2. 持続的成長

(1)経済社会基盤

開発途上国における貧困の削減のためには、貧困層の人々に直接役に立つ貧困対策や社会開発分野の支援のみならず、経済の持続的な成長が不可欠です。そのためには、開発途上国の発展の基盤となるインフラ(経済社会基盤)の整備が重要となります。

< 日本の取組 >

日本は、開発途上国の開発政策に基づいて、インフラ整備の支援とこれらインフラを整備、管理、運営するための人材を育成しています。具体的なインフラ整備として挙げられるのは、都市と農村との交流拡大や災害からの安全確保、および海外との貿易・投資を促進できるよう道路、港湾、空港、情報通信技術(ICT)などを整備することです。また、教育、保健、安全な水・衛生環境、住居を確保し、病院や学校などへのアクセスを改善するための社会インフラ整備や、地域経済を活性化させるため農水産物市場や漁港などの整備を行っています。

東ティモールのベモス川上流にある取水堰(しゅすいせき)で働く日本人大工と流域住民スタッフ(写真:久野真一/JICA)

東ティモールのベモス川上流にある取水堰(しゅすいせき)で働く日本人大工と流域住民スタッフ(写真:久野真一/JICA)

●モンゴル

「ウランバートル市高架橋建設計画」
無償資金協力(2009年5月~実施中)

モンゴルの首都ウランバートル市には、同国の約280万人の総人口の4割以上が集中し、都市化に伴って市内の車両台数が急増していますが、道路整備・維持管理が追いつかず、交通事情は悪化の一途をたどっています。さらに、同市を東西に走る鉄道は、南部の工業地帯と北部の官公庁街・商業地域を分断しており、鉄道をまたぐ橋が市民生活にとって重要な役割を果たしています。しかし、この二つの地域を結ぶ既存の高架橋は劣化・老朽化が激しいため、安全で円滑な交通の確保が課題となっていました。

このため、日本は、市内中心部を南北に結ぶ新たな高架陸橋(長さ約260m)を含む全長895mの新設道路の建設を行っています。この橋は、モンゴル初の本格的な鋼製橋梁(きょうりょう)となるため、工事を請け負う日本の建設会社は、関係省庁のエンジニアや学生を対象とした技術セミナーや現場見学会をボランティアで開催し、建設中の橋を事例に使って日本の施工技術を紹介する機会を設けてきました。参加者からは日本の企業からレベルの高い建設技術を直接学ぶことができると、高く評価されています。

2012年に外交関係樹立40周年を迎えた日本とモンゴル両国の友好の新たなシンボルとなるこの橋は、モンゴルでは太陽が日本を象徴していることから「太陽橋」と呼ばれています。太陽橋の建設により、首都ウランバートル市内の交通渋滞が改善されることで、同市における物流の安定・効率化が進み、経済が活性化することが期待されています。(2012年12月時点)

鉄道をまたいで建設中の太陽橋(写真:JFEエンジニアリング)

鉄道をまたいで建設中の太陽橋(写真:JFEエンジニアリング)


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