(5)様々な担い手との連携

日本は、民間企業、非政府組織(NGO)、大学、地方自治体、国際機関や他の援助国とも連携しながら国際協力を行っています。

NGOとの連携

近年、NGOは開発、環境、人権、貿易、軍縮など、主要な外交分野における政策についての提言などを通じて、国際社会で重要な役割を果たしています。日本のNGOは、開発途上国において教育、保健・医療、農村開発、難民支援、地雷処理など様々な分野で質の高い開発協力活動を実施しています。また、地震などの自然災害や紛争の現場でいち早く人道支援活動を展開しています。政府では手の届きにくい草の根レベルで活動するNGOは、地域に密着し、住民のニーズにきめ細かく対応することが可能であり、日本の「顔の見える援助」の実現にもつながっていると考えています。日本は、ODA大綱をはじめとする各種の政策においてNGOとの連携を進めることを掲げ、NGOの開発協力活動への資金面での協力、能力強化への支援、協議の機会を多くするなど、様々な連携策を実施しています。

アフガニスタン・バーミヤン州で、就学前教育の一環で、バランス遊びをする子どもたち(写真:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

アフガニスタン・バーミヤン州で、就学前教育の一環で、バランス遊びをする子どもたち(写真:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

ア.NGOが行う事業との協力

日本は、NGOが円滑に開発協力活動を実施できるように様々な協力を行っています。たとえば、NGOによる草の根レベルの経済社会開発事業に資金を供与する「日本NGO連携無償資金協力」を通じて、2012年度に45団体が、学校建設、障害者支援、職業訓練、母子保健の改善など計92件の事業を実施しました(直近の5年間で資金協力の規模が倍増しています)。また、2000年にNGO、政府、経済界の連携によって設立された緊急人道支援組織である特定非営利活動法人「ジャパン・プラットフォーム(JPF)」には、2013年9月時点で42のNGOが参加しています。事前に拠出されたODA資金や企業・市民からの寄付金を活用して、大規模な災害が発生したときなどに生活物資の配布、医療支援などを行っています。2012年度には、ハイチ地震、アフリカの角(つの)地域の干ばつ、シリア紛争、南スーダン、スリランカ北部、アフガニスタン・パキスタンにおける人道支援など、31か国において総額約36億円がJPFを通してNGOが実施する事業に使用されました。

JICAの技術協力プロジェクトではNGOを含む民間の団体に委託して実施される場合があり、NGOや大学といった様々な団体の専門性や経験も活用されています。さらに、JICAはNGOや大学、地方自治体などが提案する案件で、開発途上国の地域住民の生活向上に直接役立つ協力活動について、ODAの一環として事業委託する「草の根技術協力事業」を実施しています。2012年度は206件の事業を世界45か国で実施しました。

タジキスタン国内唯一の車いす工房を支援するAAR Japan[難民を助ける会]。女の子(写真中央)は赤い車いすを一目で気に入り、車いすで庭を走り回っているという。手前左は南専門家(写真:AAR Japan)

タジキスタン国内唯一の車いす工房を支援するAAR Japan[難民を助ける会]。女の子(写真中央)は赤い車いすを一目で気に入り、車いすで庭を走り回っているという。手前左は南専門家(写真:AAR Japan)

イ.NGO活動環境の整備

NGO活動へのさらなる支援策として様々な活動環境を整備する事業があります。たとえば「NGO相談員制度」では、外務省の委託を受けた経験豊富なNGO団体が、市民やNGO関係者から寄せられる国際協力活動やNGOの組織運営の方法、開発教育の進め方などに関する質問や相談に対応しています。そのほか、国際協力イベントなどで相談に応じたり、出張して講演を行うサービスを行っており、多くの人がNGOや国際協力活動に対して理解を深める機会をつくるようにしています。また、「企業・個人の視点から見たNGO連携についての意識調査」や「ジェンダーとNGO」などのテーマごとにNGOが自分たちで勉強会やシンポジウムを主催する「NGO研究会」など、NGOが組織を運営する能力や専門性の向上を支援する取組も行っています。

JICAは、NGOスタッフのために様々な研修を行っています。たとえば、国内外で今後活躍するNGOスタッフの人材育成を通じて団体の組織強化を支援する「組織力アップ!NGO人材育成研修」、開発途上国でのプロジェクトの計画・立案・評価手法を習得するためプロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)を活用したプロジェクト運営基礎研修、NGOが国内での広報活動や資金獲得、経理・会計分野の能力等を強化することを目的にこの分野の知識・経験を持つアドバイザーを派遣するNGO組織強化のためのアドバイザー派遣制度、海外においてプロジェクトを効果的に実施するために必要な能力強化の指導を行うアドバイザーを派遣するNGO海外プロジェクト強化のためのアドバイザー派遣制度などを行っています。

