政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)とは、OECD(経済協力開発機構)のDAC(ダック)(開発援助委員会)が作成する援助受取国・地域のリストに掲載された開発途上国・地域に対し、主に経済開発や福祉の向上に寄与することを目的として公的機関によって供与される贈与および条件の緩やかな貸付のことです。
ODAには、開発途上国を直接支援する二国間援助と、国際機関を通じて支援する多国間援助があります。二国間援助は、「贈与」と「政府貸付」に分けることができます。贈与は開発途上国に対して無償で提供される協力のことで、「無償資金協力」と「技術協力」があります。一方、「政府貸付」は、将来、開発途上国が返済することを前提としており、「有償資金協力(円借款)」があります。多国間援助には、国連児童基金(UNICEF(ユニセフ))や国連開発計画(UNDP)への拠出や世界銀行などへの拠出・出資などがあります。
アンタイド/タイド援助 | アンタイド援助とは、物資およびサービスの調達先が国際競争入札により決まる援助のことをいう。タイド援助は、これらの調達先が、援助供与国に限定されるなどの条件が付くものを指し、日本語では「ひもつき」援助と訳されることがある。2001年に経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)で後発開発途上国(LDCs)向け援助のアンタイド化勧告が採択され(技術協力と食糧援助を除く、有償資金協力と無償資金協力が対象)、DAC加盟国に適用されている。2008年に同勧告の対象国がLDCs以外の重債務貧困国(HIPCs)にも拡大された。同勧告は、アンタイドの政府開発援助(ODA)を「ほぼすべての被援助国およびOECD諸国からの自由かつ十分な調達が可能な融資または補助金のことを指す」と定義している。また、OECDの輸出信用アレンジメントにおいては中進国向けのタイドも原則禁止されている。 |
援助協調 | 援助の効果を増大させるために、複数のドナーが情報共有を行い、援助の戦略策定やプロジェクト計画・実施などにおいて協力を行うこと。従来の援助協調は、案件ごとのドナー同士の連携・調整に重点が置かれていたが、近年は、被援助国の開発政策に沿って、ドナーが共通の戦略や手続きで支援を行う総合的な援助協調が、サブサハラ・アフリカを中心に、世界各国で進められるようになっている。 |
援助協調枠組み | 複数の援助国・機関等が開発の優先度について合意を形成し、援助政策や実施方法を統合したり、相互に補い合うために行う一連の活動を規定する枠組みのこと。 |
技術協力 | 開発途上国の人々に対する技術の普及、またはその水準の向上を目的として技術の提供を無償で行う経済協力の一形態。 |
研修員受入事業 | 開発途上国において指導的役割を担うことが期待されている行政官や技術者などを日本あるいは第三国に招へいし、専門知識・技術の移転を図る研修事業。 |
第三国研修 | 開発途上国が、援助国・国際機関の資金や技術支援を受け、他の途上国から研修員を受け入れて、すぐれた開発経験や知識・技術の移転・普及のための研修を行うこと。日本はそれに対して、資金的・技術的な支援を行っている。 |
第三国専門家 | 技術協力を効果的に実施するため、協力対象の途上国に他の途上国からの人材を専門家として派遣する制度。 |
技術協力プロジェクト | 一定の目標達成のため、必要とされる援助手法(専門家派遣、機材供与、研修員受入など)を柔軟に組み合わせて効果的な技術移転を実施する事業。 |
技術協力専門家派遣 | 日本から開発途上国へ専門家を派遣し、相手国の実情に即した知識や技術の移転を図る事業。 |
青年海外協力隊 (JOCV:Japan Overseas Cooperation Volunteers) |
開発途上国の要請に基づき、日本国内で募集・選考・訓練を行い、技術・技能を有する20歳から39歳までの日本の青年男女を、原則として2年間開発途上国に派遣する事業。 |
シニア海外ボランティア (SV:Senior Volunteers) |
開発途上国の要請に基づき、日本国内で募集・選考・訓練を行い、豊かな職業・社会経験を持つ日本の40歳から69歳までのシニア層を1年ないし2年間開発途上国に派遣する事業。 |
基礎教育 | 生きていくために必要となる知識、価値そして技能を身につけるための教育活動。主に初等教育、就学前教育、成人識字教育などを指す。 |
基礎生活分野 (BHN:Basic Human Needs) |
