援助の現場から 15

ザンビアで乳幼児死亡率の改善を図る
~ AMDA社会開発機構が取り組む小児保健システム強化プロジェクト ~

保健省モニタリングチーム、保健センタースタッフと活動の進捗状況を確認する鈴木さん(写真:鈴木俊介)

保健省モニタリングチーム、保健センタースタッフと活動の進捗状況を確認する鈴木さん(写真:鈴木俊介)

アフリカ南部にあるザンビアでは、0歳から5歳の乳幼児1000人のうち119人が小学校就学前に死亡しています。その数は1か月で約2万5000人に及びます。

2011年3月にスタートしたJICAの技術協力「都市コミュニティ小児保健システム強化プロジェクト」は、1997年から10年間、JICAが首都ルサカの都市コミュニティにおいて実施した保健システム強化事業の成果を積極的に評価したザンビア政府が、日本政府に要請したものです。ルサカ以外の地方都市でも保健システムを改善し、乳幼児の死亡率を下げていくことを目的としています。この技術協力は、民間会社とともに、保健サービスの改善に幾多の経験を持つNGO、特定非営利活動法人AMDA(アムダ)社会開発機構が中心となって実施しています。

現地では同機構の理事長である鈴木俊介(すずきしゅんすけ)さんも、プロジェクト総括として他の6人の長短期専門家と共に活躍されています。乳幼児の死亡率の高さについて、鈴木さんはこう説明します。

「これまでザンビア政府も相当の努力をしてきたと思いますが、公共セクターの予算不足、医療分野の人材不足、そして国際援助も社会の隅々まで行き渡らないなどの理由から期待された成果を出せずにいます。また都市部の貧困地域では、田舎でみられるような伝統的な人間関係が希薄で、親は共働きでも十分な収入がなく、栄養や衛生に関する適切な教育も行われていません。いくつもの要因が重なり合っているので、問題解決のためには、保健システムそのものを強化するアプローチも重要になります。」

子どもの成長をモニタリングする保健ボランティア(写真:鈴木俊介)

子どもの成長をモニタリングする保健ボランティア(写真:鈴木俊介)

保健省傘下の組織には、それぞれの州と郡に保健局、そして地域ごとに保健センターがあり、サービスが提供されています。またコミュニティでは、地域保健委員と保健ボランティアが、子どもの健康を願う地域の人々のニーズに対応する仕組みがあります。地域保健委員は約500世帯ごとに選出され、保健センターと地域の保健活動の運営に参画します。一方、保健ボランティアは、栄養や健康、環境衛生などの分野の研修を受講し、一定の知識を持ち合わせ、定期的に行われている乳幼児健診や環境衛生活動で中心的な役割を担います。

しかし、理論上仕組みがあることと、それらが実際に十分な機能を果たしているかは別問題です。本プロジェクトは、保健省とともに、対象の3地域でコミュニティを基盤とした保健システムがしっかり機能しているかを検証していきます。同時に、不足を補うための研修を行って、乳幼児を対象とした予防保健サービスが持続的に提供されるよう、システムを強化していくのです。

鈴木さんたちが支援する保健省主催の研修の一つでは、センター職員とボランティアが6週間をかけて共に学び合うことで信頼を深めていきます。「地域内のことは住民が一番よく知っています。子どもが健康問題を抱える貧しい人々の中には、自発的に保健センターに相談に来ないケースもあります。一歩を踏み出す勇気を与えられるのは地域の人々なのです。保健センターとボランティアがしっかりと手を組むことで、コミュニティ内の活動が活性化し、問題解決に近づいていけるのです。」と鈴木さんはいいます。

今回のプロジェクトは、地方都市の3地域が対象です。鈴木さんたちは、対象地域の担当者に他の地域や首都ルサカを視察する機会を設けるよう保健省に働きかけました。人々はシステム強化が先行する他の地域を見学しながら大いに刺激を受け、「この地域にできて、自分たちにできないはずはない」と意識を高めています。

プロジェクトが終了するのは2014年3月です。しかし、終了時評価はその半年前に実施されるため、残された期間はあまりありません。限られた期間でどうやって成果を生み出すか、鈴木さんは総括としてプロジェクトを後押しするために、「この地域で成果が出れば、他の地域にも波及していくはず」という信念を持って、今日もプロジェクトのために奔走しています。


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