ウ.NGOとの対話と連携

1996年以降外務省は、NGOとの対話と連携を進めるため、NGO・外務省定期協議会を開催し、日本の開発協力政策や日本NGO連携無償資金協力などのNGOを対象とした資金協力の制度に関する協議を活発に実施しています。2002年以降は開発途上国で活動する日本のNGOと意見を交換する場として「NGO・在外ODA協議会(通称:ODA・NGO(オダンゴ)協議会)」を開設し、これまでネパールやスリランカをはじめとする34か国で、大使館、援助実施機関、NGO等がODAの効率的・効果的な実施について意見交換を行っています。JICAは、NGOとの対等なパートナーシップに基づき、より効果的な国際協力の実現と、国際協力への市民の理解と参加を促すために、NGO-JICA協議会を開催しています。また、NGOの現地での活動を支援するとともに、NGOとJICAが連携して行う事業の強化を目的として、「NGO-JICAジャパンデスク」を海外21か国に設置しています。

用語解説

草の根技術協力事業
国際協力の意思を持つ日本のNGO、大学、地方自治体および公益法人等の団体による、開発途上国の地域住民を対象とした国際協力活動を、JICAがODAの一環として支援し、共同で実施する事業。
団体の規模や種類に応じて、
草の根パートナー型(事業規模:総額1億円以内、期間:5年以内)
草の根協力支援型(事業規模:総額2,500万円以内、期間:3年以内)
地域提案型(事業規模:総額3,000万円以内、期間:3年以内)
の3つの支援方法がある。
プロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)
PCM手法:開発協力プロジェクトの分析・計画・実施・評価という一連のサイクルを、プロジェクト概要表を用いて運営管理する参加型開発手法で、参加型計画とモニタリング・評価から成る。JICAや国際機関などが開発協力の現場で用いる手法。

民間企業との連携

ア.成長加速化のための官民パートナーシップ

日本の民間企業が開発途上国で様々な事業を行うことは、現地で雇用の機会を創り出し、途上国の税収の増加、貿易投資の拡大、外貨の獲得等に寄与し、日本の優れた技術を移転するなど、多様な成果を開発途上国にもたらすことができます。このような民間企業の開発途上国における活動を推進するために、2008年4月にODA等と日本企業との連携強化のための新たな施策「成長加速化のための官民パートナーシップ」を発表しました。民間企業からの開発途上国の経済成長や、貧困削減に役立つ民間企業の活動とODAとの官民連携案件に関する相談や提案を受け付けています。これまでにこのような官民連携案件を34件認定しています。たとえば、ラオスにおいて日本企業が生薬(しょうやく)栽培事業を行うに当たり、日本NGO連携無償資金協力を活用し、栽培地の不発弾処理を行った事例があります。ほかにも、技術協力を活用し、メキシコから医師団を日本に招き、日本企業の開発した高度な医療技術(心臓カテーテル技術)の移転を行った事例もありました。

また、最近、民間企業が進出先の地域社会が抱える課題の解決に対して積極的に貢献することを目指す企業の社会的責任(CSR)活動や、低所得者層を対象にしたビジネスを通じて、生活の向上や社会的課題の解決への貢献を目指すBOPビジネスが注目されています。これらを、現地のNGOなどと連携して企業が行う場合に、草の根・人間の安全保障無償資金協力や技術協力を活用するなどの取組も行っています。ほかにも、官と民が連携して公共性の高い事業などをより効率的・効果的に行うことを目指すPPPにも取り組み、技術協力による制度整備や人材育成のほか、海外投融資や円借款を活用して、プロジェクトの計画段階から一貫した支援を行っています。

さらに、2011年6月に開催されたミレニアム開発目標(MDGs)フォローアップ会合時に、日本は「MDGs官民連携ネットワーク」の設立を発表しました。日本企業が途上国でビジネスや社会貢献活動を円滑に行えるよう支援するもので、日本企業に対して、途上国の開発ニーズに関する情報提供、国内外のNGO、国際機関、大学などを紹介しネットワークづくりを支援、保健分野やポストMDGsなどのテーマごとのワークショップを開催するなどして、MDGs達成に貢献する日本企業の活動を促進しています。

