第3節 防災・災害後復興分野での国際機関との協力

日本は、第44回国連総会において、1990年から99年までを「国際防災の10年」と定める決議を他の155か国と共同で提案し、採択しました。この決議は、自然災害による人的損失、物的損害、社会的・経済的混乱を国際協調行動を通じて軽減することを目的にしています。この「防災の10年」の終了後の2000年には、これを受け継ぐ「国際防災戦略」が発足し、この戦略に基づき、国際防災協力活動を促進するための組織として国連国際防災戦略(UNISDR)事務局が設置されました。日本は、防災の重要性をかねてから主張してきた国として、UNISDRを設立当初から資金面等において支援し、世界防災白書の発行等その活動に協力してきました。また、UNISDRが開催事務局を務める国連防災世界会議の開催を2度にわたり引き受け、国際防災戦略である横浜戦略(1994年)とその後継である兵庫行動枠組(2005年)の策定に積極的に関与するなど、UNISDRと連携して国際社会における防災の取組を中心になって進めてきています。

また、2006年の国連総会では、各国政府や国際機関、NGO等が参加し、国際防災戦略の実施に向けた議論を行う場として「防災グローバル・プラットフォーム」が設置されました。日本は、この会議に対しても積極的に出席し、議論に参加してきています。2011年5月の第3回会合では、日本は、東日本大震災の経験や復興に向けた取組を紹介した上で、国と地方の役割分担のあり方や復興に向けたハード面とソフト面での対策の組合せ(防災に役立つ、たとえば、ダムのような施設の建設などのハード面と、防災のための訓練、教育、マニュアルづくりなどのソフト面)、災害の教訓の次世代への継承の方法について考えていく必要があると指摘しました。日本としては、「防災グローバル・プラットフォーム」を各国の防災の取組の現状を確認したり、貴重な経験や成果等を共有する場として活用し、国際社会における防災の議論をさらに促進していく考えです。

また、日本は、他の様々な国際機関とも協力しながら防災の取組を強化しています。たとえば途上国の防災の主流化への取組で指導的な役割果たしている国連開発計画(UNDP)との連携です。UNDPとの連携の結果、インドネシアでは政府、市民社会、民間企業などが防災活動の調整を行うための体制が整備され、東南アジアで初めて災害による被害や損失、復興ニーズを評価するための包括的なガイドラインが策定されました。また、日本とUNDPは長年にわたり、お互いの専門性を共有しながら世界各地の自然災害からの復旧・復興にも積極的に取り組んでいます。たとえば、日本は、インド洋津波被害者の生活再建支援、ハイチ地震被害者に対する緊急支援、パキスタン洪水被害地域の早期復旧・復興支援などにおいて、UNDPと協力して支援を行っています。

また、こうした国際機関との連携は、東日本大震災後の日本の復興や、その経験を国際社会に共有する上でも重要です。2012年2月から3月にかけて被災地(岩手、宮城、福島)で開催された、国際連合地域開発センター(UNCRD)および国連人間居住計画(UN-HABITAT)による専門家等を交えたワークショップはその一例です。UNCRDは、3県6か所の自治体やコミュニティに赴き、海外・国内の専門家と視察を行うとともにワークショップを開催しました。ワークショップでは、地域の代表者と専門家との会合を持ち、情報交換を行ったり、地元コミュニティの経済活動、特に、地域に根付いた産業支援のための実践的アイデアの提案を行ったりしました。また、復興におけるNGO、NPOのかかわり方についても意見を共有しました。ワークショップには地元のコミュニティ代表者延べ約400人が参加しました。ワークショップの模様は、参加した専門家やUNCRDのホームページを通じて世界に向けて発信されました。

UN-HABITATは、3県11市町を訪問し、「コミュニティを主体にした復興プロセス」と題したワークショップを開催しました。このワークショップには、自然災害後の復興事業を数多く手がけてきた海外および国内の専門家が出席し、東北の側からは自治体の職員が数多く参加しました。ワークショップでは、東北の各自治体が被災直後から取り組んできた活動について報告がなされ、今後の復興方針や地域振興を見据えたビジョン、施策の実現に向けた課題について広範な意見交換を行い、その内容は世界に向けて発信されました。また、地元企業対象のワークショップでは、UN-HABITATがこれまで世界各地で行ってきた、仮設住宅建設などの復興事業の経験を報告しました。

「世界防災閣僚会議in東北」会議参加者による石巻港視察

「世界防災閣僚会議 in 東北」会議参加者による石巻港視察


<< 前頁   次頁 >>