エル・サルヴァドル(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)エル・サルヴァドルを含む中米地域の安定は、中南米の平和と安定等にとり重要であること、
    (ロ)エル・サルヴァドルは、内戦終結後和平プロセスが順調に履行され民主主義の定着、市場指向型経済の導入に努め、多くの援助需要を有していること、
    (ハ)我が国の経済協力は、エル・サルヴァドルにおいて高い評価を得ており、伝統的な親日国であることに加え、エル・サルヴァドルが国連等の国際場裡において信頼できるパートナーとなっていること、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、我が国の対エル・サルヴァドル援助実績は内戦終結後の91年度から大幅に拡大しており、エル・サルヴァドルに対する援助国として日本は第2位(96年)である。また、エル・サルヴァドルは、我が国の二国間援助実績(97年までの支出純額累計)において第52位(中南米地域において第12位)である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、エル・サルヴァドルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年12月に派遣した経済協力総合調査団等におけるエル・サルヴァドル側との政策対話を踏まえ、以下を援助の重点項目としている。

    (イ)生産部門活性化に資する分野(運輸・交通、農業生産基盤、エネルギー関連)

     エル・サルヴァドルでは、経済発展の潜在能力が大きいので生産部門の活性化に資する支援として、経済インフラの整備及び人造り・技術移転が重要である。

    (ロ)社会開発分野(教育、保健・医療)

     エル・サルヴァドルは人口に対し国土が狭く資源も乏しいため人的開発が不可欠であり、初等教育の充実、教員の養成が急務である。また、社会的弱者、貧困層を対象とした地域医療サービス分野に力を注ぐ。

    (ハ)環境(上下水道、廃棄物処理)

     持続的な経済開発のためには開発と環境の両立が不可欠との観点から、水資源の有効利用や全国的に深刻な問題となっている汚濁水の処理、大都市の産業廃棄物への協力が重要である。

    (ニ)民主化・経済安定化支援

     我が国は、エル・サルヴァドルに対し民主化と経済安定化のための直接的な支援を行ってきたが、今後とも、NGO活動の重要性をも念頭においた草の根無償の活用及びコモン・アジェンダの下での日米協力等による協力を継続していく。

    (3)留意点

    • エル・サルヴァドルに対しては、内戦終結後の緊急支援からその後の復興支援へと段階的に援助が強化された一方、同国の経済発展による所得水準の向上を反映し、今後は無償資金協力から有償資金協力、技術協力を中心とした経済協力形態に重点を移行していく。
    • 内戦による経済、社会インフラの荒廃が著しいことを踏まえつつ、援助分野の優先度を検討する必要がある。
    • 実施体制の強化等、援助の受入れ能力の向上が必要である。

  2. エル・サルヴァドル経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (96年)と同成長率
    (90-96年平均)
    実質GDP成長率
    1,700ドル、3.5%
    (世銀資料)
    91年3.6%、92年7.5%、93年7.9%、94年5.6%、95年4.1%、96年25.4%
    (IMF資料)

    (2)現状

     前政権は和平以前から自由化を進め、経済活性化に成功しており、マクロ経済も安定している。特に、内戦終結後は戦後の復興需要や直接投資の増加等により順調な経済成長を続けている。

    (3)課題

    • 良好なマクロ経済の維持(インフレ率抑制、財政赤字を一層緊縮、国内貯蓄の増強等)
    • 所得格差の是正、貧困対策、地方開発
    • 輸出の促進と工業再編成
    • 世界経済への参加促進と地域経済統合
    • 経済成長と環境保護の調和
    • 国家諸機構・法制度の一層の近代化

  3. 開発計画

    経済社会開発計画(1994~1999年)

    (目標)

    • これまでの経済安定化のための努力を継続し、構造改革をさらに深化させ、経済の国際競争力を強化し、雇用の創出を図る。

    (主要な政策)

    (1)マクロ経済・財政・金融対外開放に備えた国内経済の体制強化、輸出促進、外国投資誘致のための体制整備、徴税機能の強化、財政支出コントロールの強化、生産活動の成長と物価安定に見合う流動性の維持、金融セクターの競争力及び能率強化等
    (2)社会開発基礎教育の就学率を高める(93年の69.2%から99年に79.1%へ)、農村部での文盲率の低下、幼児・妊産婦の健康維持・罹病対策、農村部・都市部周辺の居住環境の改善、上下水道普及率の向上、小規模企業の振興等
    (3)経済開発インフラ電力サービスの品質及び信頼性の向上、電気通信への民間企業参入奨励、都市及び都市間交通網整備、港湾の近代化、農業の多角化・生産性向上等

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    97年(暦年)3523116819位
    97年(暦年)までの累計851603427952位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    229米国 74日本 70ドイツ 37

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    88CEC 30IDB 27UNDP 18
CEC:Commission of the European Communities(EC委員会)

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