インドネシア(国別援助方針)
CEC:Commission of the European Communities(欧州委員会)
- 基本方針
(1)我が国の援助対象国としての位置付け
(イ) インドネシアは、貿易・投資等の面で我が国と密接な相互依存関係を有し、我が国にとって政治・経済面において重要な存在であること、 (ロ) 我が国の海上輸送にとって重要な位置付けにあり、石油、ガス等の天然資源供給国となっていること、 (ハ) 2億人にのぼる人口規模を有し、ASEAN諸国の中核となる国として東南アジア経済の発展と安定のため重要な役割を担ってきていること、 (ニ) 従来より貧困撲滅、地域格差是正等のため多大な援助需要があったことに加え、97年のアジア経済危機の影響によって社会経済情勢が不安定化し、現在は小康状態にあるものの、適切な経済改革の遂行及び新たな状況への対策を通じ、経済の回復と民生の安定を図ることが課題となっていること 等を踏まえ、援助を実施する。
我が国は、98年度、同国の経済困難克服に向けた努力を引き続き支援し、社会的弱者支援、失業者対策等の実施のため、98年7月のインドネシア支援国会合において総額約1,870億円(円借款に1,500億円(全額実施済み)、約5万トンのコメ援助含む)を表明し、これに加え政府米70万トンの貸付に係る支援策を実施している。更に、98年10月に表明された新宮澤構想の一環として国際収支及び社会的弱者支援のため9億ドル相当円程度の円借款供与のほか、援助以外の公的資金協力として、輸銀による15億ドル相当円程度の融資を表明している(円借款は約6.7億ドル(804.8億円)実施済み)。また、99年6月のインドネシア総選挙実施に対する支援も行った。
なお、インドネシアは我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)で第1位の受け取り国である。(2)我が国の援助の重点分野
我が国は、インドネシアにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年2月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるインドネシア側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
- (イ)公平性の確保
経済危機の影響を特に強く受けている社会的弱者への対応を中心に、階層間・地域的公平性の確保を目指す。具体的には、(a)貧困撲滅(貧困層の生活環境の改善)、(b)基礎生活分野に対する支援(居住環境の整備、保健医療)、(c)人口・家族計画及びエイズ対策、(d)東部インドネシアの開発(地域間格差是正)を重視する。
(ロ)人造り・教育分野
インドネシアが経済危機を克服し、国際競争力の強化と付加価値の高い工業化を進めるためには、教育水準の向上をはじめ広範な分野での人造りが重要。(a)初等・中等教育の充実、(b)教員の質の向上(小・中学校の理数科教員を中心とする)、(c)技能・技術者教育の充実を重視する。
(ハ)環境保全
急速な開発に伴い生じてきた環境問題(森林等の自然資源の減少、公害・災害の発生)の深刻化と大都市への人口集中による居住環境の悪化への対応が必要であり、(a)森林等の自然資源・自然環境の保全(生物多様性の保全等)及び持続可能な利用、(b)都市居住環境及び公害面での協力、(c)環境問題全般における体制の整備(環境関連の政策実施能力の向上等)を重視する。
(ニ)産業構造の再編成に対する支援
経済危機の克服とその後の経済成長の回復・維持のため健全なマクロ経済運営と裾野の広い産業振興、農業振興のための支援を行う。特に、(a)マクロ経済運営に対する支援、(b)サポーティング・インダストリーの振興、(c)農業振興(農産物多様化、付加価値の高い農産物の生産)を重視する。
(ホ)産業基盤整備(経済インフラ)
インドネシアの持続的経済発展のためには外国直接投資の継続的な導入が必要であり、このための投資環境整備を行う。(a)電力、(b)水資源開発、(c)運輸、(d)通信が重要。
(3)留意点
- 経済危機と政権交代に伴う政治・社会・経済面での一時の危機的な状況は脱しているが、実体経済は依然として厳しく、社会的弱者対策等のアジア支援策は99年度も引き続き着実に実施することが必要。
- 97年の日・ASEAN首脳協議で橋本総理が提唱した「日・ASEAN総合人材育成プログラム」に基づき、経済の持続可能な発展のために必要な人材の育成を支援する。
- 我が国は、各援助形態の有機的連携による効果的な援助の実施に努めているが、その典型として農業分野において「農民の生活水準向上」を最上位目標とした第3次アンブレラ協力を現在実施中である。
- インドネシア経済の現状と課題
(1)主要経済指標
一人当たりGNP (97年)と同成長率
(90-97年平均)実質GDP成長率 1,110ドル、5.9%
(世銀資料)93年6.5%、94年7.5%、95年8.2%、96年7.8%、97年4.7%、98年▲13.7%
(インドネシア中央統計局資料)(2)現状
97年に発生したアジア通貨・金融危機はインドネシア経済に大きな打撃をもたらし、98年の経済成長率はマイナス13.7%、インフレ率は77.6%となった。
現在は、為替レートの安定、インフレの鈍化傾向、投資の拡大傾向、農業の回復傾向等、実体経済に回復の兆しが見られ、インドネシア経済に対する市場の信認も幾分回復してきたが、銀行の過剰債務問題、政治・社会動向の不透明感が依然残っている。経済危機の影響克服のためには、生活物資価格の安定化、主要食糧の安定供給及び金融システムの再構築が課題であり、政府は、経済の安定確保及び社会的弱者保護に留意しつつ経済回復を図っていくことを政策の柱としている。なお、現政権は99年度の予算案の基準指標として、経済成長率0%、インフレ率17%、為替レート1ドル7500ルピアを設定している。
99年の総選挙並びに新大統領選出等、主要政治日程については、これらが順調に実施され、政治・治安の安定が確保されることが、経済への信認回復と実体経済の回復にとって極めて重要である。なお、6月7日の総選挙は概ね選挙法令等に定められたところに則って円滑に実施された。(3)課題
- インフレの抑制、国際収支の改善、民間対外累積債務の適正管理をはじめとする慎重なマクロ経済政策の継続、貿易金融の適切な運用
- 社会的弱者の保護、保健・医療サービスの維持・向上、貧困対策・所得格差の是正、地域間格差の是正、雇用対策
- 森林火災、渇水、地震、洪水等の自然災害への対応
- 産業や経済の高度化に対応するために必要な教育や技術者育成
- 都市における生活環境改善、公害対策や自然環境保全
- 経済発展の基盤となる農業生産基盤や経済インフラの整備
- 開発計画
第6次開発計画(1994~98年度)
(目標)
・ 第2次25カ年開発計画で経済的離陸を目指しており、第6次5ケ年開発計画ではそのための基礎固めを行う。 (目標値)
・ 年平均経済成長率 7.1%(95年8月に当初目標の6.2%を修正) ・ 人口増加率 1.5%(終了時)←第5次5ケ年計画達成値1.66%(見込み) ・ 国民一人当りGNP 1,280ドル以上(終了時、95年8月に当初目標を修正)←980ドル(95年) ・ 絶対的貧困層 1,200万人以下(終了時)←(1990年:2,700万人)
- 援助実績
(1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)
有償 無償 技協 合計 供与先順位 98年(暦年) 590 115 126 830 2位 98年(暦年)までの累計 11,619 1,134 2,036 14,789 1位 (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)
二国間総額 1位 2位 3位 791 日本 497 ドイツ 115 オーストラリア 79 (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)
国際機関総額 1位 2位 3位 52 ADB 17 CEC 15 UNICEF 15
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