PPPインフラ事業・BOPビジネス事業の協力準備調査

優れた技術や知識・経験を持ち、海外展開に関心を持つ日本企業の開発への参加を促すため、民間からの提案に基づく2種類の協力準備調査を実施しています。PPPインフラ事業やBOPビジネスの事業化調査のための企画書(プロポーザル)を民間から広く募集し、その提案を行った企業にフィージビリティ調査(実現の可能性を探るための調査)を委託する民間提案型の調査制度です。これまで上下水道や高速道路案件に係る準備調査などのPPPインフラ事業に関しては42件、保健・医療、農業分野におけるBOPビジネスについては76件を選定しました(2013年12月時点)。これにより、開発途上国の開発課題の解決に民間企業の専門的知識、資金、技術等を活用するとともに、民間企業の海外展開を後押ししていきます。

バングラデシュでは、自転車積載型浄水装置を使ったBOPビジネスが展開されている(写真:鈴木革/JICA)

バングラデシュでは、自転車積載型浄水装置を使ったBOPビジネスが展開されている(写真:鈴木革/JICA)

中小企業支援

発展著しい新興国や途上国の経済成長を取り込むことは、日本企業の今後の成長にとって重要な要素となっています。とりわけ、日本の中小企業は世界に誇れる多くの優れた製品・技術を有していますが、人材や知識・経験の不足により多くの企業が海外展開に踏みきれないでいます。一方で、開発途上国においては、こうした日本の中小企業の製品・技術が活用され、その国の経済社会的課題の解決に役立つことも期待されています。このような状況を受け、外務省は、2012年度よりODAを活用して、途上国における日本の中小企業の製品・技術等のニーズ調査、ODA案件化のための調査、ODAによる現地への製品・技術等の普及につながる委託事業を開始しました。これにより途上国の開発課題の解決を図りつつ日本企業の海外展開に貢献することを目指します。そのほか、中小企業が必要とするグローバル人材の育成を支援するため、企業に籍を置いたまま中小企業等の社員を青年海外協力隊やシニア海外ボランティアとして途上国に派遣する「民間連携ボランティア制度」を2012年に創設し、中小企業の途上国における人脈形成を積極的に支援しています。また、経済産業省でも、中小企業の海外展開に必要なグローバル人材の育成に資する取組として、若手人材の海外インターンシップ派遣事業を新たに開始し、2012年11月にはJICA・経済産業省の共催でグローバル人材育成に関するシンポジウムを開催するなど、日本の中小企業の海外展開を支援しています。

海外投融資

途上国での事業はリスクが高いなどの理由により、民間金融機関からの融資が受けにくい状況にあります。そこで、日本はJICA海外投融資によって、途上国において民間企業が実施する開発事業を直接の出資・融資により支援します。海外投融資については、2001年12月に発表された「特殊法人等整理合理化計画」において、基本的に、2001年度末までに承諾された案件以外、出融資を行わないこととなっていました。しかし、民間セクターを通じて開発効果の高い新しい需要に対応する必要性の高まりから、2010年6月に再開が決定され、2011年3月にJICAによる民間企業に対する海外投融資を試行的に再開しました。

その結果、2011年には、パキスタンにおける貧困層向けマイクロファイナンス事業(小規模金融サービス)、ベトナムにおける産業人材育成事業の2件について、政府部内の審査を終了し、2012年10月に本格再開を果たしています。2013年には、ベトナムにおけるロンアン省環境配慮型工業団地関連事業について、本格再開後、初の融資契約を調印しました。

インフラシステム輸出

日本政府は、日本企業によるインフラシステム輸出を支援するとともに、海外経済協力に関する重要事項を議論し、戦略的かつ効率的な実施を図るため、「経協インフラ戦略会議」を開催し、2013年5月には「インフラシステム輸出戦略」をとりまとめました。外務省においても在外公館を通じた情報収集体制を強化し、現地の関係機関や商工会との連絡を強めていくため、2013年6月時点で50か国58の在外公館に計127名の「インフラプロジェクト専門官」を指名しています。また、内閣総理大臣をはじめとする閣僚によるトップセールス(首脳会談時に取り上げるなど)にてインフラ事業を受注するための支援などにも取り組んでいます。

イ.円借款の迅速化

開発途上国の開発を支援するに当たって、官民連携の必要性が広く認識されるようになりました。円借款と民間事業の実施とをより効果が上がるよう組み合わせて、開発効果が速やかに現れるようにすることが求められています。効果的な官民連携を推進する観点からも、民間事業の実施スピードに合わせて、円借款を速く進められるよう一層努力する必要があります。

