ペルー(国別援助方針)
CEC:Commission of the European Communities(EC委員会)
- 基本方針
(1)我が国の援助対象国としての位置付け
(イ) ペルーは我が国と伝統的友好関係にあり、約10万人の日系・在留邦人が存在すること、 (ロ) 90年代以降の経済構造調整政策による経済安定化の達成、経済の持続的成長や民生の向上のための開発需要が大きいこと、 (ハ) 具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のためのオーナーシップ(自助努力)を発揮しているペルーの開発政策は、DAC新開発戦略の趣旨にも合致し、ペルーにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援していく条件があること、 等を踏まえ、援助を実施する。
ペルーは日本の二国間援助実績(97年までの支出純額累計)において第16位(中南米地域で第1位)の受取り国であり、近年も両国の首脳が頻繁に相互訪問するなど、二国間関係は一層緊密化している。(2)我が国の援助の重点分野
我が国は、ペルーにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び98年2月に派遣した経済協力総合調査団等によるペルー側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
- (イ)貧困対策
基礎的生活基盤整備は、今後とも上下水道整備支援を中心とした協力を推進する。都市と地方の所得格差是正や農村開発については、農業生産のインフラ・生産方法の近代化支援が重要であり、当面資金協力を通じた給水、小規模灌漑に係わるインフラ整備等の協力や零細農民への資金貸付等の協力を検討する。また、非合法なコカ栽培に対する代替作物の栽培については、日米コモンアジェンダの観点からも引き続き協力を行う。
(ロ)社会セクター支援
初等教育就学率、識字率ともに都市・農村間及び男女間の格差が大きいこと等を踏まえ、現職教員の再訓練・研修、教材・教育機材整備等を支援する。妊産婦及び幼児の死亡率が高いことから、母子保健、家族計画の推進とともに、保健・医療施設への機材供与や医療従事者の育成に関する協力を重視する。
(ハ)経済インフラ整備
運輸(道路、空港、港湾)、電力、通信・放送等の経済インフラ整備は、地方への対応も念頭に置きつつ積極的に協力する。また、農林水産業の体質強化・改善、輸出の主要な担い手である鉱山開発及び石油・天然ガス等エネルギー開発が重要であるとともに、新しい分野として観光開発も重視していく。
(ニ)環境保全
ペルーでは94年12月に国家環境審議会が設立され、一元的な環境行政が動き出したところである。持続可能な開発を進める上で環境保全は不可欠であり、我が国はISD構想(21世紀に向けた環境開発支援構想)に基づき、大気・水質汚染対策及び廃棄物処理、産業公害対策等の公害問題対策や温暖化等の地球環境問題対策を中心とした支援を進める。また、ペルーにおいて、エル・ニーニョ現象への協力の検討が必要である。
(3)留意点
- ペルーにおいては、91年の我が国援助関係者殺害事件や96年~97年の日本大使公邸占拠事件等に見られるようなテロ活動に援助関係者が巻き込まれている。援助関係者が派遣される場合は、その安全確保に最大限の注意を払うことが必要であり、一般治安に加え、特に留意することが必要である。
- ペルーの最優先課題として貧困対策が重視されていることを踏まえ、その自助努力に対する援助を効果的・効率的に実施していくことが重要である。
- ペルーは所得水準が比較的高いことから、今後、貧困対策、社会セクター支援及び環境保全といった重点分野における優良案件を従来以上に精選しつつ、経済協力を実施していくことが重要である。
(4)ODA大綱の運用状況
91年1月に発生したエクアドルとの国境紛争は、リオ議定書保証国(米、ブラジル、チリ、アルゼンティン)の仲介により沈静化し、合意された作業日程に従って、包括的平和解決の見通しが見え始めている。ペルーの更なる発展には、不必要な軍事支出を避ける観点から、事態は望ましい方向に推移している。
- ペルー経済の現状と課題
(1)主要経済指標
一人当たりGNP (96年)と同成長率
(90-96年平均)実質GDP成長率 2,420ドル、4.8%
(世銀資料)91年2.9%、92年▲1.8%、93年6.4%、94年13.1%、95年7.2%、96年2.6%
(IMF資料)(2)現状
自由市場経済体制を指向した経済構造調整政策の推進により、近年は安定した経済成長を維持し、自由化により一時増大した貿易赤字も縮小傾向にある。行政改革にも取り組み、財政赤字の幅も対GNP比で半減している。
(3)課題
- 経常収支赤字の削減
- 対外債務状況の改善
- 投資環境の整備(硬直的な労働市場、法人税、資本コストの高さ、経済インフラ未整備による輸送問題等)
- 輸出競争力の強化(輸出額:2000年まで平均10%増)
- 所得分配と貧困対策
- 雇用創出(零細企業支援、農業振興等)
- 開発計画
現在は、総合的な開発計画はなく、いくつかの分野につき個別に計画を策定している。政府の最重要課題である貧困対策については、96年6月に「1996-2000年の貧困対策集中戦略」を発表している。
- 最貧困人口を95年時の450万人から、2000年に半減させる
- 援助実績
(1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)
有償 無償 技協 合計 供与先順位 97年(暦年) 11 16 11 38 36位 97年(暦年)までの累計 703 307 269 1,279 16位 (2)DAC諸国からの実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)
二国間総額 1位 2位 3位 278 日本 56 米国 51 ドイツ 42 (3)国際機関のODA実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)
国際機関総額 1位 2位 3位 132 UNDP 81 CEC 37 UNICEF 8
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