食糧、住居、衣服など、人間としての基本的な生活を営む上で必要最低限の物資、保健、教育など。 |
キャパシティ・ディベロップメント (能力開発) |
開発途上国自身が主体となって、自国が抱える課題に対処する能力を向上させる過程のこと。また、その過程を他者が支援すること。従来の人材育成の概念から発展し、個人の能力のみならず、組織、制度・政策、社会システムなどを含む多様なレベルの能力が総体として向上していく過程を指している。 |
経済連携協定 (EPA) |
特定の国(または地域)の間で、関税の撤廃や物品およびサービス貿易の自由化などを定めた自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)に加え、貿易以外の分野、たとえば人の移動や投資、政府調達、二国間協力など幅広い分野での経済協定。 |
国別援助計画 | ODAの戦略性・効率性・透明性向上に向けた取組の一環として、被援助国の開発ニーズ(政治・経済・社会情勢)を踏まえ、当該国の開発計画や開発上の課題などを総合的に勘案して策定する日本の援助方針。5年間程度をめどに改定。(こちらを参照) |
グラント・エレメント | 援助条件の緩やかさを示す指標。借款の利率、返済期間、返済据置期間を反映しパーセントで表示される。DAC統計では、商業条件(金利10%と仮定した場合)の借款を参照条件としており、利率10%の借款はグラント・エレメント=0%、贈与はグラント・エレメント=100%となる。数字が高いほど緩和された条件が高いとされる。 |
現地ODAタスクフォース | 2003年度から、開発途上国における日本の援助を効果的・効率的に実施するため、大使館を中心に、JICAなどの援助実施機関の現地事務所を主要な構成メンバーとして立ち上げられたタスクフォース。開発途上国の開発政策と援助政策の調和を図り、相手国政府との政策協議など、他ドナーとの援助協調、要望調査を通じた案件形成、実施監理などを実施している。 |
経済開発協力機構 開発援助委員会 (OECD-DAC:Organisation for Economic Co-operation and Development-Development Assistance Committee) |
OECDにおいて、開発援助に関する事柄を取り扱う委員会。OECD加盟34か国のうち、23か国および欧州連合(EU)からなる。 |
交換公文 (E/N:Exchange of Notes) |
日本政府と被援助国政府との間の合意事項を記した法的文書。日本では閣議決定が必要。有償資金協力(円借款)および無償資金協力などを供与する際に必要とされる。 |
国際協力機構 (JICA:Japan International Cooperation Agency) |
国際協力事業団を前身とし、2003年10月1日に発足した独立行政法人。日本のODAの主な実施機関。2008年10月、これまで実施してきた技術協力に加え、国際協力銀行(当時)が担当してきた有償資金協力(円借款)が統合され、外務省が実施してきた無償資金協力業務の一部も移管された。これによって、3つの援助手法を一元的に実施する総合的な援助実施機関となった。 |
国際協力銀行 (JBIC:Japan Bank for International Cooperation) |
2008年9月末まで、一般の金融機関と競合しないことを旨としつつ、日本の輸出入等の促進や国際金融秩序の安定への寄与、開発途上地域の経済社会開発などへの寄与を目的として、国際金融等業務および海外経済協力業務(円借款等)を実施してきた機関。2008年10月以降、国際金融等業務は、株式会社日本政策金融公庫に統合され、海外経済協力業務は、国際協力機構に統合された。なお、国際的信用の維持などの観点から、日本政策金融公庫では、「国際協力銀行」(JBIC)の名称が使用されている。 |
後発開発途上国 (LDCs:Least Developed Countries) |
国連による開発途上国の所得別分類で、開発途上国の中でも特に開発の遅れている国々。1人当たり国民総所得(GNI)905ドル以下などの基準を満たした国。現在、アフリカ33か国、アジア9か国、大洋州5か国、中南米1か国の48か国。 |
債務救済 | 開発途上国の国際収支が悪化し、既存債務の支払いが困難になった場合、支払期限が到来したか、または将来到来する債務の支払いを猶予し、一定期間にわたる分割返済を認めたり(債務繰延:リスケジュール)、これを免除(債務免除または債務削減)すること。 |