日本は、借入国側の主体的取組(オーナーシップ)、不正の防止、環境社会への配慮など、説明責任や適正な手続きを確かなものにすることに注意しながら、2007年の「円借款の迅速化について」および2009年の「官民連携推進等のための円借款の迅速化」を踏まえ、2010年7月にも「円借款の迅速化について」を発表しました。早い段階で関心があることを表明するプレ・プレッジを導入したり、現地でのモニタリング(進み具合のチェック)会合の実施国を増やして、問題を早期に発見し、対応策を協議するなどの追加的な措置を定めました。今後もさらなる迅速化を目指し、調達手続きの見直し等を行っていきます。

大学・地方自治体との連携

日本は、より効果的なODAの実施のため、大学や県市町村など地方自治体が蓄積してきた実務的な知識を活用しています。JICAは、大学が持つ専門的な知識を活用し、開発途上国の課題に総合的に取り組めるよう、共同で技術協力の実施や円借款事業を推進しています。また、地方自治体との間でも、日本の地域社会の知識・経験を活かし、ODA事業の質的向上、開発協力を行う人材の育成などについて連携を行い、地方発の海外協力事業がより活発に展開できるよう協力しています。

2013年3月には、政府はJICAの草の根技術協力事業の枠組みを活用し、地域経済活性化特別枠として地方自治体の海外展開と国際協力の取組を効果的に合わせる方針を打ち出しました。

ミャンマーの水道管の現状視察に行く福岡市水道局の松岡JICA専門家とヤンゴン市の上水道担当職員(写真:谷本美加/JICA)

ミャンマーの水道管の現状視察に行く福岡市水道局の松岡JICA専門家とヤンゴン市の上水道担当職員(写真:谷本美加/JICA)

開発途上国の地方自治体・NGOなどとの連携

開発途上国の地方自治体やNGOとの連携は、開発途上国の経済社会の開発だけではなく、現地の市民社会やNGOの強化にもつながります。日本は、主に草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、これら開発協力関係者が実施する経済社会開発事業を支援しています。この資金協力は、学校建設、病院の基礎的医療機材の整備、井戸の掘削など、草の根レベルに直接利益となるきめ細やかで迅速な支援として開発途上国でも高く評価されています。

国際機関や他国との連携

近年、ミレニアム開発目標(MDGs)などの国際的な開発目標を達成するため、開発協力の質の改善を目指し、効果的に開発協力を行うとの観点から、パリ宣言やアクラ行動計画(AAA)、釜山パートナーシップ文書(注2)に基づいて、様々な国や機関、団体が開発協力について協調していこうとしています。現在、多くの協力を受ける側の国において、保健や教育など分野ごとに作業部会が形成され、その国の分野別開発戦略に沿って、プログラム型の支援が実施されています。日本はタンザニアにおける地方行政改革などのプログラムに参加しています。また、バングラデシュにおいては、2005年の世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、英国国際開発省(DFID)と同国の貧困削減戦略を支援するための共通戦略パートナーシップを経て、2010年6月には18の国際機関が参加して共同支援戦略(JCS)が決定されており、分野横断的に(保健、教育などの分野を越えて横のつながりを持ち)、より効果的、効率的な開発協力を実施するための協調・連携を進めています。また、国際開発金融機関(MDBs)との具体的な協力として、2005年には、アフリカ開発銀行(AfDB)との間で、エプサ(EPSA:アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ)を立ち上げ、アフリカの民間セクターに対する円滑な資金供給や、道路や電力整備等を通じた民間投資促進を図るため、これまでに10億ドルを超える円借款を供与してきました。2012年のG8キャンプ・デービッド・サミット(米国)においては、同イニシアティブの下、新たに10億ドルの円借款を供与することを表明しました。さらに、2012年には、米州開発銀行との間でも、省エネ・再生可能エネルギー分野における協調融資枠組みとしてコア(CORE)を立ち上げており、5年で最大3億ドルの協力を行う考えです。

最近では、日本国内に本部のある国際機関との協力・連携も積極的に進めています。さらに、多国間協力(マルチ)と二国間協力(バイ)の両方の効果的な連携を目指した取組も進めています。国際的な開発協力の流れを二国間の援助政策へ活かし、日本に比較優位のある二国間援助の方法を援助受入国内および国際社会において中心的な流れにすることを目的としたこのような試みは、日本の開発協力の効果を向上させることに役立つものです。

