バングラデシュ(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)バングラデシュは我が国と伝統的に友好関係にあること、
    (ロ)LLDC諸国の中で最大の人口を有する(約1.2億人)国であり、援助需要が大きいこと
    (ハ)洪水、サイクロン等の自然災害をしばしば受けている国であること、
    (ニ)91年以来、民主化及び経済自由化等の構造調整を進めており、96年6月に発足したハシナ政権は、貧困撲滅及びより一層の民間活力の活用を通ずる経済発展の達成を基本目標としていること、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、バングラデシュは我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)で第6位の受け取り国であり、また、バングラデシュにとり我が国は第一位(97年)の援助国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、バングラデシュにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び90年4月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるバングラデシュ側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。

    (イ)農業・農村開発と農業生産性向上

     農村地域のインフラ整備、農業技術の普及、農業研究等により農業生産性を向上させ食糧自給率の改善を図るとともに、農村における貧困層(特に土地なし農民等)の雇用創出・所得向上を目指す。マイクロ・クレジット等ソフト面の強化により、農村レベルの貧困層の生活改善を支援する。

    (ロ)社会分野(基礎的生活分野、人的資源開発)の改善

     貧困層に裨益するとの観点から、他のドナー国やNGOとの連携を図り、草の根無償資金協力を積極的に活用しつつ、基礎的な衛生、医療事情の改善のため「子供の健康」、「母子保健」、「安全な飲料水の確保」に取り組むとともに、「初等教育」、特に「女子教育」等に関するDAC新開発戦略の目標達成に向け支援する。また、我が国は、社会サービスの効率的な実施のための人材教育・訓練への支援等を重視する。

    (ハ)投資促進・輸出振興のための基盤整備

     経済発展や経常収支改善のためには、輸出の拡大が不可欠であり、投資促進・輸出振興に資する基礎インフラ整備への援助等に加え、投資環境整備・投資促進の諸施策、実施機関の能力向上等ソフト面での協力についても検討を行っていく。

    (ニ)災害対策

     毎年のように洪水、サイクロン等自然災害による被害が甚大であり、人的・経済的被害を軽減するとともに、安全な土地を確保し、経済発展の基盤である土地条件を改善することが重要である。洪水対策は「洪水対策計画(FAP)」に基づき国際的な支援の下で取り組んでおり、今後バングラデシュ政府の「総合国家水管理計画(NWMP)」策定後、同計画に沿った協力を検討していく。また、サイクロン対策は小学校等を多目的サイクロン・シェルターとして活用していくほか、気象監視や早期警戒システム等も検討していく必要がある。

     以上の4つの重点分野に横断的に関連する課題として、環境、人材育成、制度造りに対する取り組みも強化することとする。

    (3)留意点

    • 実施体制の強化等援助受入能力の向上を含め、バングラデシュ側の一層の自助努力が必要である。
    • 債務救済無償及びその見返り資金の活用の仕方についても更に改善の余地がある。
    • 98年度から開始された債務救済無償対象外の円借款債務の返済状況に留意する。

  2. バングラデシュ経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (97年)と同成長率
    (90-97年平均)
    実質GDP成長率
    360ドル、3.3%
    (世銀資料)
    92年4.2%、93年4.5%、94年4.2%、95年4.4%、96年5.4%、97年5.9%
    (IMF資料)

    (2)現状

     農業が主要産業であるが、天候に左右されやすく、未だ食糧自給を達成していない。年次開発計画予算(ADP)の約半分を外国援助に依存している。ハシナ政権は、経済改革の推進、ゼネストで停滞した経済活動の回復、外国投資の促進及びインフレ抑制等に努めており、経済成長率は漸増しつつあるが、外貨準備高の減少、ガス供給不足による停電の頻発等の問題が発生している。また、98年7月以降、2ヶ月以上にわたり今世紀最大ともいわれる洪水被害(GDPの10%相当ともいわれる)に見舞われ、98/99年度のGDP成長率は3~4%程度まで低下すると考えられており、今後、インフラ復旧、食糧増産等の分野が政権の中長期的な課題となっている。

    (3)課題

    • 財政赤字と援助依存体質からの脱却
    • 食糧自給率の向上及び農業生産の多角化
    • 貧困対策、人口増加率(96/97年度:1.75%)の一層の抑制
    • 民間投資の促進
    • 国営企業の民営化、貿易自由化、金融改革等の構造調整の促進や輸出産業の育成
    • 行政の効率化や手続きの簡素化

  3. 開発計画

    第5次5ヶ年計画(1997/98~2001/2002年度)

    (開発目標)

     (1)経済成長を通じての貧困緩和、(2)雇用促進と労働生産性の向上、(3)食糧自給の達成、(4)人的資源開発、(5)民間経済活動を促すインフラ整備、(6)人口増加率抑制、(7)科学技術向上、(8)女子教育普及等

    (戦略)

     (1)農業・農村開発の推進、(2)教育の普及、(3)民間部門の活性化、(4)輸出主導による工業化、(5)マイクロ・ クレジットの活用等

    (主要目標値)

    • 年平均GDP成長率 7%
    • 分野別平均成長率 農業4.0%、工業13.9%、建設7.7%、電力・ガス23.0%
    • 人口増加率 96/97年度1.75%から2001/2002年度1.32%へ
    • 貧困人口率 96/97年度45%から2001/2002年度30%へ

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    98年(暦年)-50219271969位
    98年(暦年)までの累計1,7632,4453704,5786位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    539日本 130英国 70オランダ 64

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    476 IDA 245ADB 149CEC 81

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