サブ・サハラ・アフリカ | 北アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト)を除く、サハラ砂漠以南のアフリカ。 |
政府開発援助 (ODA:Official Development Assistance) |
(1)ODAとは、一人当たりのGNIをもとにDACが作成する援助受取国のリストに掲載された開発途上国への贈与および貸付のうち次の3つの条件を満たすものを指す。 <1>公的機関によって供与されるものであること。 (2)ODAは、無償資金協力、技術協力、有償資金協力、および国際機関への出資・拠出からなる。 |
政府開発援助以外の公的資金 (OOF:Other Official Flows) |
公的部門による開発途上国への資金の流れのうち、開発を主たる目的とはしないなどの理由でODAにはあてはまらないもの。輸出信用、直接投資、国際機関に対する融資などがこれに当たる。 |
政府開発援助大綱 (ODA大綱) |
政府開発援助政策の根幹をなすものとして、政府開発援助の理念(目的、方針、重点)や原則などを定めたもの。1992年9月に策定されたものを、2003年8月に閣議決定により改定。 |
政府開発援助に関する中期政策 (ODA中期政策) |
ODA大綱に基づき、援助の指針を示したもの。旧ODA大綱下で1999年8月に策定された中期政策を抜本的に見直し、2005年2月に新ODA中期政策を策定した。ODA大綱のうち、考え方や取組などを内外に対してより具体的に示すべき事項を中心に記述している。 ODA大綱の基本方針の一つである「人間の安全保障の視点」、4つの重点課題(「貧困削減」・「持続的成長」・「地球的規模課題への取組」・「平和構築」)、「効率的・効果的な援助の実施に向けた方策」の各項目を取り上げている。 |
卒業 | DACが作成する援助受取国のリストから外れること。原則として世界銀行の融資基準で3年間高所得国(high income countries)に分類された国はリストから除外、すなわち「卒業」(graduate)することになる。リストは3年ごとに見直される。 |
南南協力 | より開発の進んだ開発途上国が、自国の開発経験と人材などを活用して、他の途上国に対して行う協力。自然環境・文化・経済事情や開発段階などが似ている状況にある国々によって、主に技術協力を行う。また、ドナーや国際機関が、このような途上国間の協力を支援する場合は、「三角協力」という。(こちらを参照) |
パリクラブ | 債務の返済が困難になった債務国に対し、二国間で債務の救済措置を取り決めるための非公式な債権国会合。日本を含む主要債権国19か国で構成され、原則として年10回、フランス経済産業雇用省(パリ)で開催される。 |
万人のための教育 (EFA) |
全ての人々に基礎教育の機会提供を目指す国際的取組。主要関係5機関(国連教育科学文化機関UNESCO(ユネスコ)、世界銀行、国連開発計画UNDP、国連児童基金UNICEF(ユニセフ)、国連人口基金UNFPA)のうち、UNESCOがEFA全体を主導する。EFAの下に、EFA-FTI等のイニシアティブがある。 |
EFAファスト・トラック・イニシアティブ (EFA-FTI) |
EFAダカール行動の枠組みやMDGsに含まれている「2015年までの初等教育の完全普及」の達成のため、2002年に世界銀行主導で設立された国際的な支援枠組み。2011年11月、FTIは「教育のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership for Education)」という名称に変更された。 |
貧困削減戦略文書 | 世界銀行・国際通貨基金(IMF)により、1999年に導入された、重債務貧困国(巨額の借金を抱えている貧困国)が、債務削減を受けるための条件となる文書。債務削減によって返済せずにすんだ資金を、貧困削減の対応策に支出するために、教育、保健、食料保障などの分野で、3か年ごとに目標を設定する経済社会開発のための実行計画書。文書は途上国政府のオーナーシップ(自助努力)の下、援助国やNGO、研究機関、民間部門の代表などの意見も取り入れて作成される。 |
フィージビリティ調査 | 立案されたプロジェクトが実行(実現)可能かどうか、検証し、実施する上で最適なプロジェクトを計画・策定すること。プロジェクトがどんな可能性を持つか、適切であるか、投資効果について調査する。 |
