(4)サヘル地域

「サヘル(注17)諸国」に厳密な定義はありませんが、主に、モーリタニア、セネガル、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、カメルーン、チャドの8か国を指します。

サヘル地域は、貧困、国家機能の脆弱(ぜいじゃく)さなどにより、武器・不法薬物等の不法取引、誘拐等組織犯罪の温床となっています。さらに、2011年のリビアの体制崩壊の結果、武器・弾薬がサヘル地域に流出し、テロリストによる武器入手がより容易な状況となっています。

2012年、マリでは一部の国軍兵士による騒乱を発端に内政が不安定化しました。さらに、2013年にはイスラム過激派などが同国北部へ勢力を伸ばしたのに対し、フランス軍によるテロ掃討(そうとう)のための軍事介入、および国連によるPKO部隊が展開しています。これらの影響により、マリで難民の発生するのみならず周辺諸国にも難民が流出するなどしており、日本をはじめとする国際社会はこれら難民への支援を積極的に行っています。

< 日本の取組 >

日本は2013年1月の在アルジェリア邦人に対するテロ事件(注18)を受けて1月29日に岸田外務大臣が外交の3本柱(注19)を発表しました。また、2013年6月に開催されたTICAD(ティカッド) Vにおいて、平和の定着支援の継続を表明し、サヘル地域の平和と安定に向けた取組を加速させています。

2013年3月にはマリ難民支援として約1.2億ドルの拠出を表明し、マリから周辺国に流出した難民向けに食料や居住用テントの提供や、西アフリカ諸国の軍・警察能力向上のため、国連平和維持活動(PKO)訓練センターへの支援などを実施しました。
 また、サヘル地域におけるテロ対策支援として、(1)サヘル地域刑事司法・法執行能力向上計画(約681万ドル)、(2)ブルキナファソ法の支配の強化と貧困層の司法へのアクセス支援計画(約300万ドル)、(3)モーリタニア・イスラム共和国平和構築、治安維持および司法強化計画(約300万ドル)を実施しています。

これらの支援を通じて、小型武器の流入増大・拡散に対応する能力の強化や司法サービスが改善されることで、サヘル各国における治安状況の改善やテロなど潜在的脅威の低減に寄与し、ひいては地域全体としての対処能力が向上することが期待されます。
 サヘル諸国の平和と安定が達成されるよう日本は、サヘル諸国および国際機関、そしてほかの支援機関と一層密接な連携を図り、支援を着実に実施していきます。


注17 : 「サヘル(Sahel)」とはサハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域。主に西アフリカについて用いられるが、場合によりスーダンやアフリカの角の諸地域を含めることもある。
語源はアラビア語の(sāhil)岸辺という意味。サヘル諸国のことをサハラ南縁諸国ともいう

注18 : 武装集団が、アルジェリア東部のティガントゥリン地区にある天然ガス関連施設を襲撃し、作業員などを人質にして立て籠もった。アルジェリア軍部隊が1月19日までに制圧したが、邦人10人を含む40人が死亡した

注19 : (1)国際テロ対策の強化、(2)サハラ砂漠の南のサヘル・北アフリカ・中東地域の安定化支援、(3)イスラム・アラブ諸国との対話の推進の3本柱


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