青年海外協力隊派遣事業の概要と実績


  1. 事業開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     昭和40年創設。同年度には、ラオス、カンボディア、フィリピン、マレイシア及びケニアの5ヶ国に協力隊員40名を派遣した。

    (2) 経緯・目的
     戦後、わが国が国際社会の一員として対外経済協力を開始し、国内においては開発途上国に対する協力への関心が高まっていった。米国では平和部隊が創設され、わが国もアジア諸国に対し青年技術者を派遣するに至った。このような状況の下、日本青年の自発的意志に基づく対外協力活動の実現に対する声の高まりを背景に、昭和40年4月、開発途上の国々に技術を有する青年を派遣し、相手国の人々と生活と労働を共にしながら相手国の社会的、経済的発展に協力することにより、これら諸国との親善と相互理解を深めるとともに、日本青年の広い国際的視野の涵養に資することを目的として青年海外協力隊が創設された。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     青年海外協力隊事業は、相手国の要請に基づき、国内で募集選考した技術・技能を有する20歳~39歳までのわが国の青年男女を訓練の上、相手国に派遣する事業である。昭和40年の発足以来、平成10年度末までに71ヶ国と派遣取極を締結し、これまで66ヶ国に累計18,853名を派遣した。青年海外協力隊派遣事業は、国民参加型の「顔が見える協力」の代表例として、内外から高い評価を得ている。

    (2) 隊員の派遣
     青年海外協力隊員は、わが国と相手国政府との間で締結される派遣取極(交換公文による)に基づいて派遣される。実際の派遣に際しては、各受入国からの具体的な要請に基づいて、年2回、国内において募集・選考が行われる。合格者は、国際協力、任国事情、語学等を内容とする約80日の派遣前訓練(年3回実施)を受けた上で、協力隊員として派遣される。協力隊員の派遣は年3回に分けて行われ、派遣職種は農林水産、保健衛生、教育文化等7分野で約140種である。協力隊員の活動期間は原則として2年間であるが、相手国政府からの要請があり、隊員本人も同意すれば原則として最大1年の延長も可能。

    (3) 隊員の活動
     派遣された隊員は、相手国の政府機関等に配属され、当該機関の一員として協力活動を行う。協力隊員の活動形態は受入国によって異なるが、形態別に大別すると次のとおりである。

    (イ) 村落の一員として農村社会の中にとけこみ、巡回指導や普及活動を進めていく「村落型」(稲作、家畜飼育など)
    (ロ) 職業訓練や理数科教育のように、実習・授業を担当する「教室型」(日本語教育、職業訓練など)
    (ハ) 土木建築、通信関係などの現場工事に従事する「現場勤務型」(土木設計、測量、電話架設など)
    (ニ) 事務所、試験場、研究所等に勤務して、設計や試験・研究を任務とする「本庁・試験場勤務型」(都市計画、栽培実験など)
    (ホ) 複数の職種の隊員が共通の達成目標と活動計画をもって、同一のプロジェクトでチームとして活動する「チーム派遣型」

  3. 最近の活動内容(平成10年度)

    (1) 平成10年度は、59ヶ国において3,275名の隊員が協力活動を行った。同年度末現在の派遣中隊員は59ヶ国に2,288名(うち女性1,131名)であり、これまでの派遣隊員の累計は66ヶ国に対し18,853名(同6,250名)である。

    (2) 派遣隊員の地域別では、アジア地域とアフリカ地域が最も多く、それぞれ913名及び870名、次いで、中南米地域818名、大洋州地域335名、中近東地域185名、東欧地域154名となっている。また、分野別では、農林水産609名、加工89名、機械の保守操作253名、土木建築133名、保健衛生504名、教育文化1,215名、スポーツ272名、調整員(隊員の現地での活動を支援する)200名となっている。

    (3) 新たな派遣対象国として、協力隊派遣取極をキルギス(平成10年7月)、ブルキナ・ファソ(同10月)、ウズベキスタン(同12月)及びジブティ(同11年3月)との間で締結した。