平和の定着 | 地域紛争の恒久的な解決のために、紛争が完全に終結する前から支援を行い、地域の安定および平和の萌芽を定着させること、具体的には<1>和平プロセスの促進、<2>国内の安定・治安の確保、<3>人道・復旧支援の実現を3つの柱としている。 |
無償資金協力 | 政府の決定に基づき、開発途上国が経済・社会開発などに寄与することを目的として、資機材および役務を調達するために必要な資金を、返済の義務を課さずに供与する経済協力の一形態。 |
一般プロジェクト無償 | 開発途上国が基礎生活分野、インフラ分野などで実施する施設整備、資機材の購入などに対する無償資金協力。 |
ノン・プロジェクト無償 | 貧困削減などの経済社会改革を実施している開発途上国による、国外からの資機材などの購入に対する無償資金協力。 |
紛争予防・平和構築無償 | 平和の定着、紛争の再発防止、さらには安定的な復興開発を図り、平和構築に貢献することを目的とする無償資金協力。多様化する平和構築事業に関する二国間および多国間援助を継続的かつ機動的に行うために、小型武器廃棄支援などのプログラム型事業に供与する。 二国間および国際機関を通じた支援のいずれかの形態により実施。 |
草の根・人間の安全保障無償 | 開発途上国において地方自治体、NGOなどが実施する人間の安全保障の理念を踏まえた小規模な草の根レベルの事業に対する無償資金協力。 |
日本NGO連携無償 | 日本のNGOが開発途上国・地域で実施する経済・社会開発プロジェクト、緊急人道支援プロジェクトなどに対する無償資金協力。 |
人材育成支援無償 | 開発途上国の若手行政官などの育成支援に対する無償資金協力。 |
テロ対策等治安無償 | 開発途上国の経済社会開発に必要であり、また、日本の平和と繁栄にも直結するテロ・海賊対策など治安対策を強化するための無償資金協力。 |
防災・災害復興支援無償 | 自然災害に脆弱な開発途上国の防災対策や災害後の復興支援のための施設整備・修復に対する無償資金協力。 |
コミュニティ開発支援無償 | 貧困などに直面する開発途上国のコミュニティの総合的能力開発の支援を目的とする無償資金協力。 |
貧困削減戦略支援無償 | 貧困削減に取り組む開発途上国に対して財政支援を行う無償資金協力。 |
環境・気候変動対策無償 | 気候変動問題への取組を強化するため、開発途上国の温暖化対策などに関する政策・計画の策定や、政策・計画の実施のためのプロジェクトに対する無償資金協力。 |
水産無償 | 開発途上国の水産関連分野の経済・社会開発プロジェクトに対する無償資金協力。 |
一般文化無償 | 開発途上国における文化・高等教育振興、文化遺産保全などを目的として機材調達や施設整備などを支援するための無償資金協力。政府機関などを対象としている。 |
草の根文化無償 | 開発途上国における文化・高等教育振興、文化遺産保全などを目的として機材調達や施設整備などを支援するための無償資金協力。NGOや地方公共団体などを対象としている。 |
緊急無償 | 海外における自然災害および紛争の被災者や難民・避難民などの救援のために人道的観点から緊急に供与する無償資金協力。 |
食糧援助(KR) | 食糧援助規約に基づき、食糧不足に直面している開発途上国に対し、穀物(コメ、小麦、トウモロコシなど)などを購入するために供与する無償資金協力。 |
貧困農民支援(2KR) | 開発途上国の食糧自給のための自助努力を支援するため、農業機械、肥料などを購入するために供与する無償資金協力。 |
ミレニアム開発目標 (MDGs:Millennium Development Goals) |
国際社会が直面している困難に対して、国際社会全体が2015年までの達成を目指す8つの目標。目標には、極度の貧困と飢餓の撲滅、初等教育の完全普及、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、環境の持続可能性確保などがあり、その下には、具体的目標を設定したターゲットや指標などがある。毎年、国連はそれぞれの指標の進捗状況を報告書としてまとめ公表している。(図版参照) |
有償資金協力 | 政府間の国際約束に基づき、低金利で返済期間の長い緩やかな条件で、開発途上国に対して開発資金を貸し付ける形態の援助。開発途上国に対する援助では、贈与に加え、借款を供与し、返済義務を課すことによって、その国の自助努力を一層促すことができる。日本は、供与相手国の所得水準など様々な要素を考慮して借款条件を決定している。 |