世界保健機関(WHO:World Health Organization)の概要と実績
- 設立経緯及び根拠・目的
世界保健機関(WHO)は、国際連合の専門機関であり、1946年、ニューヨークで開かれた国際保健会議が採択した世界保健憲章(1948年4月7日発効)によって設立された日本の加盟は1951年5月16日)。
「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲章第1条)を目的としている。
- 最近の活動内容
新たに発生した感染症(エボラ出血熱、新型インフルエンザなど)や、すでに克服されたと思われていた感染症の再熱(コレラ、結核など)が、世界規模で大きな問題となっていることから、これらを「新興・再興感染症」の問題として総合的・重点的に対策を講じている。1996年には新たな部局を設け、世界的常時監視網の構築、集団発生時に迅速かつ的確に対応するための体制確保、科学的で正しい知識や対策の普及に努めている。
また、特定の疾患の根絶や制圧にも力を注いでいる。重点的な予防接種の推進により中南米に次いで西太平洋地域のポリオの根絶が間近となっているほか、メジナ虫症も数年後には根絶が可能な状況と.なっている。さらには、ハンセン病、リンパ・フィラリア症、アフリカの風土病であるオンコセルカ症、ラテン・アメリカの風土病であるシャーガス病などについても、制圧対策が強力に推進されている。
さらに、麻疹、破傷風、ジフテリアなどの疾患の発生を防ぐ拡大予防接種計画、結核に対し直接管理の下に服薬を行う短期療法(DOTS)、病気の子どもにより幅広くケアを提供するための小児期疾患総合管理対策、日常の疾病対策に不可欠の医薬品を適切に供給・管理するための必須医薬品対策などを、重点活動として推進している。
医薬品、血液製剤、食品、化学物質等に関する安全対策にも重要課題として取り組んでおり、各般の基準策定、副作用など危機管理上重要な情報の迅速な提供などにも努めている。
安全な出産を確保するための妊産婦対策や家族計画などのリプロタクティブ・へルス対策、自然災害や紛争等の緊急事態における緊急人道援助などについても力を注いでいる。
また、マラリアなどの熱帯病に対する治療法やワクチンなどの予防法開発を初めとして、研究開発の振興にも努めている。さらには、クローニングのヒトへの適用に対する警告発信など、最近の科学技術に関し、生物科学的観点のみならず杜会的・倫理的観点も含めた総合的対策にも取り組んでいる。
- 我が国との関係
(1)意思決定機構における我が国の位置づけ
1951年の加盟以来、我が国は、WHOの活動に積極的に参画している。この間、我が国は7回にわたって、執行理事会の理事指名国に選ばれている。
(2)事務局における邦人職員
WHOは、97年4月現在で3,738名(専門職1,303名、一般職2,435名)の職員がいるが、そのうち邦人職員は45名。事務局長は中嶋宏氏。
(3)財政負担
98―99年の一般会計予算は8億4,265万ドル(2年間の総額)。一般予算の財源は加盟国の義務的負担である分担金により賄われる。97年の日本の分担率は15.38%で、分担金は約63百万ドル。米国(分担率25%)に次いで第2位の拠出国となっている。また、このほかにも特定の重要課題(新興・再興感染症対策、医薬品安全対策、食品安全対策など)における技術協力等の推進に資するため、任意拠出を行っている。
(4)我が国ODAとの協調実績
1974年に世界規模で開始されたWHOの拡大予防接種事業は着実に実績を上げ、予防接種率の向上と共に、対象疾患の報告数は減少傾向を示し、特に現在この事業の中で大きなウエイトを占めているポリオ根絶計画は、WHO西太平洋地域事務局管内での西暦2000年の根絶宣言に向け着実に成果を挙げつつある。1990年には5,991例有ったポリオ報告例は1996年には21例、97年は9例の野生株分離報告例のみとなり、97年3月19日のカンボジアでの1例を最後にWHOでは、根絶認定の作業を開始した。
根絶宣言を間近にした西太平洋地域でのポリオ根絶計画は、継続的な我が国の支援と協力を通じてはじめて可能となったこと、被援助国のみならず、支援国、国際機関の間で広く認識され評価されているところである。我が国の政府開発援助による、全国一斉投与用経口ポリオワクチン必要量全量の供与(ラオス、ヴェトナム、カンボジア、モンゴル、パプア・ニューギニア)は、WHOの助言、要請を基に当該国政府との二国間政府協力の形で実施され、全援助機関からの本根絶計画への援助総額の38%を占めている。
ポリオ根絶計画にかかるコールドチェーン用機材及び車両等も、同様に、WHOをはじめ関係国際機関の助言、要請を基に、二国間政府協力の形で援助が行われている。技術支援の面では、国際協力事業団によるプロジェクト方式でのポリオ根絶への技術協力(中国、ラオス)及びポリオ根絶計画のための研修員の本邦諸協力機関への受け入れ、さらには国立感染症研究所において、現在西太平洋地域の基幹試,験機関として地域内各国より送付される便検体よりのポリオウィルス最終同定と各国のウィルス同定施設に対する技術協力が行われている。
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