第4節 島嶼国への防災協力

太平洋島嶼(とうしょ)国のほとんどは、火山島や環礁島などから成る島国です。気候変動による海面上昇、サイクロン、高波、水不足等、地球規模の環境問題の影響を特に受けやすい国々でもあります。また、太平洋地域は地震や津波が多く発生する地域であり、近年に限っても2007年のソロモン沖地震・津波、2009年の太平洋津波などにより、大きな被害を受けています。こうした自然災害への対応は、地域全体にとって重要な課題です。

日本は、これまで太平洋島嶼国に対し、防災分野で様々な協力を行ってきました。たとえば、現在ソロモン諸島に対し、災害時の住民への緊急情報伝達手段として同国全土への放送が可能な短波ラジオ放送網を整備するための協力を行っています。

また、災害対策では、行政はもとよりコミュニティレベルでの対応が重要であることから、フィジー、ソロモンにおいて、コミュニティの防災能力強化のための技術協力プロジェクトを実施しています。このプロジェクトは、早期警報伝達体制の確立、国家災害管理局の能力の向上、対象コミュニティにおける防災計画や災害対応マニュアルの策定、啓発活動や避難訓練などを行い、災害時に住民が適切に避難できる態勢づくりを目指しています。

海面上昇による海岸浸食の影響が懸念されているツバルでは、海岸防護のための調査プロジェクトを実施しています。これは、礫養浜(れきようひん)(海岸に小石を敷き詰めることにより海岸を防護する手法)を試験的に実施し、礫養浜の効果や環境への影響を調査すると同時に、地元住民の沿岸災害への意識を高める活動を行うものです。同時に、サンゴや有孔虫(ゆうこうちゅう)によって形成されるいわゆる「星の砂」による島の形成・維持についても調査を行っており、これらの調査がツバルの海岸浸食に対する具体的な対策の策定に貢献することが期待されています。

こうしたプロジェクトに加えて、気候変動対策、気象観測・予警報能力強化、防災等の分野の研修やボランティアの派遣も実施し、太平洋島嶼国の人々の能力向上に貢献しています。

日本は、2011年に発生した東日本大震災を通じて、防災の重要性を改めて強く認識しました。これを踏まえ、日本は、2012年5月に沖縄で開催された第6回太平洋・島サミットにおいて、「東日本大震災の経験を踏まえた防災協力」を今後3年間の支援の柱の一つとすることを表明しました。特に、日本が震災を通じて得た教訓や知識・経験を太平洋島嶼国と共有することを念頭に、米国や他の開発パートナーと協力しながら、太平洋災害早期警報システムの整備に貢献していくことを表明しました。大洋州では、ハワイに所在する太平洋津波警報センター(PTWC)からの情報を含め、災害情報を太平洋諸国に伝達するためのシステムが導入されていますが、国土が広大な海域に散らばっている国が多く、情報通信体制も不十分なことから、地方や離島の人々にまで災害情報が届かない場合もあります。日本は、このような状況を改善するための協力を実施していく予定です。

日本は、今後も同じ島国として、また、自然災害の影響を強く受ける国として、防災分野での太平洋島嶼国支援を継続していきます。

レメンゲサウ・パラオ大統領と会談する鈴木俊一外務副大臣。レメンゲサウ大統領は太平洋・島サミットへの協力を約束した

レメンゲサウ・パラオ大統領と会談する鈴木俊一外務副大臣。レメンゲサウ大統領は太平洋・島サミットへの協力を約束した


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