アジア開発銀行(ADB)及びアジア開発基金(ADF)の概要と実績
- 設立経緯及び根拠・目的
ADBは、ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会、旧称ECAFE)の発案により、アジア・太平洋地域における経済成長及び経済協力を助長し、開発途上国の経済開発に貢献することを目的として1966年に設立された(本部マニラ)。97年末現在で56の国及び地域が加盟しており、日本を含む域内加盟国数は40ヵ国、域外加盟国数(アメリカ、ヨーロッパ)は16ヵ国となっている。我が国は1966年の設立時に加盟しており、歴代総裁は全て日本人である。現在の総裁(第6代目)は佐藤光夫氏である。なお、近年、中央アジア諸国等からの新規加盟が相次いでおり、体制移行国への支援も強化している。
なお、アジア開発基金(ADF)は、ADB設立協定に規定されている特別基金であり、その原資は加盟国からの資金補充を受けており、ADFの業務はADBが行っている。
- 最近の活動内容
(1)融資額、分野別シェア
開発プロジェクト等の融資財源は、通常資本財源(OCR)とアシア開発基金(ADF)からなり、OCRからの融資は準コマーシャル・ベースで実施されるのに対して、ADFからの融資は低所得国向けにより緩和された条件で実施されている。
96年の融資総額は、OCRが39億ドル、ADFが17億ドル、97年はOCRが78億ドル、ADFが16億ドルであり、アジア通貨危機への対応等を反映して、OCR融資が大幅に増加している。これを分野別(97年)にみると、金融部門が47億ドル(総額比50%)、社会インフラ部門が18億ドル(同19%)、農業部門が10億ドル(同11%)となっており、やはり通貨危機等への対応として金融部門のシェアが大幅に増加している。(2)アジア通貨危機への対応
97年夏以降に発生した、アジアにおける通貨危機の要因としては、脆弱な金融セクター等の構造問題が挙げられており、これらの構造問題に係る改革を支援するために、IMFや世銀と協調して、ADBは、タイ、韓国及びインドネシアに対して総額87億ドルの支援を表明、既に一部は実施済である。また、技術支援として、通貨危機に直面している国々に対して法・規制体系の整備、監督システムの強化、資本市場の整備、金融機関の経営能力の強化等様々な支援を行っている。
(3)ADB研究所の設置
アジアの開発途上諸国それぞれに固有の社会経済情勢に適した開発戦略の探究と開発途上国加盟国の開発事業に携わる機関及び組織の運営管理能力の向上を目的としたADB研究所(Institute)が東京に設置され、97年12月に業務を開始した。
- 我が国との関係
(1)意思決定機構における我が国の位置づけ
最高意思決定機関は、各加盟国の総務により構成される総務会であり、我が国は大蔵大臣が総務に任命されている。また、融資の承認等の日常業務の意思決定は12人の理事(域内国8人、域外国4人)からなる理事会で行われており、我が国からは単独で理事が選出されている。
(2)事務局における邦人職員数
専門職1,956名のうち日本人80名(97年末現在)。
(3)財政負担
97年末現在、通常資本財源(授権資本ベース)471億ドルのうち、我が国の出資額は75億ドル(シェア16.1%)であり、加盟国中第一位。また、アジア開発基金165億ドルのうち我が国の拠出額は64億ドル(シェア39.0%)であり、加盟国中第一位である。
(4)日本特別基金
日本特別基金(Japan Special Fund、1988年に創設)
96年度拠出 約111億円 97年度拠出 約105億円
使途 ① プロジェクトの案件発掘や事業化のための事前調査などプロジェクトの案件形成に対する支援。 ② 開発途上国政府の制度の企画・立案等に対する政策助言の支援。 ③ 我が国研究者との交流の促進や日本を含むアジアの経済発展の経験に関する調査・研究活動の支援。 ④ 開発途上国政府職員等を対象とした研修プログラムの実施など人材育成活動の支援、我が国の人的貢献を支援。 ⑤ その他ADBでは、地域的なプロジェクトへの技術支援も実施しており、例えばメコン河流域開発の関係国間の調整及びインフラ整備や環境面に携わる各国機関の能力強化等にも技術支援を行っている。 (5)我が国のODAとの協調実績
我が国は、ADBにとって最大の二国間の協調融資相手国。1996年、1997年中の我が国機関との協調融資総額はそれぞれ約10億ドルと約8億ドル(両年とも日本輸出入銀行との協調融資を含む)となっている。
また、ADBが行うプロジェクトにおいて我が国の援助機関であるOECF、JICAと協調して行った例としては、以下のようなものがある。
バングラデシュ―ジャムナ橋のアクセス道路プロジェクト(JICAとの協力)
ベトナム―国道1号線橋梁リハビリ事業(OECFとの協調融資)
なお、OECFやJICAとの間で、それぞれ、年に2回協議会を開催しており、ADBと我が国の開発案件の協調・調整を図っている。
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