国際協力の現場から 09

子どもたちを笑顔にして未来の代表選手を生み出したい
~ ラオスで奮闘する日本人初のサッカー指導者 ~

本間さん。ラオスサッカー連盟の練習場にて(写真:本間圭)

本間さん。ラオスサッカー連盟の練習場にて(写真:本間圭)

インドシナ半島の内陸国ラオス。この国で最も人気のあるスポーツの一つがサッカーです。JICA青年海外協力隊の本間圭(ほんまけい)さんは、2011年9月から同国に赴任し、日本人初のサッカー指導者としてラオスサッカーを底上げするために日々、奮闘しています。

1985年に高知市で生まれた本間さんは、JAPANサッカーカレッジ(新潟県)を卒業した後、国内のクラブで指導者としてのキャリアをスタート。2008年から2011年は中国・上海市に渡り、日本人向けのサッカースクールの初代指導者としてクラブチームの立ち上げに関わりました。本間さんは現在、ラオスサッカー連盟で活動しながら、U-14(14歳以下)ラオス代表監督とラオス女子代表監督を兼任しています。

そんな本間さんですが、赴任前は、ラオスはサッカー不毛の地だろうと思っていたといいます。しかし実際に来てみて、ラオスではサッカーが非常に盛んであり、選手たちの動きも俊敏で技術があるのに驚きました。地方の村の小学校には必ず木の枠で作られたサッカーゴールがあります。また、夕方になると、裸足の少年たちが未舗装のでこぼこ道でボールを蹴って楽しそうに遊んでいる光景が、通りのいたるところで見られます。そんな日常の中で培われた技術がラオスサッカーを象徴していると、本間さんは考えます。

2012年の東南アジア選手権でのラオス代表は、ミャンマーのヤンゴンで行われた予選リーグを突破し、本大会に進む8か国に選出されました。本大会では試合こそ敗れたものの、強豪のマレーシアとシンガポールを相手に果敢に戦いを挑みました。ただ、本間さんはラオス代表のプレーを高く評価する一方で、課題も指摘しています。

「ラオスの選手には、すぐにあきらめる精神的な弱さが見られ、また、試合中に自分で判断することを苦手としています。こうした点は、幼いころからの教育で習慣づけられる場合が多く、大人になってから変えていこうとしてもなかなか簡単にはいきません。」それだけに、子どもたちの指導に当たる本間さんにとってサッカーの指導は単にサッカーという球技だけにとどまりません。サッカーの普及は青少年の健全な育成にも必要だと本間さんは語ります。

「子どもたちには、サッカーを通じて、あきらめずに最後まで頑張ることの大切さ、自分で考えて判断してプレーすること、仲間と関わる楽しさ、何かを達成する楽しさ、分かる楽しさ、そして勝つ喜びと負ける悔しさなどを感じ取ってもらいたいと思っています。サッカーを通じて何かを学ぶということでしょうか。サッカーは他の競技に比べ、かかわる人数が多いスポーツです。難しいながらも、協力して目的(ゴール)を達成する喜びを仲間と共有できるなど、得られるものが多いスポーツです。そして人気スポーツなだけに、ラオス社会全体に与える影響は大きいものがあります。子どもたちが何かに打ち込める環境を作ることがこの国の大きな課題だと思います。」

ラオスサッカー連盟では、地方の少年・少女にサッカー教室を開催する「グラスルーツフェスティバル」を実施しています。会場では、サッカー教室のほか、学校の教員や保護者向けのワークショップ、さらには指導者講習会なども行われています。2013年は、首都ビエンチャンを皮切りに、地方の4会場で開催される計画です。コーディネーターとインストラクターを兼務しながらフェスティバルの運営を担っている本間さんは、子どもたちを指導しながらこう感じています。

「どの会場に行ってもサッカーの大好きな子どもたちの笑顔に出会えます。その笑顔を増やし、よい思い出を提供し続けることが大切です。JICAの支援でサッカーに出会い、好きになった子どもたちの中から、ラオス代表選手が生まれてくることを願っています。」

本間さん率いるラオスチームは、2013年5月にタイで行われた「U-13 ASEANサッカートーナメント」で参加8チーム中第3位の好成績を挙げました。

グラスルーツフェスティバル(ルアンパバーン会場)で少女たちを指導(写真:本間圭)

グラスルーツフェスティバル(ルアンパバーン会場)で少女たちを指導(写真:本間圭)


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