プロジェクト方式技術協力の概要と実績


  1.  

    (1) 開始時期
     昭和32年技術協力センター事業として開始。

    (2) 目的
     プロジェクト方式技術協力は、途上国の人造りを中心とした特定の事業目標の達成のため、専門家派遣、研修員受入、機材供与の3つの投入をひとつの協力事業(プロジェクト)として有機的に組み合わせながら一定期間実施するものであり、様々な分野で人材養成、研究開発、技術普及などを目的として協力を行っている。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     プロジェクト方式技術協力は、開発途上国の事業実施能力の確立をめざして、計画段階の調査から、実施、評価に至るまで技術移転を行いながら、5カ年程度事業を運営する協力方式で、協力終了後は開発途上国の運営に引き継がれていくものである。
     本協力を通じて、事業の実施に必要な技術やノウハウが、日本から派遣される専門家から相手国のプロジェクトの運営を担う管理者・技術者(専門家のカウンターパートと呼ぶ)に移転される。この場合、効果的な移転のためには、互いの文化、社会についての相互理解を深め合うとともに、日本の技術をもとに現地に適合した技術を移転するといった視点を大切にしている。プロジェクトでは、開発途上国の経済自立発展、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足のための人造り協力が中心となっていたが、近年人造りの基礎となる教育やさらには環境、人口・エイズ,女性の社会参加(WID)等の地球的規模の課題への協力にも重点をおいている。
     これらの協力には、技術開発、訓練、普及のための特定の技術指導のみならず、移転された技術が確実に定着して、日本の協力終了後も相手国側が独自でプロジェクトを実施していく(自立発展)ために必要な組織づくりや制度づくりも含まれている。
     プロジェクトにおいて日本から派遣される専門家は、通常はリーダーのもとに数人でチームを構成し、指導にあたる。
     研修員受入は、カウンターパートが来日し、国または民間の研究機関、病院、試験所などで研修を行い、技術レベルの向上を図っている。日本での研修は、特定の技術だけでなく、これを生み出し支える土壌を理解するうえでもとてもよい機会を提供している。
     機材の供与は、予算上相手国による整備が困難な機材で、かつ専門家がカウンターパートに対し技術移転活動を行う際に使用する機材であり、研究開発、教育・訓練、普及等の事業に必要なものを対象としている。

    (2) 審査・決定プロセス
     開発途上国の開発の現状、先方の要請内容・意図を踏まえ、我が方がJICAとともに検討のうえ、実施案件を決定する。要請背景等、案件審査のための情報が不足している場合は、必要に応じて事前調査等の予備的調査がJICAによって実施され、さらに案件実施の可否について検討が行われる。

    (3) 協力実施が決定された後は、在外公館またはJICA在外事務所を通じ、相手国に通報する。その後、JICAが派遣する実施協議調査団と相手国が案件実施のための詳細な計画について協議を行い、その内容をまとめて討議議事録(RecordofDiscussions;R/D)を作成し、協力の大枠を決定する。

  3. 最近の活動内容(活動の概要)

     平成10年度の実績は、実施国数57ヶ国、実施件数239件であった。それぞれの分野では、
    (1) 社会・産業開発協力分野では、道路交通、港湾、海運、住宅、電気通信などの社会基盤(インフラ)関連、職業訓練、労働安全衛生、環境、防災、教育、貧困に関する地球規模の課題並びに開発途上国の中小企業の振興さらには、将来の経済発展を担う基幹産業の育成・強化等の課題に対応するために必要な人材の養成に関する協力を行っており、29ヶ国において101件を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
     ヴィエトナム第一郵電訓練センター計画(社会基盤)
     セネガル職業訓練センター拡充計画(職業訓練)
     ガーナ基礎教育計画(教育)
     フィリピン治水砂防技術センター計画(防災)
     フィリピン農村生活改善計画(貧困)
     インドネシア生物多様性保全計画(2)(環境)
     メキシコ・ケレタロ州産業技術開発センター事業(産業育成)

    (2) 人口・保健開発協力分野では、従来の人口教育、家族計画の普及に加え、女性の役割を尊重した女性の社会参加を目指したWID(WomenInDevelopment)の理念や、女性の性と生殖に関する健康と権利を尊重したリプロダクティブ・ヘルスの概念を取り入れた人口家族計画に係る協力並びに開発途上国における医療従事者の育成や、医療に関する制度の改善、技術の向上に資する協力に取り組んでおり、29ヶ国において49件を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
     フィリピン家族計画・母子保健プロジェクト(フェーズ2)(家族計画)
     インドネシア母と子の健康手帳(WID)
     ドミニカ共和国レジデント医師訓練養成計画(医療従事者育成)
     タイ国立衛生研究所(医療技術向上)

    (3) 農林水産業協力分野では、開発途上国に適した農林水産技術の開発、農業普及員の育成、大学や試験場での研究技術の向上、森林・水産資源の保全と適切な利用を図ることにより食料の増産、農民所得や生活水準の向上、これに関連した地域格差の是正、資源の有効利用、環境保全などの協力に取り組んでおり、38ヶ国において実施している。
     その協力例としては次のようなものがある。
     インドネシア優良種子馬鈴薯増殖システム整備計画(食料増産)
     ミクロネシア漁業訓練(所得向上)
     ミャンマー潅漑技術センター計画(フェーズ2)(技術開発)
     ラオス森林保全・復旧計画(フェーズ2)(環境保全)

 産業・社会開発人口・保険医療農林水産業
 1995年度1996年度1997年度1998年度1995年度1996年度1997年度1998年度1995年度1996年度1997年度1998年度
アジア55 60 61 60 22 22 24 24 41 48 52 47
アフリカ3 3 5 7 6 8 10 10 7 8 10 7
中近東7 8 10 14 6 6 6 5 3 2 3 4
中南米22 21 20 16 12 10 10 10 22 25 27 27
大洋州0 0 0 0 1 1 0 0 2 2 2 2
東欧・中央アジア3 3 3 4 0 0 0 0 1 1 2 2
90 95 99 101 47 47 50 49 76 86 96 89

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