7. 大洋州地域

太平洋島嶼(とうしょ)国・地域は、日本にとって太平洋を共有する「隣人」であるばかりでなく、歴史的に深いつながりがあります。また、これらの国・地域は広大な排他的経済水域(経済的な権利が及ぶ水域、EEZ)を持ち、日本にとって海上輸送の要となる地域である上、遠洋漁業にとって大切な漁場を提供しています。太平洋島嶼国・地域の平和と繁栄は日本にとって極めて重要です。

一方、太平洋島嶼国・地域には比較的新しい独立国が多く、経済的に自立した国家を築くことが急務です。加えて小規模で、第一次産業依存型の経済、領土が広い海域に点在していること、国際市場への参入が困難なこと、自然災害の被害を受けやすいこと、海面上昇により国土を失ってしまう可能性があることなど、島嶼国・地域に特有の共通の問題があります。さらにフィジーでは民主化に向けた取組を進めています。このような事情を踏まえ、日本は太平洋島嶼国・地域の良きパートナーとして、各国・地域の事情を考慮した援助を実施しています。

< 日本の取組 >

太平洋島嶼国・地域における政治的な安定と自立的経済発展のためには、社会・経済的な脆弱(ぜいじゃく)性の克服や地域全体への協力が不可欠です。日本は、太平洋島嶼国・地域で構成される地域協力の枠組みである太平洋諸島フォーラム(PIF)(注6)との協力を進めるとともに、1997年以降、3年ごとに日本と太平洋島嶼国・地域との首脳会議である太平洋・島サミットを開催しています。

2012年5月に沖縄県名護市で開催された第6回太平洋・島サミットでは、「We are Islanders: 広げよう太平洋のキズナ」というキャッチフレーズの下、日本は、(1)自然災害への対応、(2)環境・気候変動、(3)持続可能な開発と人間の安全保障、(4)人的交流、(5)海洋問題という5本柱に沿って協力を進めるため、今後3年間で最大5億ドルの援助を行うべく最大限努力することを表明しました。この支援の5本柱の一つである「自然災害への対応」では、東日本大震災の教訓を共有しつつ、太平洋災害早期警報システムの整備などの協力を行っていくこととしています。

世界一大きな二枚貝、オオジャコをバヌアツで育成するプロジェクト(写真:曽根重昭)

世界一大きな二枚貝、オオジャコをバヌアツで育成するプロジェクト(写真:曽根重昭)

2013年10月、太平洋・島サミット出席のため来日したロバート・ミクロネシア連邦外務大臣に表敬を行う木原誠二外務大臣政務官

2013年10月、太平洋・島サミット出席のため来日したロバート・ミクロネシア連邦外務大臣に表敬を行う木原誠二外務大臣政務官

また、2013年10月には太平洋・島サミット第2回中間閣僚会合を開催し、第6回太平洋・島サミットのフォローアップ、次回のサミットに向けた準備、太平洋島嶼国共通の課題と協力についての意見交換を行いました。太平洋島嶼国・地域は、環境・気候変動、教育や保健などの分野においても課題を抱えており、これらの国々の持続的な発展のため、日本は、各国への協力のみならず、太平洋島嶼国・地域全体の利益を考慮した地域協力を実施しています。

たとえば、気候変動による影響が大きく、自然災害を受けやすい太平洋島嶼国・地域の防災能力を向上させるために、住民が適切に避難できる体制づくりなどを支援しています。また、サモアにある地域国際機関である南太平洋地域環境計画(SPREP)と連携し、国家廃棄物管理計画の策定や廃棄物管理に携わる人材の育成を支援しています。


注6 : 太平洋諸島フォーラム PIF:Pacific Islands Forum
PIF加盟国・地域:オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモア、ソロモン、バヌアツ、トンガ、ナウル、キリバス、ツバル、ミクロネシア連邦、マーシャル、パラオ、クック、ニウエ

●バヌアツ

「ポートビラ港ラペタシ国際多目的埠頭整備計画」
有償資金協力(2012年6月~実施中)

バヌアツは、大洋州の島嶼(とうしょ)国の一つで、大小80以上の島に約25万人の人々が生活しています。島国であるため、人の移動や物資の輸送に海上交通が不可欠です。

バヌアツの国際貿易拠点であるポートビラ港では、経済成長に伴う輸入量の増加により、国際貨物の取扱量が急増しており、現在の国際埠頭(ふとう)の貨物取扱能力での対応が限界に達しつつありました。また、現在の国際埠頭は貨客併用であり、近年、大型観光クルーズ船の寄港数が急増したことによって、貨物船の荷役の中断や沖待ちが慢性化しており、バヌアツの物流における大きな障害となっていました。

日本は、これを改善するために新たな国際貨物専用埠頭「ラペタシ国際多目的埠頭」の整備を支援しています。有償資金協力によるバヌアツへの支援は、今回が初めてとなります。

新たな国際貨物専用埠頭の整備により、現在の国際埠頭の需要超過を解消するとともに、コンテナ貨物取扱量の増加や輸入貨物の湾内での滞留日数の減少といったコンテナ貨物の荷役効率の改善が図られ、バヌアツ経済の発展に役立つことが期待されています。(2013年8月時点)

現在のポートビラ港国際埠頭の様子。国際貨物の取扱量が急増しており、荷役作業にも困難をきたす状態となっている(写真:JICAバヌアツ支所)

現在のポートビラ港国際埠頭の様子。国際貨物の取扱量が急増しており、荷役作業にも困難をきたす状態となっている(写真:JICAバヌアツ支所)

●ソロモン

「水道公社無収水対策プロジェクト ホニアラ市及びアウキ市給水設備改善計画」
技術協力プロジェクト、無償資金協力(2012年~実施中)

ソロモンは、オーストラリアの北東に位置しており、首都ホニアラのあるガダルカナル島を含め約1,000に及ぶ小島で構成されています。1998年から2003年にかけての部族間抗争の影響もあり、道路・電力・水道等の基礎的インフラの整備が遅れていて、行政の提供する各種サービスの水準も低い状態にとどまっています。

たとえば給水分野では、首都ホニアラ市であっても給水率が72%(2011年当時)にとどまり、ポンプやパイプなどの老朽化により安定的な給水ができておらず、約3分の2の契約者が1日のうちに数時間しか水供給が受けられない状態にありました。また、水道管の老朽化による漏水、盗水、メーターの誤作動などの理由から水道公社の収益につながらない給水の割合、いわゆる「無収水率」が56%(2011年当時)と高く、都市部上下水道事業の運営を担っているソロモン諸島水道公社(ソロモンウォーター)の経営状態を悪化させる原因の一つになっています。

このような問題を解決するために、日本が提供した無償資金協力により、ホニアラ市および地方中核都市であるアウキ市の水源施設、送水・配管施設の整備が進められ、2013年8月に整備が完了しました。これによって、ホニアラ市の給水率は83%まで飛躍的に向上することが予想されています。また、ソロモン諸島水道公社に対しても技術協力プロジェクトを行い、無収水削減に対する技術的能力の向上という一体的な支援を行っています。この結果、安定した上水道施設の運転と事業運営が行われることが期待されています。(2013年8月時点)

残留塩素計(JICA供与)の実地訓練。水道管からの漏水か否の判断を行う(写真:在ソロモン日本大使館)

残留塩素計(JICA供与)の実地訓練。水道管からの漏水か否の判断を行う(写真:在ソロモン日本大使館)

大洋州地域における日本の国際協力の方針
図表 II-14 大洋州地域における日本の援助実績

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