第6節 紛争、テロ問題の根本的解決に向けたODAの活用
現在も世界各地では紛争が続き、また紛争が終結した場合であっても、再び紛争状態に陥る危険性を抱えた国が数多くあります。国連開発計画(UNDP)がまとめた「人間開発報告書2005」によれば、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に最も遠いと思われる34の開発途上国のうち、22か国が紛争継続中、または紛争後の不安定な状況にあります。また、紛争から立ち直ったばかりの国のうち、約4割(アフリカのみに注目すれば約6割)が、再び紛争状態に陥っています。
紛争により疲弊し、統治能力を失った、いわゆる「破綻国家」がテロ活動の拠点となり、周辺地域や世界全体に対する脅威となる危険性もあります。たとえば、アフガニスタンでは、依然として武装勢力によるテロが続いています。アル・カーイダに代表されるように、テロ組織は国際化され、先進国でテロを起こす例もあります。2010年だけでも、アフガニスタンやパキスタン、イラク各地での自爆テロのほかに、3月のロシア・モスクワ地下鉄における連続爆弾テロや、5月の米国・ニューヨーク・タイムズスクエア爆弾テロ未遂、12月のスウェーデン・ストックホルム中心部における自爆テロといった事件が発生するなど、テロ問題は、引き続き国際社会共通の脅威、課題となっています。
自国の安全と繁栄が国際社会の平和と安定の上に成り立っている日本は、紛争やテロ問題の解決に向けた取組をこれまで積極的に行ってきました。たとえば、アフガニスタンやイラクなどの国々において、元兵士の武装解除、動員解除および社会復帰(DDR)(注22)や警察支援、地雷の除去などに対する支援です。また、アフガニスタンでは、2011年7月から開始された治安権限移譲プロセスの着実な進ちょくと治安の安定を目的として、警察官の給与・訓練支援、識字教育などの取組を行っています。日本と特に関係の深い東南アジア諸国に対しては、出入国管理、航空・港湾における保安、税関、法執行などの分野で、国際的なテロ防止対策に役立つ様々な支援を行っています。
依然として紛争やテロが続く中、日本は国際社会の責任ある一員として、より効率的、効果的な取組を行っていく必要があります。たとえば、2011年7月に公表された「『PKOの在り方に関する懇談会』中間取りまとめ」では、オールジャパンとしての連携の強化として、国連PKOなどの平和維持活動とODAを含む外交活動との戦略的かつ効果的な連携が提案されています。今後も日本は、グローバルな安全保障環境を改善し、日本の安全と繁栄の確保につながるよう、貧困削減、紛争、テロ問題の根本的な原因の解決などのために、ODAのより適切な活用を模索していきます。
アフガニスタン「基礎職業訓練プロジェクト」職業訓練センターで学ぶ電気・電子科の学生(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)
注22 : 元兵士の武装解除、動員解除および社会復帰 DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration