国際協力事業団(JICA)の概要と実績
- 設立経緯及ひ根拠・目的
(1)経緯
国際協力事業団(Japan International Cooperation Agencyo以下「JICA」)は、政府間の約束に基づき行われる技術協力等を実施するための特殊法人として国際協力事業団法に基づき、昭和49年8月1日に設立された。JICAは、政府の定める方針の下、技術協力事業(研修員受入事業、青年招聘事業、専門家派遣事業、青年海外協力隊派遣事業、プロジェクト方式技術協力事業、開発調査事業、援助効率促進事業)、無償資金協力事業の実施促進、開発協力事業等を実施している。
(2)根拠
国際協力事業団法
(3)目的
技術協力の実施、無償資金協力の実施の促進等の業務を行い、開発途上地域等の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とする。
- 最近の活動内容(事業ごとの概要説明も参照のこと)
(1)活動の概要
(イ) 技術協力は、開発途上国の国造りの基礎となる「人造り」を目的とする援助であり、日本の技術や知見を相手国の当該分野で指導的な役割を担う人々(技術協力の「カウンターパート」に伝え、カウンターパートを通じてその技術が当該開発途上国の国内に広く普及し、その経済・社会発展に寄与するものである。現在、技術協力は、医療・飲料水の確保等の基礎生活分野からコンピュータ技術や法律・制度の整備等の高度な協力まで幅広い分野に及んでいる。JICAは、我が国の国別援助方針に従い、当該国の総合的な開発計画を重視し、その事業は当該国との対話に基づき、その国の開発の重点課題や優先順位、更には期待される成果等を十分念頭において行われている。 (ロ) また、JICAは、上記の他、無償資金協力の実施促進に係る事業を行い、我が国無償資金協力の効果的・効率的実施に貢献している他、海外で大規模な自然災害が発生した場合の援助である国際緊急援助等の業務を行っている。 (2)成果
例えば、技術協力については、JICAは、平成10年3月末までに、開発途上国に技術協力専門家、青年海外協力隊員など累計約20万人を派遣して現地の人材育成を行うとともに、開発途上国から累計約16万人の行政官や技術者を受入れ、技術研修を行っている。技術協力の成果は、国造りの最前線で活躍している開発途上国の現職閣僚約30人が、JICAの研修修了者ということにも表れている。
(3)最近の主な動き
我が国のODAが国際社会からの期待に一層応え、より効果的・効率的に実施されることが求められる中、JICAを通じた事業についても、様々な取り組みが行われている。
- (イ)より効果的・効率的な技術協力の実施
技術協力をより効果的・効率的に実施するために、JICA事業においては、「入口」(調査)、「実施段階」(監理)及び「出口」(評価・フォローアップ)の強化のための努力が重ねられている。具体的には、真の援助需要を見極めるための情報収集、相手国との密接な対話等の「入口」段階での事業の拡充、及び実施済の案件の協力効果について評価を行い、これを将来の事業実施にフィードバックする「出口」段階での事業の拡充を図ってきている。また、異なるスキームを適切に組み合わせて協力の効果を一層上げるため、有償資金協力や無償資金協力と技術協力との連携強化(例えば、資金協力により供与された施設・機材等の運営・維持管理に係る技術的支援を行うこと等)に努めている。
(ロ)より多様なニーズに即した援助
(i) JICAを通じて実施する技術協力は、医療・飲料水の確保等の基礎生活分野からコンピュータ技術や法律・制度の整備等の高度な協力まで幅広い分野に及んでいる。特に近年は、法律・制度の整備や経済政策・産業政策の運営等に係るいわゆる知的支援の分野におけるニーズが高まっている。このようなニーズの高まりに応えるべく、JICA事業においては、開発途上国政府の政策中枢において国家計画策定を担当する大臣、次官、局長等に対して助言を行う政策アドバイザーの派遺や、旧社会主義国を対象として、旧政治体制からの脱却と市場経済化のための知的支援を行う「重要政策中枢支援協力」等を積極的に実施している。例えば、ヴィエトナムにおいては、市場経済化のための法整備を必要としているが、我が国は平成8年から「重要政策中枢支援」の下、我が国の専門家グループが民法、商法等の法律制定や法律執行手続につき助言を行っている他、平成9年には、アフリカ10か国の政府関係者を我が国に招聰して、「民主化研究セミナー」を実施している。
また、平成9年半ばに顕在化した一部アジア諸国の通貨・金融危機に対し、我が国は関係国・機関とも連携を図りつつ、問題の解決に向け積極的に貢献してきているが、このような取り組みの1つである「日・ASEAN総合人材育成プログラム」を通じた経済・産業の持続的発展のために必要な人材育成についてもJICAを通じた事業等により積極的に取り組んでいる。(ii) また、平成8年5月に経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)上級会合で採択されたいわゆる「DAC新開発戦略」において貫かれている「人間中心の開発」の理念を実現すべく、JICAを通じた事業は、貧困撲滅、福祉(医療・保健を含む)、教育、途上国の女性支援や地球規模問題(環境、人口・エイズ等)への取り組みにも、積極的に活用されている。例えば、母と子供のための健康対策、WID・貧困分野の研修員受入等を積極的に実施する他、環境問題については、平成9年12月の京都会議(気候変動枠組み条約第3回締約国会議)で発表された「京都イニシアティブ」において、温暖化対策のため我が国は5年間で3000人の人材を育成する考えを表明した。 (iii) さらに、新興援助国による協力の実施を支援し、援助の裾野を広げる観点から、我が国は、JICAを通じた事業を活用し、南南協力支援にも積極的に取り組んでいる。「第三国研修」は、我が国が行った技術協力の再移転を目的として周辺諸国等の研修員を招聘して開発途上国で実施する研修であるが、平成9年度においては、22ケ国において104コースを実施した。
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