ヴィエトナム(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)ヴィエトナムの安定はインドシナの平和と安定にとり極めて重要であること、人口約7,600万人を有し、また、一人当たりGNPは低く、援助需要が高いこと、更に、経済発展に伴いこの地域における重要性を増していくと考えられること、
    (ロ)91年10月のカンボディア和平合意を受け、我が国からヴィエトナムへの円借款を再開したことを契機に、両国関係は将来を見据えた新たな発展段階に入り、政治面、経済面のみならず文化面等でも緊密化しつつあること、
    (ハ)ヴィエトナムは、86年より「ドイモイ(刷新)」路線の下市場経済化を推進するとともに、95年にはASEAN加盟、98年にはAPEC加盟を果たし、我が国を含む域内外諸国との関係改善・拡大を進めてきていること、また、アジア経済危機の影響が徐々に浸透し経済成長とドイモイ政策の維持に困難が生じていること

    等を踏まえ、援助を実施する。
     我が国は、経済成長維持に努めるヴィエトナムを支援するため、98年度には円借款や無償資金協力等、これまでで最大の支援を実施している。なお、ヴィエトナムは我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)で第13位の受け取り国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、ヴィエトナムにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年10月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるヴィエトナム側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。

    (イ)人造り・制度造り(特に市場経済化移行支援)

     市場経済化を推進しているヴィエトナムにおいては、人材育成と法制度、税制、金融制度等の制度造りが緊急の課題となっている。このため、(a)新たな経済システムの構築に資する行政分野、市場経済関連分野及び法制度整備分野への協力と、(b)職業訓練関連分野における協力を積極的に行う。

    (ロ)電力・運輸等インフラ整備

     輸出指向型経済成長のための外国投資導入に資するインフラ整備を行う。(将来的な需要の増加に対応するための電力分野での協力、各交通形態の特性に応じた運輸分野での協力)

    (ハ)農業・農村開発

     ヴィエトナムの主要産業である農業分野では、生産性向上のための農業インフラ(注1)の整備(社会経済基盤の整備が遅れている地域では農業基盤整備に社会経済インフラ整備を伴う農業適地開発)及びポスト・ハーベスト(貯蔵、流通、加工)の向上、並びに農業生産の多様化を図るため農業技術の開発・普及等に資する協力を行い、地方における生活水準の向上を目指す。

    (ニ)教育、保健・医療

     ヴィエトナムでは、高い進学率や識字率が社会指標に表れているが、教育環境や医療設備は改善の余地が極めて大きい。(a)教育分野(初等・高等教育機関の施設・設備の整備)、(b)保健医療分野(医療サービス向上のための施設・設備の整備)、(c)人口・エイズ分野を重視する。

    (ホ)環境

     環境分野の案件については、(a)自然環境保全、(b)居住(都市)環境の改善、(c)公害防止に資する各種協力(注2)をヴィエトナム側の優先度を考慮し、具体的な協力を検討する。また、環境分野で活躍するNGOに対する支援を積極的に検討する。

    (注1)灌漑システム等
    (注2)自然環境保全:植林事業、森林経営計画策定、生態系保護等
    居住環境改善:上下水道・排水設備の整備
    公害防止:大気・海洋汚染防止、産業廃棄物処理等

    (3)留意点

    • ヴィエトナムの経済改革の加速に留意する。ヴィエトナム側のODA実施体制・手続きに係る一層の改善が必要である。
    • インドシナ地域全体の発展を念頭に、広域的アプローチを踏まえるとともに、各協力形態間の有機的連携を図りつつ、効果的な援助を実施する必要がある。
    • インフラ等ハード面での協力のみならず、重要政策中枢支援(法整備)や95~98年に実施した総合政策支援(マクロ経済運営)による日ヴィエトナム共同研究の成果を活用し、ソフト面での協力を実施していく。
    • 新宮澤構想での関連で、ヴィエトナムは民間セクター育成プログラムの策定・実施、大規模国営企業の監査及び非関税障壁の関税化という3つの政策を実施することを明らかにしている点に留意する。
    • 97年の日・ASEAN首脳協議で橋本総理が提唱した「日・ASEAN総合人材育成プログラム」、ヴィエトナム・カイ首相の改革分野所信表明、また、「日越人材協力センター」設立構想に基づき、ヴィエトナムの人造り面での協力を推進する。
    • 経済改革の進展に伴う地域間・階層間の格差是正に配慮する。

  2. ヴィエトナム経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (97年)と同成長率
    (90-97年平均)
    実質GDP成長率
    310ドル、6.1%
    (世銀資料)
    93年8.1%、94年8.7%、95年9.5%、96年9.3%、97年9.0%、98年3.5%、
    (世銀資料)

    (2)現状

     86年にヴィエトナムがドイモイ政策の旗印の下で市場経済移行に着手して以降、経済的水準は未だ低いものの、おおむね良好なマクロ経済の実績を示してきた(92~96年の平均GDP成長率8.9%を達成)。しかし、97年のアジア経済危機の間接的影響は免れ得ず、慢性的な貿易赤字基調に加え、自国製品の輸出不振、外国民間投資の大幅減少に伴い失業率、物価が上昇する中で経済成長が大きく減速しており、また、金融システム・国公営企業改革等の構造問題も経済成長の足かせとなっている。これらの問題に対し政府指導部は危機感を強め、外資奨励・輸出促進に関する具体的施策を打ち出す等、現状打開に向けた努力を行ってきている。

    (3)課題

    • 社会経済インフラや農業基盤の整備
    • 財政、金融面での制度改革、国営企業改革の促進、民間セクターの育成
    • 市場経済に適合した法制度整備、人材育成
    • 拡大しつつある貧富の差の是正(都市・農村間の格差是正)
    • 各種不正行為の防止

  3. 開発計画

    「1996年から2000年の社会経済5ヶ年計画における方向と任務」の中で以下の目標を挙げている。

    (目標)

    • 一人当たりGDPを1990年の2倍に引き上げる。
    • 平均GDP成長率を9~10%以上とする。
    • 年平均成長率を農業生産4.5~5.0%、工業生産14~15%、サービス部門12~13%とする。
    • GDPに占める産業の比率を農業19~20%、工業34~35%、サービス45~46%とする。
    • 総投資額の対GNP比を30%とする。
    • 人口の年増加率を毎年1.8%以下とする。

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    98年(暦年)28755483906位
    98年(暦年)までの累計7844702801,53313位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    586日本 233フランス 64米国 48

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    411IDA 180ADB 148CEC 24
CEC:Commission of the European Communities(欧州委員会)

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