    (4) 現職参加や帰国後の再就職の問題等の理由により1年程度の派遣を望む協力隊参加希望者の要望に応えるために、1年派遣制度を新設し、12ヶ国に15名を派遣した。

    (5) 近年のボランティア活動に対する理解と関心の高まりを背景に、海外ボランティア活動への一般参加希望者に門戸を開くため、夏期休暇等を利用して協力隊員の活動を短期間支援するバックアップ・プログラム派遣制度を新設し、大学生等を中心とするグループをガーナ等に派遣した。

    (6) 高校生等若年層の国際協力への関心の高まりを受けて新設したジュニア協力隊派遣制度により、若年層の国際理解の涵養と国民参加型援助の裾野の拡大に資することを目的として、30名の高校生をネパール等に派遣した。

平成7年度から平成10年度派遣実績
 平成7年度平成8年度
新規継続帰国合計
(人数)
新規継続帰国合計
(人数)
国数人数国数人数国数人数国数人数国数人数国数人数
アジア15 316 15 324 14 278 918 15 297 15 361 15 272 930
中近東4 59 4 83 4 69 211 5 51 4 61 4 76 188
アフリカ11 339 11 335 11 287 961 11 276 11 387 11 283 946
中南米14 336 13 296 11 239 871 15 237 14 365 13 263 865
大洋州8 112 8 111 8 107 330 8 91 8 119 8 104 314
東欧3 35 3 45 3 12 92 3 27 3 44 3 35 106
合計55 1,197 54 1,194 51 992 3,383 57 979 55 1,337 54 1,033 3,349
 
農林水産45 205 43 232 37 169 606 42 167 44 240 44 191 598
加工22 36 23 33 18 30 99 16 21 25 43 20 26 90
保守操作43 150 40 131 36 110 391 35 88 44 160 40 120 368
土木建設23 54 26 44 23 59 157 24 40 24 55 24 43 138
保健衛生45 170 35 150 38 158 478 44 168 45 169 36 150 487
教育文化53 412 51 418 48 341 1,171 57 374 52 452 49 370 1,196
スポーツ37 117 34 104 26 79 300 36 75 38 129 34 88 292
調整員34 53 53 82 32 46 181 37 46 47 89 38 45 180
合計-1,197 -1,194 -992 3,383 -979 -1,337 -1,033 3,349

 平成9年度平成10年度
新規継続帰国合計
(人数)
新規継続帰国合計
(人数)
国数人数国数人数国数人数国数人数国数人数国数人数
アジア15 299 15 313 15 341 953 15 303 15 335 15 275 913
中近東5 63 5 53 5 58 174 5 70 5 69 4 46 185
アフリカ11 291 11 316 11 344 951 11 266 11 328 11 276 870
中南米15 286 14 245 14 349 880 15 293 15 308 14 217 818
大洋州9 88 8 106 8 104 298 9 143 9 102 8 90 335
東欧4 64 3 40 3 31 135 4 51 4 74 3 29 154
合計59 1,091 56 1,073 56 1,227 3,391 59 1,126 59 1,216 55 933 3,275
 
農林水産45 203 44 192 43 211 606 41 214 46 229 42 166 609
加工22 29 22 31 22 33 93 19 30 21 31 20 28 89
保守操作36 90 37 89 44 158 337 40 76 37 99 33 78 253
土木建設20 41 25 41 23 52 134 27 52 22 46 21 35 133
保健衛生46 164 42 158 47 178 500 45 185 46 168 41 151 504
教育文化57 417 54 387 54 435 1,239 59 417 58 443 54 355 1,215
スポーツ35 91 37 90 35 112 293 40 93 40 108 32 71 272
調整員40 56 48 85 36 48 189 40 59 51 92 38 49 200
合計-1,091 -1,073 -1,227 3,391 -1,126 -1,216 -933 3,275

*1人数は、一般隊員、一般短期、シニア隊員、シニア短緊、嘱託調整員、調整員短期及び休職調整員が含まれる。
*2年度は4月1日から3月31日(件数年度)にて計上している。

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