エジプト(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)エジプトは、中近東地域の大国であり、政治的安定を維持しつつ、中近東地域の平和と安定の維持に主導的役割を果たしていること、
    (ロ)市場指向型経済の導入及び民主的議会制の運営等民主化を推進していること、
    (ハ)我が国との関係が緊密であること、
    (ニ)高い人口増加率、貧困・失業者増大等の問題を抱えており、援助需要が大きいこと、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、エジプトは我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)で第8位(中近東地域で第1位)の受け取り国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、エジプトにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び92年2月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるエジプト側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。

    (イ)農業生産の拡大

     エジプトでは、食糧自給率の向上のため農業の建て直しが緊急の課題となっているところ、農業生産性の向上、農産物の加工・流通面の改善等を支援する。

    (ロ)教育の充実・人材育成

     基礎教育全体のレベルアップに資するよう、施設充実のための支援、教育内容の質の向上のための支援の双方を進める。また、経済・社会活動の基礎となる人材を育成するために、質の高い技術者の育成や職業訓練活動、地方行政や地方社会における開発能力の向上を支援する。

    (ハ)経済基盤の整備・各種産業の振興

     長期産業政策及び民間投資の導入を念頭に、総合的かつ効率的なインフラの整備を支援するとともに、各種産業の育成、輸出振興を通じた貿易・投資の拡大、観光振興を支援する。

    (ニ)保健・医療

     小児医療や看護婦の養成といった従来の協力とともに、低所得層に直接裨益する基礎的保健医療の質的改善のための協力を推進し、人口・家族計画を含む保健医療サービスの質的向上を図る。また、環境保健の普及、保健・医療システムの改善、貧困対策を念頭においた社会福祉の向上を図る。

    (ホ)環境改善・保全及び公衆衛生の改善

     経済発展に伴い様々な環境問題が顕在化しつつあることに鑑み、環境モニタリングの技術、公害防止対策技術等、環境の改善及び保全に資する基礎的技術の普及を支援するとともに、クリーンな再生エネルギー分野で緊密に協力を行っていく。また、裨益度の高い都市部を中心に上下水道等の生活環境及び公衆衛生の改善を支援する。

     上記に加え、貧困対策を念頭に置いて、特に福祉分野でのサービス改善に資する協力を進めていく。

    (3)留意点

    • 社会的、経済的なレベルにおいて、依然地域間格差、男女間格差が著しいことに鑑み、地域的なアプローチや低所得層における女性支援という側面も重視しつつ、援助の実施を検討していく必要がある。なお、特に貧困が著しく、そこから派生するテロ等の治安問題を抱える中部エジプトについては、こうした悪循環を断ち切るためにも基礎生活分野を始めとする支援の必要性が高いと考えられ、かかる地域での支援のあり方について検討していく。
    • 他のドナーとの協調の下での、新開発戦略の実施に向けたエジプトとのパートナーシップを築くためのイニシアティヴを継続していく。
    • アフリカ及び中近東地域の開発支援のための一つの拠点として、エジプトと我が国による三角協力を推進する。98年10月に「アフリカにおける南南協力推進のための日・エジプト三角技術協力」の枠組文書が署名されたが、エジプトは、我が国と共同で行っている第三国研修(アフリカ・中東諸国からの研修員のエジプトにおける研修)を、中東・アフリカ諸国との協力関係の緊密化に資するものとして高く評価しており、エジプト側からも費用等に関し段階的に相応の負担を得つつ、第三国研修を拡充する。
    • 99年4月のムバラク大統領訪日の際に、平和と繁栄の21世紀を目指した日本・エジプト・パートナーシップ・プログラムを策定したが、同プログラムの実施に留意しつつ援助を実施していく。
    • 経済構造改革プログラムの進展、エジプトの長期経済社会開発に向けた取り組みを踏まえ、91年以来供与していない新規円借款の具体的な供与に向け、エジプトとの協議を進めている。

  2. エジプト経済の現状と課題

    (1) 主要経済指標

    一人当たりGNP (97年)と同成長率
    (90-97年平均)
    実質GDP成長率
    1,200ドル、2.8%
    (世銀資料)
    93年2.9%、94年3.9%、95年4.6%、96年5.1%、97年5.9%、98年5.6%
    (IMF資料)

    (2) 現状

     91年以降本格化した市場経済への移行を主眼とした経済改革・構造調整及び債務削減措置の結果、財政赤字の対GNP比の縮小、インフレ率の安定、外貨準備高の増加等、マクロ経済安定策が成果を上げつつあるが、高い失業率、有力な輸出産業の未発達等の課題を抱えている。

    (3)課題

    • 市場経済化の一層の促進、資本市場の整備
    • 公営企業の民営化促進、雇用の創出
    • 地域間、男女間等の格差是正、生活水準の向上
    • 食糧の安定自給に向けた農業の生産性向上
    • 初等教育をはじめとする人材育成
    • 経済発展の基盤となる経済インフラの整備

  3. 開発計画

     第4次経済社会開発5カ年計画(1997/98年~2001/02年)

    (目標)

    • 年間GDP成長率6.8%の達成
    • 民間投資額を目標総投資額の65~75%に拡大
    • 民間消費の年間成長率を人口成長率の倍以上に維持
    • 就業機会・労働者所得の拡大
    • 民間セクター生産を年率10%で拡大
    • 義務教育年齢にある児童の完全就学
    • 経済・社会分野における女性の参加率向上
    • 乳幼児死亡率及び妊産婦死亡率の削減
    • 人口成長率を5年間で現行の1.94%から1.66%に削減
    • 経済開発を国際的環境にリンク

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    98年(暦年)2042248616位
    98年(暦年)までの累計2,0179393343,2908位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    1,496米国 542ドイツ 397フランス 284

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    402CEC 197IDA 141AfDF 23
CEC:Commission of the European Communities(欧州委員会)

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