国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Unlted Natlons High Commissioner for Refugees)の概要と実績


  1. 設立経緯及び根拠・目的

    (1)1949年12月3日、第4回国連総会は、国際難民機関(IRO)解消後の難民の国際的保護に対する国連の責任を認め、国連難民高等弁務官事務所の設置を決定した(決議319A(4)。1950年12月14日、第5回国連総会は「国連難民高等弁務官事務所」規定を採択(42(V))し、同事務所は翌1951年1月1日より活動を開始し、1952年7月IROから事務引継を完了した。当初3年間であった事務所のマンデートは、1953年第8回国連総会決議を踏まえ、1954年以降5年ずつ延長され、1997年第52回国連総会決議により現在のマンデートは2003年末まで延長された。
    (2)高等弁務官は、その権限の範囲にある難民に対して国連の権威の下に国際的保護を提供し、これら難民の自主帰還又は新しい国家社会への同化(第3国定住、現地定住)を促進することによって難民問題の恒久的解決を図るとともに、緊急時には難民に対して法的、物的両面での保護・救済を与えることを目的とする。また、難民の保護に備え、国際条約(1951年の難民の地位に関する条約、1967年の地位に関する議定書等)の締結及び国際条約の批准(加入)の促進等を実施する。

  2. 最近の活動内容

    (1)UNHCRの従来の活動は、国家間の戦争や、政治的迫害によって国境を越えて避難した難民を保護し、援助することに重点が置かれていた。しかし、近年は、頻繁に発生する紛争に起因する難民の増加に加え、国連総会や国連事務総長の要請に応え、難民のみならず国内避難民や紛争被災民にまで援助の対象を拡大する傾向にあり、97年の支援の対象者数は、約2,300万人となっている。
    (2)近年のUNHCRの活動は、ルワンダ及びブルンディ難民を含む大湖地域を擁するアフリカ地域、アジア地域、旧ユーゴー地域を中心とする欧州地域、南北アメリカ地域及びオセアニア地域と世界全体に及んでいる。
    (3)アフリカ地域では、94年の内戦激化により近隣国に流出した200万人を越えるルワンダ及びブルンディ難民の大半は96年末に自国に帰還したが、今だに大湖地域周辺国には、約70万人近い難民が滞留しており、UNHCRはこのような自国を離れ悲惨な生活を強いられている難民に対する人道援助及び保護を中心として活動を実施している。その他、アフリカでは、アフリカの角地域、リベリア、アンゴラ、マリ等における難民問題に取り組んいる。
    (4)アジア地域では、UNHCRは関係周辺国と協力し、70年代以降日本となじみの深いインドシナ難民問題の解決を目的とした包括的行動計画を実施し、同計画が96年に終了したことに伴い、同問題は収束する傾向にある。ミャンマー難民問題も収束の方向にある一方で、スリ・ランカ、ネパール及びアフガニスタンにおける難民・国内避難民問題については、UNHCRは引き続き人道的な支援を継続している。97年には、カンボディアにおける武力衝突によりタイ国境に避難した難民の支援・保護を実施している。
    (5)欧州では、91年に勃発した旧ユーゴー紛争期間中から、UNHCRは人道援助の中心的な機関として400万人とも言われる難民・国内避難民・紛争被災民に対して人道支援を実施してきた。95年のデイトン和平後、UNHCRの活動は緊急的な人道支援から徐々に難民の帰還・再統合支援に移行しつつある。また、旧ソ連地域では2,500万人にのぼる在外ロシア人、難民、国内避難民等が存在しており、CIS諸国情勢の不安定化を予防的に対応するとの観点から、UNHCRは、95年5月、欧州安全保障協力機構等と協力の上、CIS諸国等の人口移動等に関する地域会議を開催し、引き続き問題解決に向けたフォローを行っている。
    (6)近年のUNHCRの活動は、従来の難民の受け人れ国のおける活動から、旧ユーゴー地域及び96年の旧ザイール東部における活動のように紛争下における活動の機会の増加に伴い、職員の安全確保が大きな問題となっている。特に、旧ユーゴー地域における活動では13人のUNHCR関連職員が命を落とした。

  3. 我が国との関係

    (1)我が国は、1979年以降、UNHCRの活動計画・予算や政策を討議・承認する計画執行委員会(53カ国から構成)のメンバーになっている。
    (2)UNHCRのへッドは、初のアジア出身で女性の緒方貞子氏である。UNHCRに勤務する邦人職員(一般職員及びJPOを含む)数は、62名(98年2月現在)であり、近年増加する傾向にある。
    (3)我が国のUNHCRに対する資金協力は、96年(暦年)は約1.31億ドル、97年(暦年)は約1.16億ドルであり、91年以降ドナー各国中第2位となっている。
    (4)人道支援の現場では、UNHCRと協力するNGOの活動が不可欠であるが、近年アフリカの大湖地域及び旧ユーゴー地域等においてUNHCRと協力の上で活動する日本のNGOの計画数は、増加する傾向にある。

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