(4)資源・エネルギー

開発途上国では、電気が供給されていない地域の人々が約13億人(世界の人口の18%)、近代的な調理設備を利用できない人(薪で調理するなど)は26億人もいます(注11)。電気やガスなどのエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層進ませ、医療サービスや教育を受ける機会を制限するといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。

< 日本の取組 >

日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備を支援しています。

資源国に対しては、その国が資源開発によって外貨を獲得し、自立的に発展できるよう、鉱山周辺のインフラ整備など、資源国のニーズに応じた支援を行っています。日本はこうした支援を通じて、開発途上の資源国との互恵的な関係の強化を図り、また、企業による資源の開発、生産や輸送を促進し、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に努めます。国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援に加え、日本のODAを資源・エネルギー分野で積極的に活用していくことが重要です。

また、日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、採取企業が資源産出国政府へ支払った金額を、政府は受け取った金額を報告し、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。41の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。

アフガニスタンのカブール国際空港施設内において系統連系型太陽光発電システムを設置。本発電で国際線ターミナルの電力需要の約35%を賄う(写真:サイッド・ジャン・サバウーン/JICA)

アフガニスタンのカブール国際空港施設内において系統連系型太陽光発電システムを設置。本発電で国際線ターミナルの電力需要の約35%を賄う(写真:サイッド・ジャン・サバウーン/JICA)


注11: (出典)国際エネルギー機関「2013年世界エネルギー展望」(2011年時点の推定)

●ケニア

「1.再生可能エネルギーによる地方電化推進のための人材育成プロジェクト」
「2.再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト」
技術協力プロジェクト(1:2011年 8月~実施中 2:2012年 3月~実施中)

ケニアでは、エネルギー分野の組織改革や民間活力の導入、再生可能エネルギーの普及促進が重点課題として掲げられており、基幹送電線や配電線が急速に整備されつつあります。段階的に未電化地域における電化にも取り組んでおり、2009年時点で10%未満である地方電化率を2020年までに40%に引き上げることを目標としています。また太陽光発電など再生可能エネルギーを活用した電化も急速に進んでいます。日本が2009年度に実施した調査によると、未電化地域の再生可能エネルギーによる発電設備の多くは小規模なものにとどまっていますが、電力へのニーズは非常に高く、今後は適正な技術の活用、再生可能エネルギーの普及のためのモデルづくり、適切な維持管理のための能力向上などが課題とされています。

そこで日本は「再生可能エネルギーによる地方電化推進のための人材育成プロジェクト」として、長期専門家および短期専門家をジョモケニヤッタ農工大学へ派遣して、大学との共同研究開発、教育・研修の実施および産・学・官の連携強化を促進しています。これらを通じて、再生可能エネルギーを利用して未電化地域の電化を実現するための人材が育成されています。
 さらに「再生可能エネルギーによる地方電化モデル構築プロジェクト」では、太陽光発電や小水力発電、バイオマス発電等による学校などの公共施設の電化を促進しています。また、再生可能エネルギーが円滑に普及するための地方電化モデルの構築を支援することで、同国内での再生可能エネルギーの普及促進に貢献しています。(2013年8月時点)

再生可能エネルギーによる地方電化推進のための人材育成プロジェクトの様子(写真:JICA)

再生可能エネルギーによる地方電化推進のための人材育成プロジェクトの様子(写真:JICA)


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