災害援助等協力事業の概要と実績


  1. 設立経緯及び根拠・目的

    (1)経緯

    1979年10月、カンボディア内戦の激化により、150万人に上る大量の難民がタイ領に流出した際、欧米諸国はいち早くタイ国境に医療チームを派遣、救援活動を開始した。
    これに対し我が国は、政府にも民間にもこのような事態に即応できる体制がなかったため、政府は同年12月になって急造の医療チームを編成、派遣したが、欧米諸国に比し著しく対応が遅れ反省点を残すこととなった。
    この経験から、政府及び民間の医療関係者の間で、開発途上国で大規模な災害が発生した場合に、直ちに医療関係者の出動を可能とする体制の整備について検討を重ね、その結果、82年3月5日、櫻内外務大臣(当時)が閣議において、医師、看護婦などの有志の方々を予め登録しておくことにより、速やかに医療チームを編成し、被災地に派遣することを内容とする国際緊急医療体制を発足する旨発言、これにより国際救急医療チームが発足することとなった。
    発足後、同チームは世界各地の災害現場に派遣され、精力的な活動を行ったが、85年9月の死者数7千人というメキシコ大地震に際し、他国が救助チームを含む総合的なチームを派遣して効果を上げたことから、我が国もこのような体制を構築する必要性が指摘されるに至った。
    このため、政府は国際緊急援助体制の更なる整備、充実を図る方針を固め、85年12月27日、安倍外務大臣(当時)が閣議において、すでに活動中の医療チームに加え、関係省庁の幅広い協力を得て、新たに救助チーム及び専門家チームを創設し、これらを総称して「国際緊急援助隊」とする旨発言し、翌86年4月から国際緊急援助隊が発足、併せて国際協力事業団(JICA)交付金に新たに(項)災害援助等協力事業費10億円が計上された(平成9年度は13億円を計上)。
    さらに87年9月16日には、国際緊急援助隊を被災国に派遣するに当たっての根拠及び手続きを明確にし、派遣体制を一層整備することを目的として、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が施行された。また、同法附則2条による国際協力事業団法の改正により、緊急援助物資の備蓄・供与についても、その法的根拠が明確化された。また、国際緊急援助活動への自衛隊の参加を可能とし、その能力を活用するとともに、自衛隊及び海上保安庁の輸送能力を活用し、もって体制の一層の充実を図るとの観点から、92年6月19日、同法の改正法が施行された。

    (2)根拠

    国際緊急援助隊の派遣については、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」、緊急援助物資の供与については「国際協力事業団法」第21条四の二.ハを根拠として実施している。

    (3)目的

    海外の地域、特に開発途上地域における大規模な災害に対し、被災国政府または国際機関の要請に応じ、国際緊急援助隊の派遣及び緊急援助物資の供与を行い、国際協力の推進に寄与すること。

  2. 最近の活動内容

    (1)国際緊急援助隊の派遣

    国際緊急援助隊は、1987年9月の国際緊急援助隊法施行から現在(98年2月)までに、39チーム、延べ455名が世界各地の災害に派遣されている。最近の例としては、97年9月のインドネシアの森林火災及びマレイシアの煙害に対し、それぞれ消防専門家、医師、大気汚染専門家等から成る専門家チームを派遣した。また、同年10月にはシンガポール沖のタンカー衝突事故による油流出事故に対し、油防除の専門家チームを派遣した。更に、同年10月にはインドネシアの森林火災に対し、第2次専門家チームを派遣し、わが国から輸送したへリコプター2機を使用して大災現場におけるモニタリング活動を実施した。

    (2)緊急援助物資の供与

    97年度における緊急援助物資の供与件数は19件(98年3月現在)となっている。97年度の実績のうち主な案件は以下の通り。

    97年5月イラン地震災害テント、毛布、懐中電灯等
    10月メキシコ・ハリケーン災害毛布、医薬品・医療資材
    11月ヴィエトナム台風災害医薬品・医療資材
    98年1月中国地震災害テント、毛布、発電機、浄水器等
    1月ぺルー洪水災害テント、毛布、スリーピングマット等

    (なお、海外の地域における大規模な災害に対し、我が国は、国際緊急援助隊の派遣、緊急援助物資の供与の他、緊急無償資金の供与(「緊急無償の概要と実績」の項参照)を実施している。)

緊急援助実績(1997年度)
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注:援助額合計の金額は、物資購入費、輸送費を合計したもの。

緊急援助実績(1996年度)

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注:援助額合計の金額は、物資購入費、輸送費を合計したもの。


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