第2節 マルチ・バイ連携
多国間援助(国際機関を通じた援助:マルチ)と二国間援助(バイ)の間の協調を「マルチ・バイ連携」と呼んでいます。マルチ・バイ連携の目的は二点あります。一つは、国際的な援助の流れを二国間の援助政策に反映させるとともに、日本に比較優位がある二国間援助の手法を援助受入国内や国際社会において主流となる考え方にすることです。もう一つは、分野共通の目標の下で、二国間と多国間援助を効果的に組み合わせ、日本が行う援助の効果向上を図ることです。
このような望ましい連携を実現するためには、以下のような取組を行っていく必要があります。
● 日本の援助につき、途上国政府のセクタープラン(分野ごとの開発計画)の下で、プログラム化(個別プロジェクトを越えて、特定の開発課題に対し援助手法を組み合わせて取り組むようにすること)を強化。
● セクタープランの策定・評価および政策協議へ援助国として積極的に参加し、政策を提言。
● 成果の提示方法(指標等)を研究・導入(当該国の関係指標等により成果をモニタリング・評価する)。
● 日本の取組を拡大するための援助協調枠組み*の積極的活用。
● 世界エイズ・結核・マラリア対策基金、世界銀行(日本基金を含む)、UNICEF(ユニセフ)、アジア開発銀行(ADB)(注18)、アフリカ開発銀行(AfDB)(注19)等の国際機関、 EFA-FTI(「万人のための教育」ファスト・トラック・イニシアティブ)等との連携。
● 試験的実施国での成果および経験を多国間のフォーラムに積極的に発信。
このような取組を行っていくことにより様々な成果が考えられます。たとえば保健分野では、支援が相手国の中央レベルから地方レベルまで一貫した戦略の下で実施されることによって、成果を定量的に測定できる環境を整えることができます。こうした環境の下では、日本の支援の成果を目に見える形で現地、日本国内、国際社会において効果的に発信することが可能になります。教育分野では、基礎教育分野における課題(障がい児や言語的少数派に属する児童等、疎外された子どもの教育へのアクセス改善、教員育成等の教育の質の向上、学校運営の改善等)に対処するため、一定の成果を上げている日本による支援を、マルチ・バイ連携を通じて拡大し、効果をさらに高めることが考えられます。また、途上国の教育セクタープランの中で、日本の現場での成功例を発信していくことも有効です。このような成果を目指して、引き続きマルチ・バイ連携を促進していきます。
マルチ・バイ連携を積極的に進めているバングラデシュの「母性保護サービス強化プロジェクト」病院で生まれたばかりの赤ちゃんとお母さん(写真提供:岡清香)
用語解説
*援助協調枠組み
複数の援助国・機関等が開発の優先度について合意を形成し、援助政策や実施方法を統合したり、相互に補い合うために行う一連の活動を規定する枠組みのこと。
注18 : アジア開発銀行 ADB : Asian Development Bank
注19 : アフリカ開発銀行 AfDB : African Development Bank