国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations.)の概要と実績


  1. 設立経緯及び根拠・目的

    FAOは、1943年に開催された連合国食糧農業会議で、食糧・農業に関する恒久的機関として設置が決定され、45年、FAO憲章署名のため及びFAO第1回総会開催のための連合国代表会議で、連合国34カ国の署名によりFAO憲章が発効した。
    人類の栄養及び生活水準を向上し、食糧及び農産物の生産、流通及び農村住民の生活条件を改善し、もって拡大する世界経済に寄与し、人類を飢餓から開放することを目的として活動しており、98年1月現在で175カ国及びECが加盟、我が国は1951年に加盟をしている。
    FAOは各加盟国の代表により構成され、2年に1度開催される総会を最高意思決定機関としており、総会で選出された49の理事国で構成される理事会が、総会会期以外の期間において、その執行機関として総会に代わって行動するほか、総会に付託する必要のない事項についての決定などを行う仕組みとなっている。

  2. 最近の活動内容

    FAOの機能を大きく分けると、①食糧・農業に関する国際的な検討の場の提供、②世界の農林水産物に関する情報の収集・分析及び提供、③開発途上国に対する政策的支援、技術協力の実施、であり、最近では、96年11月に開催された「世界食糧サミット」の成果を受けた取り組みを中心に活動を実施している。なお、97年11月に開催された第29回総会では、98―99年の事業計画予算が決定されたほか、世界食糧サミットのフォローアップの取り組み、国際植物防疫条約の改正等につき議論が行われた。最近の主な活動例は以下のとおり。

    〇世界食糧サミット

    21世紀に向けて、食糧・農業及び食糧安全保障の重要性に関する世界的認識を高めるとともに、飢餓と栄養不良の撲滅及び世界の食糧安全保障の達成を目的とし、186カ国から首脳レベルが出席(我が国からは藤本農林水産大臣(当時)、小倉外務審議官(当時)他が出席)のもと、FAOが中心となって96年11月にローマで開催された。世界食糧サミットでは、2015年までに栄養不足人口を半減させるなどの具体的目標を定めた「ローマ宣言」及び「行動計画」が採択され、FAO、各国政府及び国際機関は現在世界食糧サミットの成果の実現に向けた活動を進めている。

    〇「全ての人に食糧を」運動(Food for All Campalgn)

    世界食糧サミットでの合意をもとにFAOが展開しているキャンペーン。食糧安全保障の達成のための世論への働きかけ、各国政府、NGO、市民社会等との意見交換など世界食糧サミットフォローアップ活動において重要な役割を持ち、NGO等と強く連携して実施。この一環として、マス・メディア等によって広く募金等を呼びかける「テレフード」を企画し、低所得食糧不足国における持続可能な食糧増産のための事業の拡充・強化を図ることとしている。

  3. 我が国との関係

    (1)意思決定機構における我が国の位置づけ

    我が国は65年以降現在まで理事国を務めており、昨年行われた第29回総会においても再選された(任期は2000年12月まで)。また、FAOの事業計画年等を審議するための理事会直属の計画委員会(11ケ国で構成)の委員に選出されるともに、世界食糧サミットのフォローアップや食糧安全保障に関する議論を適切に誘導するための世界食糧安全保障委員会のビューローメンバー(5ケ国で構成)にも選出されているなど、重要な役割を担っている。

    (2)事務局における邦人職員

    FAOには、98年1月現在で約3,600(専門職約1,400、一般職約2,200)のポストがあるが、邦人職員は32名(準専門家も含む)。邦人職員の最高位は水産局長の林司宣氏。なお、97年10月、FAO日本事務所が横浜市に開設され、初代所長に高橋梯二氏が就任した。

    (3)財政負担

    96―97年の通常予算は6億5千万ドル。このうち我が国の分担金は、96年が分担率16.60%で53,037千ドル、97年が分担率16.77%で53,580千ドルで何れも米国(分担率25%)に次いで第2位の拠出国となっている。また、このほかにFAOが行うフィールド・プロジェクト(96年は15件)等への任意拠出を行っている(96年は約6百万ドル)。

    (4)我が国ODAにおける位置付け

    食糧・農業問題は、環境問題、人口問題等とともに、21世紀に向けて積極的に取り組むべき地球規模の課題の一つであり、我が国としても開発途上国の自助努力による食糧増産への取り組みや持続可能な農業・農村開発を支援するため各種の技術協力や賓金協力に努めることとしており、この方針の下、FAOの優れた技術・情報・組織力が開発途上国の発展に寄与できるよう食糧・農業問題に関する議論に積極的に参加し、我が国の考えを反映させることとしている。
    また、我が国の農林水産分野の国際協力の方針に合致し、FAOの有する機能、技術が利用できるFAOフィールドプロジェクトに対し資金的・人的支援を行っており、我が国の農林水産分野における一貫した国際協力の推進に資するため、FAOフィールドプロジェクトによる成果や獲得されたノウハウの二国間協カへの活用等の検討が行われており、我が国拠出事業である「中南米西部諸国等土壌浸食対策調査(平成3年~6年)」の成果を受けたJICA事業の実施や「パキスタンかんがい開発事業(平成5年~9年)」とJICA事業との協調実施等、二国間協力との連携も図られている。


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