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南南協力と三角協力
南南協力とは、開発における途上国間の協力のことをいいます。ある分野で開発の進んでいる国が別の途上国の開発を支援することです。開発の進んだ国の多くが北半球にあり、途上国の多くが南半球にあることから、先進国と途上国の間の経済的格差の問題を「南北問題」と呼びますが、南南協力は途上国(南)同士の間の協力であることから、このように呼んでいます。
南南協力では、多くの場合、援助する側の途上国に能力上の制約(資金が足りないなど)があります。そうした場合に、先進国から、この協力に対して、技術、資金、援助の経験・知識などを補うことがあります。これが途上国間の協力に先進国(北)も参加する「北・南・南」による「三角協力」と呼ばれるものです。
三角協力における国の関係を、たとえば、援助する側の途上国をA国、援助を受ける側の途上国をB国、そしてA国からB国への援助を支援する先進諸国(日本など)により表したものが右の図になります。
具体的には、新たにB国に援助を行おうとする途上国のA国は、自国の資金や人材、A国で培われた技術や経験・知識をB国に援助する際に活用できます。しかし、A国自身もまだ先進国から支援されている立場であり、B国への援助に意欲を持っていても、必ずしも資金や人材、援助の経験が十分ではないことがあります。そこで、三角協力により、新しい援助国であるA国のこうした取組を先進国や国際機関が手助けしようというのです。
近隣にある途上国同士では、一般的に言語や文化、気候などが似通っている点が多くあります。途上国の中に日本などの先進国から移転された技術が現地に適した形で定着している場合(途上国A)、そうした国から類似した別の途上国(途上国B)に南南協力が行われると、現地に適合した技術の移転が円滑に行われることになります。さらに、このA国からB国への援助を日本などの先進国が支援すると、日本がB国(被援助国)に直接援助する場合に比べて経費を低く抑えることができ、かつ、自国の技術がA国だけでなく、B国にも活かされ、結果的により多くの途上国の開発に貢献することができます。A国にとっても、南南協力に取り組むことは、これまでの与えられる側から与える側に立つことになり、援助国としての経験、知識、能力、が蓄積するばかりでなく、自国の発展に対して大きな自信を得ることにもつながります。
日本は、戦後、自らが援助を受ける側から主要な援助国へと歩んできた歴史と経験を持っています。そこから得た教訓として、南南協力支援を有効な協力手段と考えており、これに最も積極的に取り組んでいる援助国の一つです。ODA大綱の中でも、日本は「アジアなどにおけるより開発の進んだ途上国と連携して、南南協力を積極的に推進する」と謳っています。