コラム 4
地域の特性を活かしたビジネスを通じて地域の活性化を!
~ アフリカでの「一村一品運動」普及 ~
アフリカでは農村部から大都市への急激な人口流入が大きな社会問題となっています。地方と都市の格差をどうしていくか、地方をどのように活性化させるかにアフリカ各国は頭を悩ませています。
日本は地域主導の村おこしとして一村一品運動を推進しています。この「一村一品」は村ごとに特産品を育てることでマーケットを形成し、地域経済の活性化につなげようというものです。モデルとなったのは日本の大分県にある大山町。地元で穫れる梅や栗の栽培によって地域活性化に成功したという経験に基づいています。一村一品は今や、アフリカ大陸やアジア、中南米にまで広がっている運動です。
ケニア政府も一村一品運動を農村の地域活性化の有効な手段の一つとして重視し、現在では政府の中に専門の事務局を設置しています。
相園賢治(あいぞのけんじ)さんは、そのケニアを拠点にサブサハラ・アフリカ地域を対象にした一村一品の普及活動に取り組んでいます。*1相園さんは大学を卒業後、民間企業を経て、JICAの在ミクロネシア連邦ボランティア調整員を皮切りに、国際協力に携わるようになりました。その後、マラウイのJICA広域企画調査員として一村一品運動推進の担い手となり、2010年1月に活動場所をケニアに移しました。
一村一品運動では、地域の資源を使い、住民による創意工夫を活かした付加価値のある商品やサービスをつくることと、そうした商品を作り続ける人材の育成を支援しています。したがって、直接住民に対して何を作れ、誰に売れ、といったアドバイスをすることはありません。住民自らの創意と努力を後押しする立場に徹します。「先方がやる気を見せて初めて、必要に応じて支援を提供するのが私たちの役割です。」と相園さんはいいます。
相園さんが開いた一村一品運動を紹介するワークショップに刺激を受け、ユニークな商品を申請するグループが現れました。たとえば「火を使わない料理鍋」です。バナナの繊維などでつくった「かご」の中にぼろ切れなどを詰め、布で表面をおおった「保温器」です。この中に火にかけてあった料理を鍋ごと入れて、余熱だけで調理と保温ができ、燃料節約にもつながる素晴らしいアイディアでしたが、残念ながら商品とするにはもう一歩でした。
商品化に成功した例としては、「切り株」の工芸品があります。ケニアでは家具や木炭をつくるために、多くの木が伐採されますが、残った切り株はそのまま残されてしまいます。あるグループは、この切り株をテーブルやイスに加工するビジネスを思いつきました。このアイディアは成功し、これらの家具を使った「切り株バー」がケニアにできたほか、今では製品がヨーロッパに輸出されています。
相園さんはいいます。「こういったやる気のあるグループを応援することが一村一品の真髄です。一村一品活動が普及すれば、活力のあるアフリカの人が増え、これまでにない商品が開発される可能性が生まれます。そして10年後、20年後にこの一村一品活動が大きなムーブメント(運動)に変わり、ビジネスを通じたコミュニティ(地域社会)の活性化に貢献するものと信じています。」
*1 : 一村一品サービス改善プロジェクト
ケニアのビーズ細工の製造・販売などをするグループと相園さん(写真提供:JICA)
商品化したケニア原産の石の置物を持つ女性(日本、欧州でも販売)(写真提供:JICA)