3. 戦略的・効果的な援助の実施のために必要な事項
(1)評価の充実
より効果的・効率的なODAを行うためには、援助が実施されている状況やその効果を的確に把握し、改善していくことが必要です。そのため外務省を含む関係府省庁やJICAは、モニタリング(進み具合の検証)や評価を行っています。
ODAの評価は、計画策定(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、フォローアップ活動(Act)のサイクル(PDCAサイクル)の中に位置付けられています。その結果得られた教訓や提言は、将来の計画や、実施過程に活かしていくため、関係する部局をはじめ、途上国の政府にも伝えられます。また国民に対し、ODAがどのように使われ、どのような効果があったのかを説明するために、評価結果をホームページなどで広く公表することで、説明責任(アカウンタビリティー)を果たす役割も持っています。
現在外務省では、主に政策についての評価(国別評価と重点課題別評価)やプログラムについての評価(援助手法別評価)を行い、JICAではプログラムについての評価(テーマ別評価など)およびプロジェクトについての評価を行っています。外務省が実施する政策についての評価やプログラムについての評価は開発援助委員会(DAC(ダック))の評価5項目(妥当性、有効性、効率性、インパクト(影響)、自立発展性)をもとに、政策は適切であったか、援助によって開発効果が上がったか、援助の実施過程は適切であったかの3つの観点から評価し、その客観性・透明性を確保するため、第三者による評価を行っています。また、外務省はODA評価体制の改善を進めています。評価の独立性をより高めるため、援助を実施する国際協力局からODA評価室を独立させ、大臣官房に移し、かつODA評価室長には外部から公募により評価の専門家を迎えました。
一方、JICAは技術協力、有償資金協力、無償資金協力それぞれのプロジェクトについての評価やテーマ別の評価を実施しています。各プロジェクトの事前の段階から、実施の段階を経て、事後まで一貫した評価を行うとともに、これら3つの援助手法に整合性のある評価の仕組みをしっかりと確立しています。なお、これらの評価はDAC評価5項目に基づいて行われ、一定金額以上の案件についてはすべて、外部評価者による事後評価を実施しています。
これら以外にも、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(いわゆる「政策評価法」)に基づいて、外務省では経済協力政策の全般に関する政策評価や一定の金額を超える案件の事前評価、5年間着手されなかったもの(未着手案件)、または10年経っても貸付が終わっていないもの(未了案件)*の事後評価も行っています。
こうした評価で得られた提言と教訓については、それぞれ対応を検討して、ODAの計画・実施へ反映させています。
PDCAサイクル
用語解説
*未着手・未了案件
「5年未着手案件」とは、案件の実施が決定した後、5年を経過した時点においても貸付契約が締結されていない、あるいは貸付実行が開始されていないなどの案件。「10年未了案件」とは、案件実施決定後10年を経過した時点で貸付実行が未了である案件を指す。