシャルの把握のために「アルタ・フロレスタ地域資源開発調査(対ブラジル)」等を実施した。
(分野別実績の推移)
平成9年度 平成10年度 件数 金額 件数 金額 社会開発分野 277 19,802,178,650 265 21,535,208,150 農林水産業分野 52 5,713,659,000 44 4,529,486,150 鉱工業分野 104 4,507,347,600 95 4,516,688,400 計 433 30,023,185,250 404 30,581,382,700 (単位:円・いずれも契約ベース)
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