これまで国際社会では、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC(ダック))の加盟国が中心となって開発協力を行ってきましたが、近年、中国、インド、サウジアラビア、ブラジルなど、DAC加盟国以外の新興ドナー(援助国)と呼ばれる国々が、開発途上国の開発課題に対し大きな影響力を持つようになっています。G20の枠組みにおいても、開発課題につき先進国のみならず新興国・途上国を交えた形で協議が行われるようになったこともこの現れです。新興ドナーが国際的な取組と調和した開発協力を行うよう、日本は様々な会合への新興ドナーの参加を促し、話し合いを進めています。たとえば、2011年11月には韓国・釜山で「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム(閣僚級会合)」が開催され、日本を含むDAC加盟国、新興ドナー、民間セクター等が連携して世界の課題を解決するための新たな協力の枠組み(グローバル・パートナーシップ)を構築できたことは大きな進展であるといえます。また、2013年3月には、ジャカルタで「第4回アジア開発フォーラム」を開催し、アジアの経験を踏まえた開発協力のあり方について議論を深めました。

用語解説

BOPビジネス(BOP:Base Of the Pyramid)
途上国の低所得層※を対象にした社会的な課題解決に役立つことが期待されるビジネス。低所得層は約40億人、世界人口の約7割を占めるともいわれ、潜在的な成長市場として注目されている。低所得者層を消費者、生産者、販売者とすることで、持続可能な、現地における様々な社会的課題の解決に役立つことが期待される。
事例:洗剤やシャンプーなどの衛生商品、水質浄化剤、栄養食品、防虫剤を練り込んだ蚊帳、浄水装置、太陽光発電など。
※ 低所得層: 1人当たりの年間所得が購買力平価で3,000ドル以下の層。購買力平価とは物価水準の差を除去することによって、異なる通貨の購買力を等しくしたもの。
ODAを活用した官民連携(PPP:Public-Private Partnership)
官によるODA事業と民による投資事業などが連携して行う新しい官民協力の方法。民間企業の意見をODAの案件形成の段階から取り入れて、たとえば、基礎インフラはODAで整備し、投資や運営・維持管理は民間で行うといったように、官民で役割分担し、民間の技術や知識・経験、資金を活用し、開発効率の向上とともにより効率的・効果的な事業の実施を目指す。PPPの分野事例:上下水道、空港建設、高速道路、鉄道など。
フィージビリティ調査
立案されたプロジェクトが実行(実現)可能かどうか、検証し、実施する上で最適なプロジェクトを計画・策定すること。プロジェクトがどんな可能性を持つか、適切であるか、投資効果について調査する。
民間連携ボランティア制度
中小企業等の社員を青年海外協力隊やシニア海外ボランティアとして開発途上国に派遣し、企業のグローバル人材の育成や海外事業展開にも貢献するもの。民間企業の要望に応じ、派遣国、職種、派遣期間等を相談しながら決定する。事業展開を検討している国へ派遣し、活動を通じて、文化、商習慣、技術レベル等を把握したり、語学のみならず、コミュニケーション能力や問題解決力、交渉力などが身に付き、帰国後に企業活動に還元されることが期待される。
JICA海外投融資
JICAが行う有償資金協力で、日本の民間企業が途上国で実施する開発事業に対し、必要な資金を出資・融資するもの。民間企業の開発途上国での事業は、雇用を創出し経済の活性化につながるが、様々なリスクがあり高い収益が望めないことも多いため、民間の金融機関から十分な資金が得られないことがある。海外投融資は、そのような事業に出資・融資することにより、開発途上地域の開発を支援するもの。支援対象分野は(1)MDGs・貧困削減、(2)インフラ・成長加速化、(3)気候変動対策。円借款が途上国政府に行う経済協力であるのに対して、海外投融資は、日本の民間企業が途上国の民間企業と行う活動に対し支援を行うことを通じて開発に貢献するもの。
インフラシステム輸出
海外の電力、鉄道、水、道路事業などのインフラ需要に対して、日本企業が施設建設・機器輸出のみならず、インフラの設計、建設、運営、管理まで含む「システム」を輸出する考え方。
インフラプロジェクト専門官
在外公館において、インフラプロジェクトに関する内外の情報を収集・集約するとともに、関係機関や商工会等との連絡・調整に際して窓口になるなど、日本企業のインフラ海外展開支援を担当する職員。
アジア開発フォーラム
アジア各国の政府関係者、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行、国連開発計画(UNDP)などの国際機関、および民間企業関係者等が集まり、開発に関する各種課題や今後の取組のあり方などに関して議論し、開発協力に関する「アジアの声」を形成し、発信することを目的とするフォーラム。日本の発案で立ち上がり、2010年より開催されており、その運営に当たっては日本が主導的な役割を果たしている。

注2 : 釜山パートナーシップ文書:Busan Partnership for Effective Development Cooperation


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